第28話 ケイとファミリー

 お休みなので、ケイとドッグランに来た。


 今日は、佐田さんもついてきた……そして、ソフトクリームをケイに見せびらかして食べている。


 嫌われろ!


 黒く見えてしまえ!


 ケイと大型犬エリアに入ると……それまでワンパクしていた大型犬たちが遠慮してすみっこへと移動する。


「すごーい! 大きな犬ぅ!」

「あの子知ってる! 人助けした子よ!」

「知ってる! ニュースにもなってた!」


 有名犬だよ、ケイは!


 ケイは地面をクンカクンカして、俺を見上げる。


 耳をパタンして、首をかしげて、遊んでもいい? という表情……がかわいぬぅううううううう!


「ケイちゃん、よし!」


 OKを出すと、跳ねるように走り出したケイが、大型犬エリアを所狭しと走り出す!


 つられて、他のワンコ達も走り出す!


 ワンワン大騒動!


 可愛さの暴走!


 ハスキー、レトリバー、ラブラドール、バーナードたちが子犬かと思うかのような存在感だよ、ケイは!


 ケイは!


 大きくて可愛くて賢い犬だよ、ケイは!


「おお、番犬が走っておる」

「佐田さん、ソフトクリーム何個め?」

「五個目じゃ」

「お腹壊すよ……」

「そんなヤワなポンポンではない」


 ケイが俺へと減速しながら駆け寄ってきたから、抱きしめてナデナデするとピョンピョンしてまた走っていったぁ!


 かわいぬぅ!


 ケイ、今年中にはお家、建てるからね!


 今、どこのメーカーで施工するか会社の設計に相談してるんす。


 平面図はできてる。


 地下は高いということで、一階は玄関から廊下、そして正面に三〇帖のキッチンでアイランドだ。そのままダイニングも二〇帖で、リビングは三〇帖の予定だ。庭にすぐに出られる。ウッドデッキではケイの毛をとくこともできる!


 お庭は雨がふってもいいように排水をちゃんとする。暑い日でも楽しめるように、スプリンクラー設置。


 廊下からキッチンに行く途中に、洗面所、トイレ、お風呂に通じるドアがある。そして一〇帖のゲストルームをふたつ。


 実家の両親が遊びに来た時や、博多の弟家族が遊びに来てもうちに泊まってもらうように、だ。


 彼らも会いたいだろうから……ケイに。


 二階は俺とケイの寝室が二〇帖、佐田さんの儀式? に使う部屋が四〇帖ある……トイレとお風呂もある。あとはウォークインクローゼットが三〇帖あるので、なんでも入る。


 三階はワンフロアで六〇帖ある。何に使うか決めてないけど、佐田さんがいるというので、出資者だし言う事をきいた。


 二階と三階にはバルコニーがあり、外階段で上り下りできる。


 大きくて広い家だから、のびのびできるぞ! ケイが!


 ドッグランではしゃぐケイを見ていると、呪われた土地でも勇気を出して買ってよかったと思うよ!


 人のお金だけど……たぶん、よからぬ出処の……。


 ケイが、他の犬たちとニコニコで追いかけっこしてるのを見て、かなり手加減してるなと微笑む。


 疲れた様子のケイが、お水を飲みに俺のところに戻ってきた。


 二リットルのペットボトルを箱で用意している俺は賢い。


 ケイの次に賢い!


 美味しそうにお水を飲むケイの頭をナデナデしていると、レトリバーの飼い主さんが近寄ってくる。


「あの、うちの子と一緒に写真を撮ってもらえませんか?」


 どうやら、ケイと一緒に写真を撮りたいみたいだ。


 よかろう!


 ケイと撮りたい気持ち、わかりるよ!


「いいですよ!」


 俺がシャッターを押してあげた。


「ありがとうございます。あの、よかったらパパさんとママさんも一緒に」


 飼い主さんが俺を誘う? ママさん?


 隣をみると、否定もせずにケイの首根っこを捕まえて写真に写ろうとする佐田さんがいた……。


「海外の方ですか? スタイルいいですねー! うらやましい! どこから来られたんですか?」

「ヘルだ。とてもすばらしいところだぞ。お前たちも必ず一度は来る」

「へぇー! 行ってみたーい! 日本語、お上手ですねー! パパさん、どぞどぞ、こちらに入って」


 ……。


「おい、山田、早く来い」


 佐田さんに手招きをされる。


 ケイが、佐田さんから助けてという目で、俺を見つめる。


 しかたない。


 佐田さんからケイを離すために、間に立つ。


 ケイ、俺、佐田さんという順で並んだ。


 パシャリ。


 ケイファミリーとしての、初めての記念写真だった。

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