第48話 【閑話】ロリコン木崎くんのパートナー



異世界召喚。


ついに来た!やっと僕の夢が叶うんだ。


そう思ったら違ったようだ。


僕の名前は木崎竹丸。


竹丸の名前は昔、暴走族の総長をしていた親父とレディースの特攻隊長をしていたお袋が


『最恐っていったら竹丸しょ』


『言えてるー』


と面白半分でつけた名前だ!


なんでも大昔の伝説のヤンキーの名前からつけたそうだ。


こんなエリートヤンキーになっても可笑しくない血筋と名前なのに…何故か僕は陰キャラだ。


そして学校で虐めの標的となっていた。


虐めと言っても、暴力を振るわれる訳じゃない。


僕は『従順』だから、使い走りをさせられる事と『キモ崎』と呼ばれる位ですんでいる。


「あっキモ崎と目があっちゃったよ」


「キモイよね!あいつ」


「何処か転校していってくれないかな」


「キモ崎?ジュース買ってきて、お前のおごりでさぁ人数分」


こんな感じだよ。


物理攻撃が無いだけまだ幸せなのかも知れない。


両親に比べたら、怖くないし…


このせいで僕は女の子に対しての憧れは早くも無くなった。


僕を蔑み馬鹿にする奴の多くは『女の子』だ。


この環境で『女の子を好き』で居られる訳ないだろう。


悪い面だけ見続けたせいだしかたないよな。


女の子の汚い部分や醜い部分を見続けた僕は、純真な女の子に憧れ気がついたら…ロリコンになっていた。


仕方ないと思わないか?


同級生位の女の子が『汚く、醜く、残酷』にしか僕には見えないんだからさぁ。


◆◆◆


一応仮のパーティには入っている。


僕のジョブは何故か『聖騎士』五大ジョブの次に貴重なジョブだからね、相手に困らなかった。


最初は僕のジョブ目当てで、手のひら返しで何人もの人間がすり寄って来たよ。


僕も異世界で仲間が居ないと辛いからとそのまま仲間にしてやったけどね。


今は解散。


神代君と緑川先生の様子を見たら…簡単に『夢』が叶うんだ。


そう思ったら同級生の仲間なんて要らないよね。


パーティ組んだ相手もそう思ったみたいで、ごねられずに解散出来て良かったよ。


神代君は同級生どうしの方が安全だと最初言っていた気がするけど…僕には当て嵌まらないな。


だって、同級生そのものに良い思い出が少ないからね。


尤も神代君とか庇ってくれる人も居たから『ざまぁ』なんて考えないけどね。



それより『異世界人』がモテて『奴隷』だって簡単に買える世界。


それを楽しんだ方が良いしね。


◆◆◆


夕方になり奴隷商に来てみた。


以前の王都見学の時は他の同級生に会うのが嫌で来なかった。


今日は、奴隷を欲しがっていた皆が居なくなるのを見計らってから来たからこの時間になったんだよ。


「えーと子供の奴隷が欲しい? 随分と変わっていますね? 本当に欲しいのならどうにかしますが…需要があるんですか?」


奴隷商の話では、此の世界にはロリコンやショタコンは居ないらしく子供の価値は少ないらしい。


子供を亡くした親が欲しがりそうだが、幾らでも孤児も居るし子沢山な親類がいるから養子や養女に困らないそうだ。


性的にも満足には使えない。


力仕事も真面に出来ない。


勿論、討伐も護衛も出来ない。


だから、殆ど価値が無いから『奴隷』として『仕入れても売れないから仕入れない』との事だった。



稀に両親と一緒に売られてくる以外流通はしてないそうだ。


それじゃ全く手に入らないのかと言えば違うらしい。


奴隷商人の話では、スラムの子の多くは『奴隷になりたがっている』らしい。


理由を聞いて見ると…


「スラムの子供なんて食事も満足に食べられないし、住む所も無い。機嫌の悪い大人に暴力を振るわれ、場合によっては殺されます。そんな物ですから、普通に食事にありつける奴隷になりたい子が山ほどいますよ」


『物』そう言ったのか。


「色々と大変なんだな」


僕の味わった『虐め』なんてこの話に比べたら天国だ。


「異世界人のお客様からしたらそうでしょう!大人ですらスラムの人間は真面に働けないし食事も手に入らないんです。だから、子供にとっては地獄ですよ。だから、ある程度生活の保証をして貰える『奴隷』にしてあげるなんて話聞いたら喜んでなりますよ!本気ならうちの従業員銀貨2枚で半日貸しますからスカウトでもしたらどうですか?」


「スカウト?」


「スラムに行ってめぼしい子に『奴隷にならない』と旦那の代わりに声を掛けさせるんです。まぁ、貧乏そうな子供なら8割は断らないと思いますね」


「凄いな…」


ちなみに此の世界では成人は15才で農村部だと13~14才。

それ以下が未成年だ。


未成年で13才以下だと娼婦にも成れないらしい。


僕はこの誘惑に勝てず、従業員を銀貨2枚で借りる事にした。


◆◆◆


「本当に酷いな」


「スラムですからね」


映画で見るレンガ作りのボロ家、それより遙かに痛んだ家しかない。


「本当に貧しいのは良く解ったよ」


「はぁ~旦那…此処はスラムではまだ裕福な人間が住む場所ですぜ。家に住んでいるんですから…旦那と私が向うのは更に酷い場所です。ちなみに旦那、俺がいるから寄って来ないが旦那は1人で来ちゃ駄目ですよ…物乞いに取り囲まれますからね」


奴隷商人はスラムにも顔が効くから寄って来ないのだそうだ。


確かに言われて見れば皆が僕を遠巻きに見ている。


奴隷商人と一緒にスラムを見て回るが余り、それ程子供は見かけなかった。


「余り居ないんですね」


「スラムの子供は生き抜くのが大変だから、あちこち逃げ回っていたり隠れたりしてします。まぁそのうち会えますよ」


確かに暴力を振るわれ、場合によっては殺される。


そんな場所なら隠れるのは当たり前だな。


猫が沢山居る場所で生活するネズミみたいな物だよな。


一緒に歩き回っていたが、なかなか見つからない。


何人か見掛けたが走って逃げられてしまった。


だが、中にはそこそこ可愛い子もいた。


「迷うな」


「旦那、スラムの子供は大人を怖がりますからね。まさか奴隷を探しているなんて思わないから見つけたら、迷わず声を掛けた方がよいですよ」


そうは言われても『最初の仲間』なのだから厳選したい。


暫く、探していると…階段で座っている少女が居た。


凄く綺麗で可愛い。


前の世界には居ない緑色の髪にスレンダーでスラッとした手足。


子供なのに等身が大人でバレエでもやってそうな体型。


こんな可愛らしい子は前の世界の子役やっているアイドルにも絶対に居ないと言えるほど綺麗だ。


何かに例えるなら『アニメの世界の美少女』を実写版にしたらこうなる。


そんな感じになる。


これ程の美少女は前の世界も含めて見た事は無い。


ドストライクだ。


「あの娘がいい、早く声を掛けて下さい!」


「あれ! 本当にあれで良いんですね」


「はい」


奴隷商の従業員は何か言いたげだったが、直ぐに走って声を掛けにいった。


暫く話していたが交渉が終わったらしく二人して此方に歩いてきた。


◆◆◆

近くで見るとつい見惚れてしまう位に可愛くて綺麗だ。


「お兄ちゃんが私を奴隷にしたいって奇特な人?」


目を見て話されるとつい動揺してしまう。


「そうだけど…」


もっと違う言い方もあるだろうに…これしか出せない。


「あのぉ~お兄ちゃん、そこのおじさんから、お兄ちゃんが子供の奴隷が欲しいって事は聞いたけど、私で本当に良いの?」


こんな凄い美少女なのに『私で本当に良いの?』だって、本当に何を言っているのか解らないよ。


落ち着け僕。


「うん、君が良い」


「何処が良いのか言ってくれるかな?」


こんな子なら幾らでも言える自信がある。


大きく息を吸って…


「緑色の髪が凄く綺麗、少し赤み掛かった瞳が神秘的で…他にも」


「解かった、解かったから、お兄ちゃんもう良いよ! この髪と目が問題無いならもう大丈夫だから! 私は大丈夫だよ。だけど、私は犯罪者だけど良いのかな? 平気?」


犯罪者、それでも諦めきれないな。


だが、牢屋とかに入れられたら困る、それ以前に『犯罪者を奴隷』にすると、どうなるんだ。


僕は奴隷商人の顔を見た。


「奴隷の主人になったからと言って奴隷にする以前の過去の責任を取らされる事は無いですよ。少し余分にお金を払って『犯罪奴隷』登録にすれば問題ありません。余分に支払ったお金は国にいく変わり、それで終わりです。『奴隷になる事が償いになります』その代り犯罪奴隷に解放はありません。終身奴隷扱いになりますから手放す事はできません。奴隷紋は一番きつい物に自動的になりますから行動は制限できます。その代わり以後、奴隷が犯罪を犯した場合は主人のせいになります。そんな感じです。」


こんな美少女が死ぬまで居てくれるなら僕には嬉しい事だ、だがこの娘は良いのかな。


「そういう事らしいけど大丈夫?」


「私は良いけど、お兄ちゃんは良いの?」


マジか? 信じられない。


「僕は構わないよ」


「わかった、それなら、ユウナ私はお兄ちゃんの奴隷になって死ぬまで一緒に居てあげるね」


笑顔も凄く可愛いな。


「ありがとう」


「こっちこそありがとうだよ。お兄ちゃんがご主人様になるならユウナの犯罪歴も言わないといけないよね」


奴隷商が首をたてに振った。


どうやら知る必要があるみたいだ。


「別に気にしないから教えてくれる」


「ユウナはね盗賊団『悪魔の子』の頭目だったの。気晴らしに散歩していて戻ったら、皆、殺されていたんだよ。怖くなったからスラムに逃げてきたんだ。これでも大丈夫かな? これでも良いっていうならユウナは絶対にお兄さんを裏切らないよ! 駄目なら今なら断ってくれて良いよ」


態々言わなくても良い事を言ったんだ。


これは彼女なりの誠実さなのかも知れない。


「過去は別に構わないよ、僕の名前は木崎竹丸。異世界人で『聖騎士』自己紹介はこんな感じで良いかな」


「お兄ちゃん! 異世界人だったの? 嘘、本当に良いの」


「勿論」


こうして僕は理想のパートナーを手に入れた。


◆◆ユウナSIDE◆◆


散歩に出て戻ったら、仲間が皆殺しにされていた。


これからどうしてよいか解からない。


此の世界の子供の命は軽いんだ。


だから、仲間を集めて『大人を殺せる』力を持つ必要があったの。


子供が大人に勝つには数の暴力しかないから。


大人1人に子供3人から4人。


そうしないと勝てない。


だから、沢山の仲間を集めて生活していたんだ。


綺麗ごとは言わないよ。


沢山の人も殺したし、悪い事も沢山したよ。


だけど…そうしないと生きられないんだもん。


餓死したく無ければ仕方が無いんだよ。


『悪魔の子』を失った私は、元の無力な子供になっちゃった。


どうにか、スラムに逃げ帰ってきたけど…どうしよう?


かなり悪い事もしたし、恨みも沢山買っているから『いつ殺されるか』解らない。


それに、私は凄く醜いからそれとは別に暴力を振るわれるかも知れない。


緑の髪に赤み掛かった目。


どちらか一つでも嫌われるのに二つも持っていたら絶望的だよね。


まだ11才のガキだから体も売れないし…最も年頃でも醜い私は誰も買わないと思う…もう詰んでいるよね。


チクショウ、娼婦のお姉さんが羨ましいよ。


たかが男に抱かれるだけで金が貰えるなんて...羨ましくて仕方ないよ。


またかっぱらいでもするいしかないけど…1人じゃ難しいし。


もうどうして良いか解らないよ。


お腹もすいた…なにか食べたいな…


このまま…ユウナ死んじゃうのかな。



「ちょっと話しを聞いてくれないか?」


なにかな?


まさか、私の正体に気が付いて無いよね?


「なんですか?」


「実は、あそこのお兄さんが君を気に入ってね!奴隷にしたいらしいんだ」


あれ…可笑しいな。


私子供だし…しかも醜女なんだから需要は無いよね。


なんで奴隷にしたいのか解らない。


娼婦代わりに生娘を抱きたいって言うなら相手しても良いけど、ユウナみたいにキモイブス、抱きたいと思う男性は居ないよね。


態々、普通の可愛い子も居るのに、どうして私なんだろう?


話をして欲しいって言うから付いて行ったよ。


だけど、可笑しいよ。


誰も相手にしたくない様なキモデブなのかなと思ったんだよ。


そうじゃなくちゃユウナを奴隷にしたいなんて思わないよ。


それでも『奴隷にして貰えるなら』ユウナ的には幸せだと思ったし間違いなく受けるよ…ユウナも不細工だから文句言えないもん。


だけど…なんで、こんな美少年のお兄さんがいるのかな?


黒目、黒髪…歴代の勇者様と同じだし、こんな容姿なら女なら選び放題だよ…なにかの冗談なのかな?


選ばれた理由が正直解らないよ。


「何処が良いのか言ってくれるかな?」


「緑色の髪が凄く綺麗、少し赤み掛かった瞳が神秘的で」


顔が真っ赤になっちゃうよ。


仲間にすら嫌われていた『この容姿』が好きなんて他には絶対に居ないよ。


しかもこんな事いうのが…凄く美少年のお兄さんなんだよ!


夢なのかな? もしかしてユウナもう死んでいて夢見ているのかな?


「過去は別に構わないよ、僕の名前は木崎竹丸。異世界人で『聖騎士』自己紹介はこんな感じで良いかな」


しかも、盗賊の私の過去なんて気にしないでくれるなんて...信じられないよ。


異世界人なんだって。


しかも『聖騎士』なんだって。


犯罪奴隷って事は死ぬまで一緒に居るんだよ、幾らでも口説くチャンスはあるよね。


この髪と目が気にならないなら、今度裸で抱きついちゃおうかな?


なんで買ってくれたのか解らないけど、凄いチャンスだよね。


◆◆◆


結局、同級生の中で仲間同志でパーティを組む人間は殆ど居なかったみたいだ。


僕も一緒なんだけどね。


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