第59話 VS ジャミル
ジョブの影響が凄い。
三人分のジョブがあるせいか、凄く成長が早い気がする。
冒険者ギルドで話を聞いた所では『五大ジョブ』でも最初はそんなに凄い力は使えない。
そう聞いたのに、昨日の今日で俺にとってワイバーンは既に鳥でも狩るかの様に狩れる。
昨日は時間を掛けて6羽。
だが、今日は僅か2時間で既に10羽を超えていた。
ついでに卵も8つあったから貰っていった。
そこから、更に1時間数を増やし。
全部でワイバーン14羽、卵8つ。
これが3時間狩りを行った成果だ。
これ位の成果があれば、今日一日『遅くまで狩りをしていた』
そう言い訳がつく。
俺は森に戻ってから木に登り、あらかじめ買っていた携帯食を食べ休んだ。
しかし、食べてはみた物の携帯食…これは不味く、美味しくない。
今度、自分で燻製とか干物や干し肉でも作ってみるか?
スマホも本も無いから、今は寝る事位しか出来ないな。
暫く仮眠をしながら夜に備えた。
そろそろ良いだろう。
時計が無いから正確な時間は解らないが、月が出ているから相当時間が経ったのだけは解かる。
俺はジャミル男爵の屋敷へと向かった。
◆◆◆
貴族とは言え男爵だからかそこ迄凄い屋敷には思えない。
フルールの情報では、ジャミル男爵が粗暴な性格の為か使用人も居つかないで数人しかいないという事だ。
フルールから貰った見隠しのマントは凄い。
さっき使用人らしき男とすれ違ったが全然気がつく様子はなかった。
ジャミル男爵の部屋を探す途中で、女性のすすり泣く声が聞こえてきた。
近くまで行くと二つの部屋から聞こえてきている。
ドアから聞き耳を建てると…
「貴方ごめんなさい、ごめんなさい」を繰り返す声に「こんな汚された体じゃもう結婚できないよ…ううっ死にたいよーーっ」そんな声が聞こえてきた。
ドアは外からカギが掛かっていて開けられないようになっていた。
これでジャミル男爵は黒だ。
幾ら相手が異世界人で『敵』とは言え理由も無く人を殺すのは心が痛い。
『悪人だから殺して良い』自分なりの理屈。
納得できる理屈が欲しい。
◆◆◆
ふと疑問に思った事がある。
最初の方は『この世界の仕組みが解らなかった』それで説明がつく。
だが…何故ジャミル男爵は未だにこんな事を行っているんだ。
理由が解らない。
それこそ、金があるなら奴隷でも大量に買えば合法的で何も問題ない。
人道的にどうかと思うがこの世界の法律的には白になる。
まぁ良い『こんな事する奴の心』なんて解らなくて当然だ。
俺はジャミル男爵の寝室に忍び込んだ。
しかし、不用心だな。
少なくとも魔族と戦っていた様な男が何も気がつかずに眠っている。
先手必勝。
『『神の借用書、請求バージョン』』
時間が止まり、ジャミル男爵と俺のステータス画面が現れた。
久しぶりに見る画面だ。
此処からは欲しい物を俺に持ってくればその能力が貰える。
欲しい物を『掴んでも』俺の方に持って来なければ移動はされない。
ジャミル
LV 18
HP11400
MP22800
ジョブ 大賢者 異世界人
スキル:翻訳.アイテム収納、複合魔法レベル42(聖魔法以外全ての魔法を使える魔法 但しレベルは上がりにくく最上級を越える物は身につかない)
早速欲しい物を移動した。
『大賢者』を取り上げた→ 『過去にクラスの虐めから逃げられる為に神社で願った分が借用書から消えた』
『複合魔法』を取り上げた→『自殺未遂をした時に苦しさから『死にたくない』と神社で祈った分が借用書から消えた。』
『アイテム収納』を取り上げた→ 『盗難事件の犯人が自分だとばれない様に神に祈った分が借証書から消えた』
大賢者やアイテム収納を奪っても自分にはメリットが無いのは解っている。
だが、此奴からは取り上げる。
この後の人生、後悔と贖罪の人生を歩ませるためには必要だ。
尚、これで1/3も回収していない。
神代理人
LV 19
HP 27000
MP 37100
ジョブ:英雄 剣聖 大賢人 日本人
スキル:翻訳.アイテム収納、複合術式(全LV32)剣術 防御術 草薙の剣召喚 魅了
※複合術式とは全ての術が使える事を意味する。
※非表示の物あり
ジャミル
LV 18
HP1200
MP900
ジョブ 異世界人
スキル:翻訳
結局、此奴から手に入ったのはHP MPと複合術式が上がっただけだ。他のスキルと違いレベルがある物だけは似た物を奪えば加算されるみたいだ。
レベルが無い物はやはり奪っても何も変わらない。
此処で少しだけ思ったのは、ジャミルからスキルを奪った事で、恐らくレベルも上がった可能性がある。
よくステータスを見ておけば良かった。
失敗した。
しっかりと、元のレベルを把握してから行うべきだった。
これじゃワイバーン討伐や演習であがったレベルもあるから『ジャミル』から奪った事でどの位レベルが上がったのか解らない。
だが、相手を殺さなくてもただ奪うだけでもレベルが上がる事が解かったのは行幸だった。
さて、これから此奴をどうするか…
殺さなくても良い気もする。
どうするか? 殺すべきか殺さずに置くべきか?
考えた末、俺は黙って立ち去る事にした。
そして時間が動きだした。
◆◆◆
これは俺なりの判断だが…もしここで俺がジャミル男爵を殺してしまったら、あの二人の女性はただのやられ損だ。
俺がジャミル男爵を殺してお金を与えても…盗難者扱いされる可能性もある。
それを考えたら生かしておいた方が良い。
フルールの話では今迄は確実に示談はされているのでちゃんとお金は払われるだろう。
恐らく能力が無くなれば、ジャミル男爵は破綻する。
男爵が治める土地だから、それ程この街は裕福では無い。
それじゃ慰謝料については何処から支払われているのか?
恐らくは俺と同じだ。
転移者のその能力を生かして狩り等で稼いでいるに違いない。
その能力は今無くなった。
今は放っておこう。
◆◆◆
俺は一度、城壁を越えて森に行き、森から戻った様に見せかけて、門番と話をし街に戻った。
俺が宿屋に戻ろうとすると宿屋の前でフルールが待っていた。
「それで理人様首尾はどうでしたか?」
俺は今日の事について伝えた。
「理人様、それは甘すぎますわ」
「違う、今は殺さなかっただけだ」
「今は?」
まぁ、数日の我慢だな。
不思議そうな顔でフルールが俺を見ていた。
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