第17話 実家の崩壊と兄との再会
シェリーが実家であるグローヴ侯爵家の崩壊を知ったのは翌日だった。
セドリックが実家に突入し、そしてグローヴ侯爵は王宮の地下牢に収容されている。
精神を病んでしまった母親は医師の治療を受けるために、静かな療養地へと移された。
そして、シェリーの兄のブライアンは奇跡的回復を見せ、王宮にてシェリーと再会している。
「シェリー!!」
「お兄さまっ!」
二人は抱き合って再会を喜び合うが、その後ろの方でなんとも不満そうに口をとがらせている影が……。
「陛下、子供のような嫉妬はおやめください。ブライアンはシェリーの実の兄ですよ?」
「抱き合っているのもそうだが、本当に彼は潔白なのか?」
「はい、念のため彼も不正に関与しているか調べましたが証拠は何も」
ジェラルドは途端に怖い顔をして目を細めてセドリックに尋ねる。
「弟がいたはずだが、彼はどこにいった?」
「それが戸籍などを調べてみましたが、シェリー様が9歳の時に追いかけていったという証言と矛盾し、シェリー様の下に子供はいません」
「彼女が嘘をついている様子もない。どういうことだ?」
「わかりません、ただ……」
「ただ?」
「グローヴ侯爵はうちに男児はブライアンだけだ。と証言しています。それと、やはりあのブライアンは何かを隠しています」
「引き続き調べてほしい。ただし、シェリーには知られずに」
「かしこまりました」
セドリックはお辞儀をしてジェラルドのもとを去っていくと、ジェラルドはシェリーと話すブライアンを見つめる。
何かこの男には秘密がある、と直感が働いたのかジェラルドの彼への警戒心が強まる。
「シェリー!」
「はいっ! ジェラルド様」
「妃教育の時間だろう。そろそろ戻らないとクラリス先生に叱られるぞ!」
その言葉を聞いてシェリーは慌てて兄に別れの挨拶をすると、そのままジェラルドにも一礼してその場を去って行く。
部屋にジェラルドとブライアンだけになると、長い沈黙を破ってブライアンが声をかけた。
「陛下、私の処遇はどうなるのでしょうか?」
「君はひとまず新しい当主としてグローヴ侯爵の名を継いで構わない」
「かしこまりました。それでは、私もこれで失礼します」
挨拶をしてジェラルドの横を通り過ぎる瞬間に、ブライアンはにやりと笑いながら言った。
「あなたにシェリーは守れない」
「──っ!」
ジェラルドはブライアンのほうを振り返ると、そこには目にかかるほどの長く黒い前髪の奥に闇の深い瞳があった……。
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