#083 アリスの冒険世界 3日目その1 ミランダ姫救出作戦、開幕!

「アリスです! 今日も元気に『ロールプレイング・アドベンチャーワールド』をやっていきます。 3日目となる今回の見どころは、何と言っても昨日誘拐された姫の救出ミッションですね」


【ホントに1日放置でワロタw】


「いや仕方ないじゃん、昨日は結構時間がかかったし。 でも今日は姫を助けるまでは続けます!」


【ワイらも後数時間でベータ版出来るから参考にさせていただきます!】


「お、一般当選の方ですね、おめでとうございます! たしか0時から出来るんでしたね」


【そうそう】


 こうしてボクはそんな話をしながらルーミアと合流した。

 するとそこにはまだルーミアしかログインしておらず、シオンとみどりんの姿はなかった。


「ありゃりゃ、今日はボクたちの方が先だったみたいだねルーミア」

「そうね」


「じゃあ今のうちに買い物しとくか」

「あら、アリスは何かまだ買う物があるの?」


「うん、盾を買おうかと」

「え? 盾ならもう装備しているじゃない、なんで?」


「ふっふっふっ! これがボクの考えた秘策! 両手盾さ!」


 このゲームのシステムは『装備:武器』『装備:盾』ではない、『装備:右手』『装備:左手』なのだ。

 なのでその気になれば両手に剣を装備する二刀流だってできる。


 まあ利き腕に設定していない方の武器はゴミみたいな威力と命中率になるからあんまり意味が無いけど⋯⋯。


 でも盾なら違うのだ!

 盾には命中率の概念は無いから単純に防御力アップになるのだ!


「今のところシオンの方がボクよりも防御力は上だけど、こうすればかなり近くなるからね」


 シオンの種族のヴァンパイアはステータスの基本耐久値はあんまり高くないからな。

 今シオンの防御力がボクを上回っているのは単純にレベルが高いのと、全身鉄シリーズの防具で固めているからだ。


 そしてこのゲームでは同じランクの防具なら鎧と盾の防御力の方が高く設定される傾向がある!


「この後のレベルアップでステータスを耐久値に振って、さらに両手盾にすればだいたいレベル7くらいでシオンの防御力を越えるはず」


 そんな説明をボクはルーミアにした。


「そうなんだ、すごいねアリスは!」

「そうかな? えへへ⋯⋯」


「私なんてどうやったら強くなれるのか全然わからないし」


「うーん、ルーミアの黒魔法師は今のところ工夫のしようがないからな⋯⋯。 でもそのうち属性魔法の種類が増えてくると敵の弱点を突くとダメージが跳ね上がるよ!」


「そうなの?」


「このゲームの敵には耐性があるからね」

「『耐性』ってなに?」


「ようするに火に弱い敵に火の魔法で攻撃したら、その分威力が上がるというシステムだよ」

「あー、たしか訓練所のセリフにそんなのがあったような⋯⋯」


 ルーミアはボクと違ってその辺のモブキャラ全員に話を聞いているのだろう。

 ただゲームシステムの『当たり前』に予備知識が無いから理解できないだけで。


「例えば今のルーミアが『ファイアー・アロー』を使ったら10のダメージで『アイス・アロー』を使ったら15くらいのダメージが出るとする」


「だいたいそんなとこね」


 これはファイアーアローよりもアイス・アローの方がレベルの高い魔法だから基礎威力が違うのだ。


「でも火が弱点の敵だったら格下のファイアー・アローで倍の20のダメージがでるんだ!」


「そうなのね!」

「こういう弱点相性を覚えると効果的にダメージを与えられるようになるよ、黒魔法師は」


 魔法職は基礎知識が重要だからな。


「わかったわ、やってみる」


 こうやって話していると、ようやくシオンとみどりんがやって来た。


「おまたせ、みんな!」

「ごめんなさい、待たせちゃって!」


「別にいいよ、それよりもすぐに姫様を助けに行こうよ!」


 そうボクは提案した。

 しかし⋯⋯。


「そう思ったけど、先にアリスとルーミアのレベル上げた方がいいんじゃないかな?」

「前回のゴブリン討伐は私とネーベルの高レベルでゴリ押ししたようなもんだしね」


「⋯⋯む? たしかに」

「そうなの?」


 戦士のシオンはともかく吟遊詩人のみどりんでも一撃でゴブリンを瞬殺してたしな。

 それでサクサク進んだ自覚は確かにある。


 その分ボクとルーミアのレベルが適正レベル帯より低くなっている可能性もあるな。


「じゃあ先にレベル上げもかねて別の依頼をするか⋯⋯」

「いいのかしら? 先にお姫様を助けないで?」


「まあ王様も万全の状態で行けって言ってたし」

「そうそう」


 こうしてボクたちは別の依頼を探すのだった。




 こうしてボクたちが選んだクエストは『鉱山のモンスター退治!』である。

 まあよくある魔物討伐クエストだった。

 報酬は『ブロンズインゴット』とある。


「もしかして武器作成とかあるのかな、このゲーム?」

「ありそうね」

「そういえば休業中の鍛冶屋があったっけ?」

「さすが、ルーミアはよく見ているなあ」


 そんな事を話しながらボクたちは鉱山にやって来た。

 そこには『コボルト』という犬系の獣人族であるモンスターの縄張りのようだった。


「とりあえず狩るか⋯⋯」


 このクエストはスライムの時と同じ討伐数が設定されているタイプのクエストだった。


「これも途中リタイアしたら討伐数リセットされるんだろうな」

「そうでしょうね」

「なら一気に倒さないと!」


 こうしてボクたちパーティーの狩りは進んだ。

 目標討伐数まであと5体になったその時だった!


 ササっと動く影を発見!


「今のモンスター?」

「だと思う」

「見覚えのない色のアイコンだったわね」

「でも形はスライムだったような?」


 スライム?

 ボクたちはその未知のモンスターを求めてその色違いスライムを探した、すると⋯⋯。


 [ブロンズスライムがあらわれた!]


 と、表示された!


「コイツ⋯⋯もしかして!?」


 とりあえず真っ先に攻撃したのはみどりん⋯⋯しかしダメージは『0』だった。

 次に動いたシオンの攻撃はミス! 外れた!

 その次のルーミアの魔法は効かなかった!

 ボクの銃でなら! ⋯⋯ヒット! しかしダメージは『1』だけだった!?


 [ブロンズスライムは逃げ出した!]


「⋯⋯」

「ねえ今のって?」

「メタル系よね?」

「メタル系? 音楽の?」


「違うよルーミア、メタル系ってのは経験値とか多く持ってるボーナスモンスターで倒しにくいんだ」


 そうボクは簡単な説明をする。


「うーん? 私だとまだ攻撃が当たらないのかな?」


 シオンは器用さの低いヴァンパイアだからなあ。


「私の攻撃力でもダメージ0なら、今は倒せそうもないわね」

「私の魔法も効かなかったし⋯⋯でもアリスの銃はダメージあったわ。 ⋯⋯1だったけど」


「銃はダメージが固定値だから、かな?」

「じゃあ私たちみんな銃を装備してみる?」


 このゲームの武器や防具は装備するだけならどの種族でも、どの職業でも可能なのだ。

 つまり全員銃を装備することは可能なのだ。


 しかし種族や職業によってはメリットやペナルティーがあったりすることが多いのだ。


「いや、やめた方がいいと思う。 機械人形は『銃の威力が2倍になる』から」

「なるほど、それがあったか」


 その時ボクにはアイデアが閃いた!


「みんな、このクエストいったんリタイアするよ」

「別にいいけど、どうするの?」


「買い物の時間だ」


 そう言ってボクたちはそのクエストを放棄して⋯⋯ギルドの店にやって来た。


 たしかあったはずだ⋯⋯。

 その商品は確かに存在した。


 [たいまつ:周りを少し明るくする。 投げると敵に少しだけダメージを与える]


「よし! みんなこれを買い占めろ!」


 こうしてボクたちはコボルトを狩って得たお金でたいまつを持てるだけ購入したのだった。




 そして再びボクたちは鉱山にやって来た。


「でもアリス、これで攻撃するのはわかるけど⋯⋯あのスライム、出てくる確率低いみたいよ?」

「それもちゃんと考えている」


 こうしてボクたちは何度も階段を上ったり下りたりしてエリアチェンジを繰り返した。


「なるほど⋯⋯マップがリセットされるとモンスターが再配置されるから」

「スライムの時だけ狙う訳ね!」

「へー! アリスってすごいこと思いつくのね!」

「ふ⋯⋯このくらいなんでもないさ」


 そうしていると待望のブロンズスライムが現れた!


「みんな、たいまつは持ったな! 行くぞー!」


 そのたいまつはボクの狙い通り、毎回『1』のダメージをブロンズスライムに与えて合計『4』ダメージで焼き殺すことに成功したのだった!


 [ブロンズスライムをたおした!]

 [経験値108を手にいれた!]

 [5Gを手に入れた!]


「よっしゃー!」


 予想通り経験値が多い!

 コボルトだと1匹あたり10くらいだからな。


「手持ちのたいまつの在庫ならあと4体くらいはやれるな⋯⋯」

「じゃあコボルトも狩るか」

「そうね」

「レベル上がったよ!」


 こうしてボクたちのレベリングは一気に進むのだった。


 このクエストをクリアした時のレベルは⋯⋯。


 [ネーベル:13→14]

 [みどりん:10→12]

 [ルーミア:3→8]

 [アリス:3→8]


 と、一気に差を詰めることに成功したのだった!


「よし準備完了! これならいけるぞ! さあミランダ姫を助けに行くぞ!」


 こうしてボクたちの、お姫様救出作戦はここから始まったのだった!

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