メンヘラ転生~世界を救うはずの救世主は俺ではなく俺の幼なじみ兼ストーカーだった~

@WhiteMoca222

幸せの青い鳥

 幸せの青い鳥というお話がある。貧しい兄妹が妖精に頼まれて、幸せの青い鳥を探す物語。


 兄妹は思い出の国、夜の御殿、幸福の花園、墓地、未来の王国を旅して、色々な青い鳥を見つけ出した。ただどれも、世界を渡ると青い鳥は別のものへと変貌する。


 最終的に兄妹は自宅の鳥かごに青い鳥を見つける。幸せとはすぐそこにあるものだという童話。


 私は思った。兄妹は本当の幸せを見つけた。でもそれは、本当の幸せを、青い鳥を見つけるために、多くの青い鳥を犠牲にしたからだ。


 この童話が本当に伝えたいことは、本当の幸せを掴むためには、多くの不幸を積み重ねること。幸せとは、向こうからやってくるのではない。


 私にも青い鳥はいた。ずっとずっと、私のそばで、私の幸せを見守ってくれていた。


 見つけたきっかけなんてのは些細なこと。きっと話をしたら、どうしてそんなことで、なんてみんな言うだろう。


 当たり前すぎて気が付かなかった。ずっとこのままなのだろうと、生活の一部のように、当然のことだと思っていた。


 だから意識してしまうと、その一挙一動が愛おしくて、思い返せば、ずっと私は彼に支えられていたんだって思った。


 「どうして?」


 いつか私は彼に尋ねた。すると彼は下手くそな嘘で誤魔化した。真相はもう全部、聞いているのに。バレていないと思って。


 これは私が、青い鳥に振り向いてもらうための物語。今はまだ、そばにいるだけで、つかまえようとすると逃げられてしまうから。

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