第567話 その後の話(sideフリージア) 前編
――時は、国王が王位をジルベールに譲る1年前に遡る。
ノルベルトが無力化されて数日後、レクシャが宰相の地位に戻ったことで、王国騎士団はノルベルトに奪われていた様々な権限が全て返され、メスト率いる第四部隊は第三部隊として第一王子の専属護衛につく。
そして、王女の護衛についていた前の旧第三部隊は、第四部隊として引き続き王女の護衛についた。
ようやく本来の職務につくことが出来た旧第四部隊は、仕事を押し付けられた日々から解放され、少しだけ休息が取れるかに思えた。
だが、この7年間、ペトロート王国を実効支配していたノルベルトがいなくなった影響は計り知れなく、団長であるフェビルはグレアと共に王国騎士団全体の戦力強化を急いだ。
そしてそれは、宮廷魔法師団も同じだった。
「はぁ、やっとフリージアに会えるわ」
「僕も、ここ最近は騎士達の再教育の手伝いだったり、街の見回りだったりして忙しかったよ」
そんなノルベルトの影響が残る中、カトレア・ラピス・シトリンはようやく取れた貴重な休日を使い、フリージアが入院している貴族御用達の病院を訪れた。
というのも、転移魔法でレクシャが本拠地にしてた屋敷を訪れたフリージアは、ベッドに寝かされた直後、原因不明の重度の魔力枯渇に襲われ、生死を彷徨ってしまう事態に陥ったしまった。
それにいち早く気づいたロスペルは、レクシャに頼み込んで王都にある病院に転移魔法で急いで運んだ。
宰相家令嬢の一大事とあって、院長自らが診察と迅速な処置をした結果、間一髪で命の危機を脱した。
しかし、復活した魔力が体に馴染むまで約1ヶ月かかるため、フリージアはそのまま入院することになった。
それから3日後、生死を彷徨ってたフリージアが目が覚まし、その場にいた全員が彼女の意識が戻ったことを喜んだ。
「ラピスもシトリン様と一緒に手伝いや哨戒に行ったのでしょ?」
「あ、あぁ、まぁ……仕事だしな。それに……」
「しっ! 2人とも静かに!」
フリージアが目を覚まして3日後、久しぶりにフリージアに会えることにニヤニヤが収まらないカトレア。
そんな彼女と隣で仏頂面をしているラピスに、何かに気づいたシトリンが、慌てて小声で声を潜めるように言うと、フリージアのいると病室の扉にそっと耳を近づける。
(あらっ? 何か、面白いものでも聞けるのかしら?)
気配を消してニヤニヤしながら扉に耳をつけているシトリンに、ニヤリと笑ったカトレアは、渋い顔をしているラピスの手を引っ張り、すぐさま気配を消すとシトリンに倣ってそっと扉に耳をあてる。
すると、扉の向こうから男女の声が聞こえた。
「メ、メスト様! そこまでしていただかなくても、ちゃんと自分で食べられますから!」
「ダメだ。フリージアは1週間の絶対安静を言われているからな。俺が食べさせてやる」
「いや、大丈夫ですから! 本当に大丈夫ですから!」
(あらあら、メスト様ったら。フリージアの心を射止めようと必死ですわね)
フリージアが目を覚ます少し前、休日を使ってサザランス公爵家を訪れたメストは、レクシャに対して今までのことを深く謝罪した。
それに対し、レクシャは『謝罪をするのはこちらの方だ』とメストに頭を下げた。
ちなみに、レクシャとロスペルはフリージアと同じように作戦中は大量の魔力を使ていたのだが魔力枯渇に陥らなかった。
その代わり、ティアーヌからきつく叱られた。
そんなレクシャに、メストはフリージアの婚約者に戻りたいと申し出る。
もちろん、改竄魔法でダリアが自身の婚約者だと思わされていただけなので、婚約者自体はフリージアのままなのだが、メスト自身はフリージアとは一回婚約解消していると思っているので、改めてレクシャに『フリージアの婚約者に戻りたい』と申し出たのだ。
メストの誠意ある態度に、胸を打たれたティアーヌは『それなら、フリージアの心を落としてきなさい。それなら、認めてあげる』と条件を出した。
レクシャとしてはそのままフリージアの婚約者として認めても良かったのだが、鬼気迫るメストの態度と横からティアーヌから笑顔で脅されたので、泣く泣く妻が提示した条件を了承した。
ティアーヌから出された条件に、あっさり頷いたメストは、フェビルからの計らいで、フリージアが絶対安静の間、休暇を取って毎日彼女の介抱をしていた。
その間、シトリンとラピスの2人でメストの穴埋めをしていたのは言うまでもない。
※最終回まで、あと4話!
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