魔法とスキル


俺は死んだ。

明確には肉体が死んでしまったのだ。

死ぬ気で筋トレして鍛えた体はもう無い。

今あるのは12歳の病弱の少年の体だ。

俺は"アルフィス・ハートル"という少年に転生を遂げた。


この体は細くて背が小さい。

だがひとつ凄いことがあった。

この体には魔力というものがあった。

この世界には魔法というものが存在しているらしい。

俺は火の魔法に優れていた。

なんともカッコいい。


そして残念なこともあった。

この少年は魔力が異常に弱い。

弱すぎて魔法がほぼ使えず、使えるのは下級魔法の4つだけ。


1:ファイアボディ

対象の肉体強化をおこなう。


2:ファイアガード

対象の物理防御強化をおこなう。


3:ファイアマジックガード

対象の魔法防御強化をおこなう。


4:ファイアヒール

対象の体力を継続的に癒す


全部、補助魔法。

ひとっつも魔法っぽいことはできない。


「火の魔法使いなのに火が出せないってどういうことなんだよ」


俺は他人の補助するために生まれ変わったのか?


さらにこの魔法と同じくスキルというものもこの世界に存在した。

スキルは魔法の力を底上げするもので、こちらは体に刻み込むものらしい。


だから、このスキルは刻み込んだら最後、もう生涯変更できない。


最悪なことにこの少年は刻み込める4つのスキルを全て刻み込んだ状態で死んだらしい。


・複合魔法

下級魔法を2つを同時に発動できる


・無詠唱

下級魔法を詠唱せずに発動できる。


・下級魔法強化

下級魔法の効果を高める。


・下級魔法解除

対象に掛かっている下級魔法の効果をひとつ解除する。


「もっといいのがあるんじゃないか?なんで補助に力入れるかなぁ」


このせいで俺は何度かこの少年の父親に殴られた。なぜこのスキルを選んだのかと。

殴り返そうとしたが、この少年の力では無理だった。

母親は俺の母親に似て病弱だが優しくて、父親に殴られてる俺を慰めてくれた。


この少年はよほど人の補助が好きらしい。

俺には理解不能な思考だった。


「強くなるにはどうしたらいい?」


俺は常にそのことを考えながら暮らし、半年が過ぎたある日、突然そいつは現れた。


一匹の黒猫だった。

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