第6話

部屋に戻って寝台に倒れこんだ…と思ったら乱暴に起こされた。

窓の外を見たら暗くなっていて、もう食事会の時間になったようだ。

疲れすぎて夢も見ずに寝ていたらしい。


月に一度、お祖父様との面会と食事会の時だけは、

さすがに使用人たちも私を呼びに来ないわけにはいかない。


不機嫌そうな高齢男性の使用人に寝台を蹴って起こされたようだ。

こんな風に起こされるのもいつも通りなので特に驚きもない。

これも監視から報告がされるだろう。


まだ寝てたかったと思いながら、使用人の後をついて食事会の場に行く。

大柄な使用人がすたすたと歩くのを小走りで追いかける。

私に気をつかってゆっくり歩くとか、話をするなんてことはありえない。


何とかついていき、息が切れそうなころに食事会の場所に着いたが、

そこにはもうすでに全員がそろって座っていた。


お祖父様が一番奥に、その次にお父様とお母様。

叔父の公爵と公爵夫人、最後にイライザが座っている。


私が最後に入ったことを見て、叔父が大声で文句を言い始めた。


「父上を待たせるとは何事だ!

 ソフィア、お前はいつからそのように偉くなったのだ。

 わがままも大概にせい。」


「はい。」


これもいつものことなので、素直に返事をして席に着く。

わざと遅れるように迎えに来るのだから、飽きた茶番だ。

私が怒られたのを見て、イライザがくすりと笑った後ではしゃいだ声を出す。


「お父様、そんなに怒らないで。ソフィアはまだ小さいのだもの。

 食事に遅れるのも仕方ないわ。ね、早く食事にしましょう?」


「あぁ、そうだな。」


はたから見たら、ハズレ姫を庇う優しいイライザ姫に見えるのだろう。

だが、本当は早く腐った食事を出して、私に嫌がらせしたいだけだ。



運ばれてくる食事はいつも通り、すべて腐った食材で作られている。

毎回、腐った食材を用意するのも大変だろうし、

腐った食材を調理するなんて…料理人としても嫌だろうに。


運ばれてすぐに臭う食事を見て、早く帰って寝たくなる。

ソースがかけられていても、その下の肉や野菜は色が変わるほど腐っていた。

今日はどれくらいの時間で終わるかな。

ぼんやりと料理をながめ一口も食べない私を見て公爵夫人が眉をひそめる。


「ソフィア様、好き嫌いが多いのは存じていますが、

 少しでも食べたほうがよろしいですわよ?」


人のよさそうな顔でにっこり笑って勧めてくれるが、

この夫人もこの食事がおかしいのはわかるだろう。

どうしたって臭いはごまかせない。

二つ隣に座っている夫人が気が付かないとしたら鼻がおかしい。


ついでにいうと、おそらく両親は気がついているだろうけれど、

私が食べないこともわかっていて黙っているのだと思う。


弟夫妻と話すとろくなことが無いと思っての行動らしいが、

自分が良ければそれでいいと思っているあたり、

お祖父様が国王を代替わりできないのも仕方ないと思う。

こんな二人に国を任せたらあっという間に無くなってしまいそうだ。


「体調が悪くて眠いのです。

 とても食べられそうにありません。」


「あら、とても美味しいわよ!

 食べたら元気になると思うわ!ね!」


隣から元気よく勧めてくるイライザに少しだけ嫌がらせし返そうかと思う。

ひと月しかないのだから、効率よく証拠を集めたい。

そのためには…少し反撃しておこう。


「そう?そんなに美味しいって食べるなら、イライザにあげるわ。」


「え!そんなのいらないわよ!…あ。」


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