第78話 sousuke解禁


 PPの肉体を作りに行くということで、ロココと真菜は精神と肉の部屋に向かった。


 PPと冥淵獣のことは、しばらくふたりに任せることにして、夢斗は牧場エリアを一回りし、構造を把握する。


(牧場の端は〈キラキラ肉の壁〉で行き止まりだ。だが、このエリアには小川があって排水もある。排水の先はわからないが、自然が再現されているってことは、雨も降るのかな)


 牧場エリアの端に行くと貯水タンクのような施設をみつけた。【天候装置】と書かれている。

 雨のマークのボタンがあったので押して見ると、ぽつぽつと雨が振り始めた。


「恵みだ……。ってそうじゃない!」


 こんなに簡単にも雨が降っていいのか?

【天候装置】には雪マークや雷マークまである。


「この牧場エリアがコロニーのようなものならば、精神と肉の部屋とはいったい……」


 疑問に思いながらも、牧場エリアの機能には満足できた。

 ここなら冥淵獣は生きていけるし、農地を作って自給自足などもできるだろう。


「実は宇宙コロニーでした、なんてな」


 夢斗はたわい無い想像をしてみる。


「だけど……。ばあちゃんがくれた炉心が〈精神と肉の部屋〉と〈ロココ〉になって、様々な機能が拡張されている。ばあちゃんやじいちゃんの過去に秘密があるのかもしれない」


 牧場を歩き部屋に戻ると、黒い服の女の子が抱きついてきた。

 ゴスロリファッションになったPPだった。


「完成したよ。えへへ……」


 歌姫yoppiの姿だが、泣きぼくろがあるので別人にみえる。

 

「ゴスロリが似合いそうだから、服を着せてみたんだ」


 真菜がPPの方を掴む。真菜もまた、肩フリルのワンピースのコーデで病みかわファッションになっていた。


 ロココも後ろからおずおずと出てくる。


「私も……。ふりるすかーと、というものを着せられました。PPさんの肉体を作るついでに皆でコーデしようって真菜さんが……」


「おしゃれでしょ。さぁ夢斗くん、感想をどうぞ?」

「か、可愛いよ……」

「だーめ。2点」

「じゃあ、そうだな。すげえ可愛い!」

「しょうがないなあ。1000点だよ」


 真菜の基準はわからないが、1000点ゲットした。

 ファッションのことはさておき、夢斗はフリルスカートのロココに尋ねる。


「なぁロココ。精神と肉の部屋ってさ。ただの部屋じゃないんだろう? ってか牧場レベルまで広がってるし。さらにエリアもあるみたいだし」


「ああ。精神と肉の部屋は元々〈遠征団〉が使っていた〈拠点〉で……」


 ロココは手で口を抑えた。


「今のは聞かなかったことに」

「詳しく」


「失言でした。夢斗さんに知る権限は付与されていません」

「へぇ。権限ね。ロココは〈精神と肉の部屋の管理者〉って言ってたけど。まだまだこの〈拠点〉には力が眠っているんだろうな」


「忘れてください」

「条件をクリアすれば、権限も解放されるんだろ?」


 ロココに詰め寄ると、こくりと頷いた。


「解放条件は〈体育館〉にあります」


 体育館は以前解放したことがあるアトラクション施設だ。


「アトラクションsousukeか。なるほどわかってきたぞ。〈精神と肉の部屋〉の各設備には〈解放条件〉があるってことだな」


 牧場エリアは、おそらく迷宮魔獣の捕獲が解放条件だったのだろう。


「……夢斗さんはやはり察しがいいですね」

「なら次にやるのは、sousukeへのチャレンジだな。案内してくれるか?」


 ロココは「ふひっ」と笑った。


「おかしいか?」

「は、果たして夢斗さんに、クリアできますかな?!」


 にやぁと笑ってロココはドヤ顔になった。ロココは精神と肉の部屋の管理人だから、sousukeもまた彼女の管轄だ。


「……管理者だから、イキってみたのか」

「はい。アトラクションは私からの挑戦状です。ロココの挑戦状です」


 ロココから挑戦状が突きつけられた。


「受けて立とう」


 精神と肉の部屋にはまだまだ秘密がある。

 拠点の真価を知るためにも、未攻略の場所を踏破しておく必要はあるだろう。

 管理者としてのロココの挑戦を、夢斗は受けたのだった。



 夢斗達四人は〈精神と肉の部屋〉の東、〈体育館エリア〉にいた。


「おっきいねえ。天井、高い」


 真菜は呑気に上を見上げている。


「アトラクション施設らしい」

「おもしろそうだねぇ」


 PPはさっそく「うおおおおお!」と走り出していた。無害そうなので放っておいて大丈夫だろう。


「この辺にスイッチがあったんだよな」


 なんの変哲もない体育館だが、この部屋には秘密がある。

 夢斗は肉の壁にスイッチを発見。


「あったあった。これを、押す!」


 体育館隅のスイッチを発見。

 警報器のようなスイッチだった。

 ボタンを押すってのは、なんで気持ちいいんだろう。


【sousuke、起動します】


 体育館の音声と共に、ごごごごと体育館中央から、アトラクション・エリアがせり上がってくる。


 以前ここに来たときはスカージとの戦闘後で激しい疲労があったから断念した。

 その後も時間がなくて手つかずだったが、満を持してアトラクションsousukeにチャレンジすることにした。

 真菜やロココ、PPもいるので、皆で挑戦すればより楽しいだろう。


「せりあがってくる?! すごい!」

「ここからは俺も未知数だ」


 夢斗と真菜はごごごごとせり上がるアスレチックアトラクション施設を見上げる。

 PPもまた体育館の二階から「おっきぃ~」と驚いていた。


 夢斗の後ろでは、ロココがアナウンスを始めた。


「これより迷宮探索者超成長プログラム【sousuke】を起動します。」



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スペース

最強の敵と戦う前に最強になっておきます。

「さらなる成長回に期待」して頂けたら☆1でいいので☆評価、レビューなど宜しくお願いします。https://kakuyomu.jp/works/16817330649818316828#reviews




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