#129 アニメ鑑賞会でアイとの初コラボ配信!

 僕たちはミニ四君で遊んだ後、スマホゲームの配信をしようと決めた。

 まあ公式からの許可も下りたので。


「そうだ、みどりさんも誘おうか?」

「そうね、みどりさんも私たちと同じようにスケジュールが開いているハズだし」


 そう僕と留美さんは話し合ってみどりさんも誘うために電話してみたのだが⋯⋯。


『ミニ四君のスマホゲーム? ああ、あの超絶クソゲーの?』

「クソゲーなんですか、これ?」


 電話の向こうのみどりさんの声はややウンザリしていた。


『いやゲーム自体は面白いんだけど、ガチャが渋かったり運営が不手際で炎上したのよね』

「そうなんですか? この『ハイパーダッシュグランプリ2』ってゲームは?」

『2? なにそれ? ⋯⋯⋯⋯あれ? いつのまにか2になっている!?』


 どうやら炎上して不評だったミニ四君は過去のもので、今から僕たちがしようとしていたのはまったくの別ゲーだと判明した。


『⋯⋯なら私もやろうかしら? 例のハッキング事件の進展もなくて記事も作りようがないし』


 そういえば、みどりさんは僕たちよりも上の世代だな。


「みどりさんはミニ四君知っているんですか?」

『知ってるわよ、私の世代だとマストな遊びだったしアニメも最高だったからね』


「アニメ? ミニ四君ってアニメになっているんですか?」

『なってるわよ。 昭和版と平成版の2つが⋯⋯てかあんたたち、そんな事も知らないでそのゲームする気だったの?』


「ダメですかね?」

『ダメとは言わないけど、アニメを見てからするのをお勧めするわよ』


「なるほど⋯⋯」

「なら配信でアニメ鑑賞会をしましょう!」

「リネット!?」

『そこに居たのリネットちゃ⋯⋯様』


 僕たちはまだ家に帰ったばかりで、みんなここに居たのだ。

 そしてスピーカーホンで話していたのでリネットが会話に割り込んできた。


「私は海外に居ましたが、配信でリスナーの皆さんと一緒にマスクライダー全話耐久鑑賞会とかたまに行っていましたので!」


 なるほど、アニメの鑑賞会の配信か。


 現代において古いアニメでもサブスクなどで気軽に見ることが可能だ。

 そのアニメを見ながらリアルタイムでの感想やリアクションをリスナーと楽しむ配信もあるのだ。


 実際のアニメの音声や画像は一切配信には乗せないので、リスナーの方でも同じアニメをサブスクなどで同時に見てもらう必要がある配信スタイルだった。


「じゃあやりますか、ウチでアニメの鑑賞会を?」

『いいわね! 私も久々に見たいし』


 こうしてみどりさんも加わってのアニメ鑑賞会になった。


 電話を切り僕は姉さんに聞いてみる。


「姉さんと映子さんはどうする?」

「私も見るわ。 映子も見るでしょ?」

「うん、見るよ! 真樹奈と一緒に~!」


 その答えで僕たち『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』をするはずだったVチューバー全員が参加する企画になったのだった。


 ⋯⋯いや、あと1人足りないか?

 アイ⋯⋯彼女だけが居ない。

 彼女だけハブるとかしたらあまりいい気はしないだろう、今後の配信に影響するかもだし。


「アイちゃんも呼ぶか?」

「そうね」

「来るかな、あの子?」

「私もアイさんに会いたいです!」


 呼ぶこと自体にはみんな賛成だった。


「でもさアイって、イベントとかでも一度もリアルで会ったことないんだよな」


 そうシオンが説明する。


「会ったことないの? シオンでも?」

「以前の私のように海外とかにお住まいなのでしょうか?」


「さあね。 理由はわからないけど全然顔出ししないし、呼んでも来ないかも?」


「うーん。 でも誘わないわけにもいかないから、シオン頼めるか?」

「ん、了解! 坂上さんに言っとくね」


 こうしてシオンから坂上さん経由で、アイにもアニメ鑑賞会への招待を行った。


「ん⋯⋯メールが来た。 アイからだ」

「どんな返事シオン?」


「えーと、なになに『そちらに行くことはできませんが私も一緒にそのアニメを見たいと思います。』⋯⋯だってさ」


 まあそれは可能だ。

 同じサブスクでアニメ見ながらリアルタイムでネット通話しながら配信すれば、リスナーからすれば僕たちが全員そろって見ているかどうかなんて実際にはわからないし。


「じゃあアイも参加と⋯⋯でもやっぱり来ないんだね、なにか事情のある子なんだろうか?」

「実際はわからないけど⋯⋯事故とかで歩けなくなった子じゃないか、とかは想像したなあ」


 シオンは実際に交通事故にあって記憶が飛んでいるからそういう想像をしたようだ。


「だとしても、今は元気に配信しているVチューバー仲間だしね」


 こうしてアイは来ないものの一緒にアニメを見る配信をすることになったのだ。

 これが僕たち全員にとってのアイとの初のコラボだった。




 その日の夜の配信に備えて僕たちはそれぞれの時間を過ごす。


 今のうちに宿題をする留美さんや。

 今のうちにたっぷり寝ておく姉さんやシオンなど。

 僕はみんなが来た時の為に食事の用意をしていた。

 そしていったん帰っていたリネットが来て、みどりさんも遊びに来た。

 映子さん? あの人は姉さんの隣で寝ているよ。


 こうしてアイ以外の全員が揃ってのアニメ鑑賞家が始まるのだった。


 ── ※ ── ※ ──


「みなさん、こんばんは―! 電遊アリスちゃんねるのお時間です!

 今日から『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』の予定だったのですが発売延期になったので、みんなと一緒にアニメを見たいと思います!

 それでは今回のゲストのみんなご挨拶を!」


「みなさーんこんばんは、マロンです!」

「エイミィよ、こんばんは」

「ルーミアです、皆さんこんばんは」

「くくく吾輩も居るぞ! ネーベルです、こんばんは諸君!」

「アリスの家に招待されました! ブルーベルです!」

「みどりです。 今日はアリスちゃんの作った夕飯を頂いたわ!」


 今回の配信ではリビングで全員がヘッドセットのマイクを使って行っている。

 こうやって集まるとさすがにこのリビングも手狭だった。

 だけどここには居ない、もう1人が⋯⋯。


『アイです。 こうして皆さんとコラボするのは初めてなので楽しみです』


 アイはここには居ない。

 しかしリスナーからは全員ここに揃っていると思うはずだった。


【おおアイちゃんコラボ始めたのか!】

【なんてレアな配信!】


 そんなコメントもチラホラ見える。


【ところでなんのアニメ見るの?】


「今回見るアニメは『爆走軍団! ダッシュ&ゴー!』です。

 えーと実はですね、ゲームが出来なくなったのでみんなで『ミニ四君』のゲームでもしようかという話になったんですが、みどりさんが先にアニメを履修するべきだと言いましてね。

 それで先にアニメの鑑賞会をしようという企画でございます!」


【ミニ四君のゲームするのか】

【あれクソゲーじゃん】

【いや最近リニューアルしたぞ】

【せやでそっちは神ゲーになっている】

【前作の評判悪すぎて思いっきり過疎ってるけどなw】


「おー、ゲーム版した人も居るみたいですね、これは楽しみです。

 でも今夜はまずアニメを楽しむ事にしますね!」


【アニメって昭和版と平成版あるが?】

【全部見るとかなり時間かかるぞ】


「ああそれなんですが、今夜から4~5日間くらいかけてみんなのチャンネルで分けてリレー配信という事にします。

 なのでトップバッターはボクで、次はシオンのチャンネルでする、みたいになります」


 これ事前に調べたら話数が全部で200話超えてるので、全員のVチューバーチャンネルで25話ずつくらいに分けて配信を行うことにしたのだ。


 まあチャンネルを変えるだけで見るのはずっとこの家でなのだが⋯⋯。

 おかげでみどりさんとかは家に帰らず、しばらくシオンの家に泊まりになる予定だった。

 こういうの合宿や修学旅行みたいで楽しそうだ。


「それでは時間がもったいないので、さっそく見ていきますね!

 サブスクで同じアニメが見れる人は一緒に見ようね!」


 こうしてボクたちのアニメ鑑賞コラボ配信が始まったのだった。




 そして見始めてしばらくして、ここには居ないアイからの疑問や質問が殺到し始めるのだった。


『あの⋯⋯なぜこの人達は、アイスホッケーの板を持って走っているのでしょうか?』


『あの⋯⋯なぜこの人達は、いちいちミニ四君の名前を叫ぶのですか? 音声コマンド回路が搭載されているのですか?』


『あの⋯⋯なぜこの人達は、ミニ四君と同じ速度で走れるのですか?

 アイの計算では時速20キロメートル以上は出ているはずなのに、こんなに楽しそうにしゃべりながら走り続けられる彼らは何者なのですか?』


【www】

【アイちゃんのマジレスがいちいち面白いw】

【考えるなアイちゃん感じるんだw】


『まったく理解できません。 ⋯⋯でも、楽しそうですね』


 この時ボクたちみんながアイの事を知らなかった。

 あいかわらず質問が多いけどだんだん楽しそうにアニメを見ているであろうアイの事を、ボクはもっと知りたいと思うようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る