4−5 殺し屋から守り屋に警護依頼

 宮水ASSの社用車は二台、基本クロに使わせる軽自動車のマツダスクラム。貨物車両扱いの運搬用。もちろん資材や、物として死体を運ぶ事もある。そして、もう一台はスズキソリオ、西宮市内で使うならコンパクトカーで十分。ブリジットを助手席に乗せて、榊は芦屋の閑静な住宅街に向かう。

「うはー、いつきても木花咲耶(このはな)邸はつよつよやなぁ」

 金持ちとはこうだ! と見せつけられるような、見事な洋館。来客用駐車場に本来であれば車庫付の駐車場に並んでそうな高級車が何台も並んでいる。

「わざわざきてくださってありがとうございます。宮水ASSのお二人」

「いえいえ、殺し屋からの護衛のご依頼なんて木花咲耶さんのところしかないからねぇ」三人は笑顔で笑いあう。「まぁ、お二人とも全く隙のない事!」

 白亜はシャンパンを用意しようとするが、車で来ているのでと榊が断り、ブリジットが心底残念そうな顔をする。「白亜お嬢、で? ウチ等、誰を守ったらええんや?」

「そう慌てないで」そう言って、白亜は紅茶を用意する。西宮は甲子園のムレスナティー。

「これはこれは」

 宮っ子である榊への接待を兼ねている。香り良し、茶器よし、水良し、そして紅茶を淹れる白亜の腕も中々の物だった。

「お菓子はアンリシャルパンティエにさせてもらったけどよろしかったかしら?」

 芦屋の老舗洋菓子、スイーツ激戦区の西宮市のケーキを選ばなかった理由はお茶がメインだから、あえて芦屋のお菓子を引き立て役にした白亜。「気を遣わせて」と榊が言う。

「いえいえ、お客様ですから」それを聞いたブリジットは「そっちでしょw」

「依頼主という意味では、ですが木花咲耶家はおいで下さった方は皆お客様」優しく微笑んで紅茶を一飲みする。「それが、どんなド腐れででも」

 ブリジットはすぐにガバメントを向ける。「やんの? 買うで!」

「まぁまぁ、BBも木花咲耶さんも話が進まないよ。依頼の話なのに殺し合いはじまりかけてるよ! はい、やめやめ」榊に静止されて「けっ、ビッチ!」

 中指を白亜に向けるブリジットに「BB!」と榊が叱咤。

 こと宮水ASSの警護対象を狙う者と、六麓HSの殺害対象は一致し、よく揉める。「依頼内容を聞いたら俺たちずらかりますから」と榊が話しを強引に進める。

「そうでしたわね! 私の友人の警護ですわ」そう言って白亜が取り出した写真。これまたお金をもってそうなドレスを着た米国系の女性。白亜クラスになると知り合いのレベルも相当高いんだろう。

「殺し屋の同業者?」

「殺すわよ? 猟犬」と白亜が地を出したところでお茶を一口。「カリフォルニアのワイナリーの姫よ。西宮の酒蔵フェスティバルに興味をもたれて、当日までの数日間」

「受けましょう!」

「榊さんならそう言ってくれると思いましたわ。私がエスコートしてさしあげたかったのですけど、ちょうどお仕事が入ってしまって、キャンセルできそうにないので、凄腕の護衛をと思いまして、クソったれですけどお二人なら私が襲っても簡単にはレベッカを殺させてはくれないでしょ? 私が仕事を終えて迎えに行くまでで結構です」

「楽な仕事じゃん」とブリジットが言うが、「俺とBBも仕事がある。ここはクロと冬雪くんにお任せするか」

 白亜は榊とブリジットが護衛をすると思って読んだ。

「えっ? ちょっとよく聞こえませんでしたが、なんて?」とやはり地がでて聞き返した。

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