強者
ミルア村の入り口付近。
銀髪、ロングコートのジレンマは鋭い眼光でセシリアを睨んでいた。
セシリアはその眼光に押しつぶされそうになるが、なんとか剣を構えて臨戦体制だった。
ジレンマはロングコートの左ポケットに手を入れ火の魔石を何個か手に握った。
セシリアはそれを見た瞬間、猛ダッシュでジレンマへ向かう。
すぐさまジレンマは火の魔石を指で弾いて宙に浮かすと、右ストレートでセシリアに向かって撃った。
セシリアは体制を低くすると後ろから矢が放たれており、その魔石と矢が接触すると爆破する。
「はぁぁぁぁ!!」
爆煙を掻き分けて至近距離に到達したセシリアは大きく縦一線でジレンマに斬りかかった。
その瞬間、ジレンマは左手に持っていた火の魔石を右手に投げて握り、セシリアの振り下ろした剣に右ストレートを放つ。
拳と刃が激突した瞬間、ズドン!と爆破が起こり、セシリアが仰反る。
そのままセシリアの腹にジレンマは回し蹴りを入れた。
「うっ!」
3メートルほど吹っ飛んだセシリアはなんとか着地し立つが、あまりの痛みに腹を押さえる。
セシリアが持ってる剣は爆発の衝撃で半分に折れていた。
それでも剣を構えるセシリアにジレンマはニヤリと笑う。
「凄まじい闘気だな。シックス・ホルダー以外でここまでの強者は少ない。ずっと遊んでたいが、あまり時間が無いのが残念だ……」
「貴様は一体何者なんだ……?こんな戦い方は見たことがない……」
「俺は今"ジレンマ"と名乗っている。この戦い方は昔に戦った魔力も持たない転生者のバトルスタイル。面白いだろ?」
「ジレンマだと……?転生者……?」
困惑するもセシリアは剣を再度、両手持ちで構えた。
メルティーナもずっと弓でジレンマを狙っている。
「他の世界からの来訪者。ごくたまにいるらしい。奴はかなり強かったな。殺すのは惜しかった。奴ほどではないがお前も強いよ。だが、ここまでの命だ」
「貴様……」
セシリアは再度ダッシュして折れた剣でジレンマに斬りかかろうとしていた。
後ろにいたメルティーナは突破口を開くため、渾身の力で矢を放つ。
矢はジレンマの顔面を狙ったものだった。
矢が到達すると同時にセシリア体制を低くし右下から左上への斬り上げ攻撃を狙った。
ジレンマは左手に持っていた火の魔石を地面落とすと、飛んできた矢を右手で簡単に掴んだ。
同時に地面に落ちた火の魔石を左足で踏みつけ爆破させてセシリアの攻撃を止める。
「くっ!」
セシリアは攻撃モーションを中断しクロスガードで爆風を防いだが、ジレンマの手が爆煙の中から現れ、セシリアの喉を掴み、片手で持ち上げる。
セシリアは剣を落とし、ジレンマの手から逃れようと暴れるがびくともしない。
「なんでこんなに弱いんだ?……いや、すまない口癖が出た……」
ジレンマはそのままセシリアを殺すつもりで喉を握り締める。
メルティーナは弓を構えるが、ジレンマはセシリアを盾にして矢を放てなかった。
「が、がはぁ……」
「お前は強かったよ。また来世で出会うことがあれば戦おう」
ジレンマは笑みをこぼし、トドメをさそうと手に力を入れる。
その瞬間だった。
村の奥の方で爆音が響いたと同時に診療所からジレンマの方へ凄まじいスピードで一直線に炎が地面を走った。
ジレンマは瞬時に反応しセシリアを横に投げた。
炎に包まれたそれはジレンマの目の前でジャンプして右ストレートを打つ。
ジレンマもその攻撃に反応して右ストレートを打ち"拳"と"拳"がぶつかった。
その衝撃で轟音と共に地面が四方八方に割れ、熱波が周囲に広がり家屋の窓ガラスが次々に割れる。
炎の主はアルフィスだった。
髪と眼は真っ赤に染まり、さらにアルフィスのグローブは炎を纏っている。
その漆黒のグローブに描かれた魔法陣の色が"白"から"赤"に変わっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます