第140話 古民家でみる夢


   古民家でみる夢

   


 古民家を購入したKさん一家の話。


 Kさんには妻と5歳になる息子がいた。


 しばらくは何気もなく過ごしていたのだが、五歳になる息子が毎晩のようにうなされる。どうしたのかと問うと、この家に来てから幾度もなく怖い夢を見るのだという。


 その夢の内容はこうだ。


 その夢の中でAは、この家の一番奥にある古い座敷の床下によくないものが埋まっていると言う事がわかっているようである。


 どうしてかAはそこに行かねばと思っているのだが、座敷に続いている廊下の先で真っ黒いものが両手を広げて通せんぼしている。


 怖くてたまらないのだが足は止まらない。怖い怖いと思いながらも目前まで差し迫ると、その黒い影は消え去るのだが、そこに先程までは無かった筈の開かずの扉が現れて、Aはそれを正面にする。


 夢の中でAは、「ここだ、この扉の先に僕の探しているものがあるんだ」と考えているという。


 いよいよとその古い扉に手をかけると、ドアノブに手をかけた瞬間にぐいっと引っ張り返された。一足早く扉が開いて、その向こうから生白く、小さな手がぬっと出て来てAの手首を掴むのである。


 ゾッとして顔を上げると、僅かに開いた扉の隙間からはAが、Aこちらを覗いて手首を掴んで来ているのだという。


 掴まれた手首を見下ろすと、そこには煤こけてゴツゴツとした、まるで炭鉱夫の様な、見覚えのない成人男性の腕があるのだという。


 つまりAは、夢の中でその炭鉱夫になっていて、自分自身に見つめられている訳である。


 そして夢の中のAは死んだように表情を変えずに、こういうのだそうである。


「こっちに来ちゃだめ」



 Aは、この家の地下に何かがあるのだと言って聞かない。


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