クラスの二大美少女、悪女と呼ばれていた幼馴染と、聖女と呼ばれているクラスメイトに全力で言い寄られるようになった

第57話 デート当日

　あっという間に日曜日になった。

　いよいよ柊さんとのデートの日だ！

　現在、午前九時四十五分。

　柊さんとは十時に、この駅前の時計広場で待ち合わせをしている。

　今は一緒に住んでいるのだから、屋敷からそのまま目的地のショッピングモールまで行ってもいいのではと思い、僕はそれを柊さんに言った。

　すると柊さんは、｢待ち合わせもデートの一部です｣と言って譲らなかった。

　あまりその意味が分からなかったけど、いざこうして柊さんを待っていると、ものすごくドキドキする。ドキドキだけじゃなくて、ワクワクもしてる。

　これから、あの『聖女』と呼ばれている柊さんとデートするのもだし、柊さんがどんな服装で来るのかもすごく楽しみだ。

　でも柊さん、よく僕とのデートをオッケーしてくれたなぁ。

　絵に書いたような高嶺の花の美少女な柊さん。どんな人が告白、デートに誘っても頑なに断り続けてきた柊さん。

　このデートをどんな風に思ってるのかな？

　僕と同じで、柊さんが僕に好意を……は、さすがに都合がよすぎるか。

　多分、僕を元気づけるためだろうな。

　実際、僕は柊さんと竜太のおかげで、今ではかなり自然に笑えるようになった。二人には感謝してもしきれない。

　僕がそんな考えごとをしていると、周囲の人がザワザワしだした。

　男性も女性も、同じ方角を見ている。

　僕も気になって、その人たちと同じ方を見る。すると───

｢っ！｣

　長い黒髪を風で揺らしながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる柊さんの姿があった。

　柊さんの今日の服装は、オフショルダーの水色のニットに、花柄の白いフレアスカート、そして黒のパンプスと、清楚な柊さんがさらに際立って清楚に見える服装だった。

　ニットは胸元がリボンになっていてとても可愛らしいデザインなんだけど、胸の膨らみがとても危うい。オフショルダーということもあり、若干だけど谷間が見えているので、凝視しないようにしないと。

｢お待たせいたしました。上原さん｣

　っと、柊さんに見惚れている間に僕の傍に来た柊さんは、軽くお辞儀をして言った。

｢ま、待ってないよ。時間もピッタリだしね。あはは……｣

　僕は動揺を隠すためにそんなありきたりなセリフを言った。

　うぅ……、周囲の目が僕にも突き刺さる。

『あの女の子、すごい美人。それに清楚感がハンパない』

『なー。あんなモデルみたいな子、こんな場所にいたんだ』

『てか、アレが彼氏？』

『なんかパッとしないな』

『ねー。身長も彼女の方が高いし』

　などなど、聞いてるだけでダメージを負いそうな声があちらこちらから聞こえてくる。

　……わかってたけどね。僕には不釣り合いすぎる女性ってことは。

　社長令嬢で、学校でも絶大な人気があるし、容姿端麗で文武両道……そして『聖女』の渾名（あだな）。どこをとっても、柊清華という女の子は非の打ち所のない完璧な美少女だ。

　でも、それでも好きになっちゃったんだから、恋をするのは僕の自由じゃないか。