第30話 ケイと埋設物
今日は土地の売買契約の日。
買主は俺。
売主は我が社。
根木さんから重要事項の説明を受けながら……土地のことは調べて理解しているけど、これをしないといけない決まりなので一応、説明を受けているわけです。
俺の隣で、ケイも説明を受けている。
いちいち首を傾げたり、頁をめくる動きにあわせて頭を動かすからかわいぬぅ!
「――ということで山田っち、ここのサインと印鑑を」
「はい」
「契約書の約款、読もうか?」
「もう読んだのでいらないっす」
「あとで文句言うなよ?」
「言わないっす」
「手付金、五〇〇万円よこせ」
……一〇〇万円の束をいつつ、差し出すと慣れた手付きで数え……銀行員か!? てくらいに鮮やかだ。
佐田さんのお金が、右から左へと……。
現金で購入するので、契約と決済を同時でもよかったんだけど、根木さんが一ヶ月あけたほうがいいと言ってくれて、残代金を支払って移転登記をするのは来月末の予定だ。
「いちおう、マンション計画を断念した時に埋設物とか越境物とかのチェックは終わっているけど、年月たっているからもう一度するからさ。安心してよ」
「ありがとうございます。これでケイちゃんの素敵なドッグランができます」
「死体うまっていたらごめんね」
「……わらえないす」
にしても、契約書にはる印紙……この切手ごときがたけぇんだよ!
国税ぇ……ぼったくってんじゃねぇぞと言ってやりたい。
契約を終えて、管理物件の掃除がてらその土地へとケイを連れて出掛けた。
東と南の二方向接道で、道路はどちらも幅員が八メートル!
「ケイちゃん、入っていいよ」
「ワン!」
ニッコニコで進入禁止の柵を乗り越えて敷地へと入ったケイにつづき、管理用出入り口から中に入った俺は、よくこの柵……二メートルという高さの柵を飛び越えたよなと思いながらはしゃぐケイを眺める。
ケイが地面をガジガジと掘っている。
ん?
大きな人形みたいなのを掘り出した……なんかやけにリアルな人のかたちをしてる……。
「あおー! ガオー!」
あ!
人形を燃やした……。
ま、いいか。
いつのまに埋設物が……しばらく放置されていたから、よくない人がものを埋めていったのかな?
でも、さすがケイだよ!
よく見つけてくれたね!
あ!
また大きな人形を掘り出し……なんか、半分が白骨みたいなリアルなやつだ……。
「アオー! ガオー!」
燃やした……。
さすがケイ!
埋設物も片付けちゃうすごいお犬さんだよ!
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