サイボーグ少女はバグAIに幻を見せられる
天宮ユウキ
前編:HOLIC
NA地点:壊れゆくカタチ
これは夢なのかな?
ワタシは何もない場所の上に立っていた。見渡す限り真っ白な世界だった。
「ここは一体……」
周りを見ても何も無い。上を見ても下をみても真っ白でどこまで広がっているのか分からないくらいの広さだった。
ただただ何も無かった。
いや、あった。そこには人がいたのだ。その人はワタシを見つめていた。しかしその姿には見覚えがある姿であった。ワタシはこの人に会った事がある。
そうか……ーーちゃんだ。
?
あれ、なんで名前が思い出せないの?それになんで左腕がなくなってるの?
なんでだろう?
どうして?
忘れちゃいけないことのはずなのに忘れてしまっている。
その人はワタシに向かってきた。
その人を見ていると不思議な気持ちになる。
嬉しくて、切なくて、悲しくて。
そんな複雑な感情が押し寄せてくる。
この感情の名前は何だろうか? そしてこの人が近づいてくる度に身体中の血液が無くなっていくような感じがした。でも、不思議とその人の顔を見たら安心するのだ。何故か分からないけど安心してしまうのだ。
「うぅ……」
その人を見ると涙が出てくるのだ。
なんで泣いているんだろう?
「ねぇ……」
声をかけても答えてくれなかった。聞こえていないんだろうか? それとももう喋れない状態なのかもしれない。どうすればいいのか分からず立ち止まっていたその時だった。
その人に触れられた瞬間。
まるで心臓が無くなったかのような痛みに襲われた。
痛くて痛くてたまらない!
「あっ……!」
あまりの痛みに倒れてしまうほど苦しいものだった。息ができないし胸も苦しかった。呼吸をして空気を取り入れようとしても入ってくる気配がなかった。
どんどん意識が遠くなってゆく……。
視界が見えなくなる……。
最後に見えたものはワタシの名前を呼ぶ声だった。
ーーさとり、さようなら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます