七章 夜に蠢く
黄昏 戌の刻
閑話
屋敷の敷地に四つの灯りが灯っていた。
そのうちの一つ。
卯の宅では狐狸と二郎が
陽気に酒を酌み交わしていた。
二郎の丼茶碗が空になると
隣に座っている狐狸がすぐに酒を注いだ。
二郎はそれを一気に流し込んだ。
「いい飲みっぷりね。
それに、アンタ。
まったく酔ってないじゃない」
頬がほんのりと赤く染まった狐狸が
二郎へ流し目を送った。
「オラはこのくらいじゃ酔わないど」
二郎は「がははは」と口を大きく開けて笑った。
「あら!
腕っぷしも強くて、
酒にも呑まれないなんて、
アンタ、本当にイイ男だわぁ」
そして狐狸は
「ふぅ」
と短い赤毛を掻き上げて
「・・それにしても体が熱くなってきたわぁ」
と呟くと
着物の胸元を開けて団扇代わりに手で扇いだ。
二郎の目がその胸元に釘付けになった。
狐狸は続いて畳に足を投げ出すと
着物の裾を捲り上げた。
艶のある太腿が露になった。
それを見た二郎の鼻息が荒くなった。
狐狸は二郎にしな垂れかかると、
二郎の顔をそっと撫でた。
その手はゆっくりと二郎の体を弄りながら
腹の下へと這っていった。
「あっちの部屋に布団を敷いてあるから
今夜は泊っていきなさいよ。
アンタ、まだ女を知らないでしょ?」
狐狸が二郎の首に腕を絡ませて耳元で囁くと
二郎の顔が真っ赤に色付いた。
「お、オラ、
こ、今夜は泊っていくど!」
二郎はそう声を張り上げてから
空の丼茶碗に自分で酒を注ぐと
それを一息で飲み干した。
美しくも悲しげな笛の音が妖しく響いていた。
その笛の音に
雉鳩の「グーグーポッポー」という啼き声が
重なった。
灯りの消えた卯の宅の床の間では
素っ裸の二郎が
布団の上に大の字で横たわっていた。
その体に跨って褐色の肌を露わにした狐狸が
激しく腰を振っていた。
「あぁぁぁっ、いいわ、二郎っ。
アンタ、三回目なのに
何でこんなに元気なのよ!」
狐狸の大きな乳房がゆさゆさと上下に揺れていた。
「お、オラ、もっと頑張れるど」
「二郎・・
何でアタシが・・
二三姉ぇになりすましてたか・・
わかる?」
狐狸が途切れ途切れに唸り声を上げた。
「お、オラ・・何もわからないど」
「んんっっ。
はぁはぁ・・アンタに話しても仕方がないわね」
その時、狐狸の腰の動きが早くなった。
「こ、狐狸姉ちゃん。
そ、そんなに動くと・・
お、オラまた出ちまうど」
「アンタ、あのくそ親父より随分良いわぁ!
アイツはいつも身勝手に腰を振って
挙句、すぐに果てるのよ。
二郎、アンタはアタシがイイって言うまで
果てちゃダメよぉ」
そう叫んで狐狸は二郎の乳首を摘まんだ。
「あっ、おおぅぅぅぅぅぅぅ!
だ、駄目だどおぅぅぅぅ」
二郎の口から恍惚の声が漏れた。
「はぁぁぁ、まだ駄目よぉ!」
狐狸の腰使いがより激しさを増した。
狐狸が嬌声を上げながら体を仰け反らせて
敷布団の下に手を入れた。
「ああああぁっぁぁぁぁぁぁ」
突如、狐狸が絶頂を迎えて咆哮した。
「む、無理だどおおお」
その直後に二郎の雄叫びが
狐狸の咆哮を掻き消した。
次の瞬間、
狐狸が振り上げた手には
朱く光る刀身が握られていた。
「いくわよぉぉぉ」
狐狸の絶叫と共にその太刀が振り下ろされた。
二郎の喉に一筋の切れ目が走り、
直後、真っ赤な血が天井へ噴き出した。
同時に二郎の体がビクビクと痙攣して、
その瞬間、狐狸は二度目の絶頂を迎えた。
ピクピクと小刻みに震える二郎の体の上で
全身に鮮血を浴びた狐狸が
その余韻に身を委ねていた。
静まり返った部屋に笛の音が響いていた。
「すっごく良かったわよ・・二郎」
狐狸が気怠そうにゆっくりと立ち上がると、
その股の間から白い液体が糸を引いて
二郎の体に落ちた。
「アンタの体とこれでお別れなのは
少し残念だけど、
仕方がないわね。
アタシ、馬鹿と大酒飲みは嫌いなのよ、
あははは」
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