第90話 理人死す



「理人様、同窓会という行事のお知らせがきておりますわ」


どうやらクラスメイトが集まってパーティをするそうだ。


今現在、俺への手紙は全部フルールを通して届けられる。


そして、俺に渡される前に必ず、フルールが一旦目を通す事になっている。


これはこの世界に俺が疎いから、フルールに意見を貰う為にそうした。


「同窓会か懐かしいな…綾子に塔子、木崎君に緑川さん、皆誘って久しぶりに集まるのも良いな…これは参加しないとな」


「参加されるのですか? それなら黒騎士の護衛をつけますわ」


「要らない、要らない、昔の仲間と会うだけだからな」


「理人様、幾ら仲間とは言え油断は禁物ですわ」


「大丈夫だってこっちには、塔子に綾子、緑川さんに木崎君もいるから」


「ですが」


「くどいよフルール、気にしなくて良いから」


「理人様がそう言われるならそうしますわ…ですが、凄く心配なのですわ」


「大丈夫、大丈夫だから」


「そうですか」


こう言って俺はフルールの話をあまり聞かなかった。


そろそろ経済以外に手を出さないといけない。


その為にはクラスメイトの協力が必要だ。

この分野の事はフルールは頼りにならない。


だから『仲間』に頼らなければならない。


塔子も綾子もまだ頼りない。


クラスメイトにこれから頼らなければならない。


なんでも18人もで行われるパーティだ。


俺にとって必要な人材も必ずいる筈だ。


「本当に、私や黒騎士の護衛は要らないのですの?」


「まぁな、彼奴らに腹を割って話さないといけない事もある。だから今回は要らない」


「どんな話ですの?」


「莫大な利益に繋がる事だからな、これはまだフルールにも相談は出来ない」


「寂しいですわね」


「まぁ、安心してくれ、俺なら大丈夫だ」



◆◆◆


同窓会当日になった。


まぁ性格には同窓会もどきだが…


「なかなかの会場だわね」


「そうね、理人君、皆と話すのは久しぶりだね…凄く楽しみ」


「理人様一行ですね、此処で武器は預からせて貰います」


塔子と綾子には他に小型の杖を隠すように持たせている。


俺は..まぁ武器が無くても大丈夫だな。


「これは俺の剣だ、宜しく頼む」


二人も大きな杖を預けた。


最悪、俺は剣なら何時でも『本物』を呼べるから関係ない。


そのまま案内されるままついていった。


「北条さんに平城さん、お久さぁ~ こっちで女子が集まって女子会しているから、まずはこっちに来てよ、神代君との恋愛話聞きたいなぁ」


「まぁ仕方ないか、私は綾子とこっちに少し参加してくるからね」


「そう、それじゃ後でね」


「それじゃ、緑川さんと木崎君はこっちかな、行こう」


「そうだな」


「僕は余り、皆とは話したくない」


「上に行くと義理事があるから我慢だな…まぁ頑張れ」


「仕方ないな」


木崎君は顔色が余り良くない。


同級生が好きでは無いからな。


緑川さんは…何で顔色が悪いんだ。


まぁ良い…


「神代久しぶりだな」


「久しぶりだな、吉川、元気にしていたか?」


「まぁボチボチだな、しかし凄い活躍じゃないか? 帝国を自分の物にしてしまうなんて」


「まぁな…これから先ドンドン変わるからな、皆には色々強力して貰わないといけないからな」


「そうだな、協力は惜しまないさぁ」


吉川は昔から野望を持っていたな。


此れなら俺の期待に応えられるかも知れないな。


一応『同窓会』みたいな物だし、記録水晶で記録でも撮るか…


パーティは進むが一向に塔子も綾子も別室にいったままだ。


俺はドリンク片手に皆と話した。


さっきから緑川さんが俺と目を合わせようとしない。


なんだ…後ろめたい何かがあるのか。


「神代」


「吉川…えっ」


俺の腹にナイフが刺さっていた。


その刃は後ろに突き抜けている。


「あはははははっやったぞ、これで終わりだ」


「貴様ぁーーーっ!吉川、何故だーーっ」


「あはははっ馬鹿だな、お前..俺たちは王国の人間だぞ、お前の敵だよ、敵、ただ昔同じ学校で過ごしたからって信頼しすぎだって言うの…バーカ、バーカ」


「ハァハァ….そうかよ」


「吉川、貴様、理人君に何するんだーーっ」


「おっと、お前は殺さないから静かにしてくれるかな?」


「緑川先生…何をしているんですか? 何故僕に剣を向けるんですかーーっ」


「私は教師だ、だがこの場合は多数決で決めさせて貰った。18人の教え子たちと2人なら18人の教え子をとる。それに我々に力をくれたのは女神イシュタス様だ、その力で私は嫁を貰う事が出来た。感謝しかないんだぞ、お前が悪いんだよ…確かにお前は気の毒だが、神に背くなど…言語道断だぞ…」


そうか…緑川さん…緑川で良い、此奴は敵だったんだな。


「ハァハァ…」


「理人君..くそ、こうなったら、フルール様、理人君が危ない救護を頼む」


「貴様ぁ~何処に連絡している、殺すぞ」


「もう同級生だと思わない…親友を傷つけるなら、先生も同級生も関係ない」


あはははっ木崎君、君は本当の友達…なんだな..ああっ、だんだん周りが見えなくなってきた。


多分、そろそろ死ぬな…


「貴様ぁーーーー」


木崎君が緑川を殴った。


顔がひしゃげている…流石は木崎君…強いな。


ドアが開く音がした。


「良いですか、相手は異世界人ですわ、真面に戦っては駄目ですわ、王硫酸の使用を許可しますから、思う存分使いなさいですわ」


「「「「「はっ」」」」」


「り、理人様、理人様、理人様ぁーーーーっ死なないで下さいですわーーーっ」


「…フルール、塔子と綾子はハァハァ無事かな、ハァハァ」


「大丈夫ですわ、隣の部屋に居ますわよ」


「そう…良かった」


「そんな、理人様ぁぁぁぁぁぁーーーっ」


「あははははっ、目的は達成された…撤退だーーっ」


「貴方と緑川は許しませんわ…黒騎士、2人に全面攻撃、他は構わないで良いですわ」


「「「「はっ」」」」


黒騎士は小瓶の中の薬品を二人に振りかけた。


「ぎゅあぁぁぁぁぁーーーーーっ」


「こんな馬鹿なぁぁぁーーー顔が顔が溶けるーーっ」


二人は大怪我をしながら、走り逃げていった。


駄目だ…もう..


「フルール…後は頼んだ」


「理人様ぁぁぁぁーーー」


「嘘、嘘信じないわ…理人が死ぬなんて」


「理人君…理人君が冷たくなっている…うあぁぁぁぁっ 理人君が死んじゃったよ。うふふあはははははっ、皆殺しちゃおう..うん殺しちゃおうか」


「殺したら駄目よ綾子、もっと酷い事しないと」


「うふふ、あははもっと酷い事って何かな?」


「死にたいって懇願する程酷い事するのよ…フルール」


「捕まえたのは1人だけですわ」


「たたたた、助けて」


「理人君、死んじゃったんだからね…あははははっ無理だよ」


「取り敢えず、手足を切断して足と手を逆につけてやるわ…」


「それじゃ、私は顔を焼いちゃおうかな」


「それじゃ…私はその後、ゴブリンの巣穴に黒騎士と捨ててきますわ」


「ややや止めてーーーっお願いよ」


「理人」

「理人君」

「理人様


三人の悲しみは復讐心でしか満たされない。





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