第31話 逢魔 <日入 酉の刻>

西の空が紅く染まり、

夜霧の敷地に薄っすらと赤みが射していた。


本宅の艮の間の縁側に

消炭色の着物を着た

おかっぱ頭の少年が一人、

ぽつんと座っていた。

柳眉の下の二重の瞳は右目が緑に、

左目は赤く光っていた。

ツンと尖った細い鼻と

その下には鶴の頭のように赤い唇があった。

その色白の美少年こそが闇耳だった。


庭先で

雉鳩が「グーグーポッポー」と啼いた。


闇耳の太腿の上には真蛇の面があった。

闇耳は手探りで

左手の側に置かれた龍笛を手に取った。

そして目を閉じてそっと唇に笛を当てた。

美しくも悲しげな笛の音が

妖しく響いた。

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