第24話 大河SIDE 笑う大賢者

「ハァハァぜいぜい…うわぁぁぁぁぁぁ」


俺は今ベッドで寝たきり状態になっている。


理人と戦ってから俺の扱いは随分と変わってしまった。


少し前まで『剣聖様』『剣聖様』ってやたら纏わりついてきた奴らが顔を見せなくなった。


はんっ、所詮俺は使い捨てかよ!


俺がこの状態になってから塔子すら、顔を一切見せなくなった。


随分と妹分として可愛がってやったつもりだ。


聖人から聞いた話では『理人』の所にしょっちゅう顔をだしているそうだ。


『ふざけるな』


彼奴には恋愛感情は無い。


ウェーブが掛った綺麗な茶色の髪。


やや釣り目の綺麗な瞳。


お嬢様という事もあって野口あたりの言う『悪役令嬢』が良く似合う。


野口から分捕った古い漫画で見た『猛毒の蛇を可愛がるとんでもない悪女の令嬢』とか近い。


ライトノベルの生易しい『悪役令嬢』じゃなく昔の少女漫画の『表向き可憐で大人びて綺麗な悪役令嬢』それが塔子の容姿だ。


性格も悪くて『女』として見ることは無い。


だが、彼奴には、大樹と同じ『俺と同類』そう思えるなにかがある。


だから可愛がっていた。


それがよりによって『理人の媚を売るだと!』


聖人曰く『あれは完全に雌の顔をしていたね』だそうだ。


話し次第じゃ、幾ら塔子でも許せねーな。


理人を奴隷にするなら兎も角、媚を売るのは許せねー。


大樹は変わらず俺に接してくれる。


『怪我が治ったらまたブイブイ言わせようや』と言ってくれる。


親友だ。


だが、聖人の奴は許せねー。


大樹の前じゃ、今迄通り友達面しているが大樹が、居なくなると突っかかって来るようになりやがった。


今迄逆らった事も無かったのが、俺の事を下に見る様になった。


「大河さぁ~お前、このまま治療が終わってももう、元の様にはならねーんだってさぁ」


薄気味悪くニヤニヤ笑いやがる。


「それはどういう事だ?」


「言葉の通りだよ! 手足は千切れていて繋ぐのに相当苦労したそうだよ? それでね!秘薬迄持ち出したのに元には完全に戻らないんだって!笑えるよね!」


「笑えねー」


急に聖人の態度が変わった。


「大河さぁ! お前、口の利き方変えた方がいいんじゃねーか?『笑えません』じゃねーの! おらっよ!」


そう言うと聖人は俺の足に蹴りを入れやがった。


「ぐわぁぁぁっ」


「教えてやるよ!お前の手足は普通には治るらしい。だがそれは歩けるようになったり、日常生活が出来るだけで、走る事や過激な運動は出来ないらしいよ! 最早、無能は理人じゃなくて、お前じゃねーかな大河くんよぉー――っ」


「聖人、お前!」


更に此奴は腕を殴りつけてきやがった。


「うがぁぁ、聖人てめー-っ」


「てめぇ!? 大河、立場と言う物を教えてやるよ! ガラクタ剣聖が偉そうに! おらよ! お前は大樹の親友という事で皮1枚繋がっているだけのガラクタなんだよ! もう僕や塔子と違うんだぜ、負け犬剣聖!もすぐお前、パーティからも外されるぜ!」


「聖人っ!糞野郎..治ったら覚えていろよ!」


「バーカ、治らないのが解っているからやっているんだよ! あはははっ!惨めだよね! 理人に負けて、妹の様に可愛がっていた塔子は、その理人に雌みたいに色目使っていてさぁ…ねぇねぇどんな気持ち? どんな気持ちかな!」


糞…動けないのを良い事にまた殴りやがった。


「痛てーな…消えろ」


「今日はこれ位で良いや!大樹に言いつけたら…殺しちゃうからね! 負け犬くん…あははははっ!可笑しくて笑いが僕止まらない」


散々馬鹿にすると聖人は俺の部屋を後にした。


糞野郎が。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る