第12話 『聖女』は竜太と体育館裏へ

 恭平さんが、無断で学校を休んだ。

 高校生活が始まったばかりですが、わたくしはその事が信じられないでいました。

 あの恭平さんが、なんの連絡もなく学校を欠席されるなんてありえません。

 きっと何か理由があるに違いありません。

 例えばそう……幼馴染である小泉さんに酷い仕打ちをされ、心を病んでしまって学校に来れなくなってしまった、とか。

 昨日までの恭平さんは、確かに疲れていて目のくまもありましたが、それでも笑顔で学校生活を送っていました。

 例え身体が重くとも、恭平さんはご自身が大好きと仰っている小泉さんの為に、無理をしてでも登校してくるはず。

 なのに、今日は学校を休まれている。妙な胸騒ぎがしてなりません。

 わたくしの予想は絶対に当たっていると、恭平さんが辛い思いをしていると、わたくしの中で警鐘が鳴り響いています。

 こんな時、恭平さんの連絡先を知っていたら、すぐに連絡をするのに……。

 今は知らないものを嘆いても仕方ありません。

 今日のお昼休みに、恭平さんの事情を知っていそうな、彼の親友の坂木さんにお話を聞いてみましょう。

 坂木さんなら、きっと何か知っているはずですから。


 その日のお昼休み、わたくしは昼食を食べ終ると、一緒に食べていた方々に断りを入れ、教室で一人でお弁当を食べていた坂木さんに声をかけました。

「坂木さん。……少しよろしいでしょうか?」

 わたくしが声をかけると、坂木さんはこちらを向き、一瞬ですが驚いた表情をして、すぐに真剣な顔で言いました。

「柊さん。……恭平の事?」

「! ……何故、わかるのですか?」

「柊さんも俺と同じで、恭平とあの女のやり取りを心配そうに眺めてるのを見たことがあるから、そうだろうって」

 驚きました。坂木さんは、わたくしが二人のやり取りを見ていたのに気づいていたのですね。

 でも、そうとわかれば話が早いです。

「その通りです。きょ……上原さんから何か連絡はありませんか?」

「……ここだとあの女に気づかれるかもしれないから、場所を変えよう」

「わかりました」

 わたくしと坂木さんは教室を出て、体育館裏に移動しました。

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