第6話 ケイは何かが見えている?

 ケイには、何か見えていないものが見えているんじゃないかと思うことが多々ある。


 あらぬ方向を眺めて、耳をピコピコ動かしていると思っていると……「ウゥ……ワン」と吠えるのだ。


 今も、そうだ。


「ウゥ……ワン!」

「ケイちゃん、どうしたの?」


 ご飯を食べる手をとめて、隣のケイに声をかけると、部屋の外を睨むようにして動かない。


 頭をナデナデすると、落ち着いたのか、ニコニコ顔で俺を見た。


 かわいぬぅ……。


 ご飯を食べ終わり、片付けているとテレビからその音が聞こえてきた。


『臨時ニュースです! 人質立てこもり事件の犯人が死亡。心臓発作。逃げ出した人質を警察隊が保護……』


 こわいなぁ。


 ん?


 ケイがまた別の方向を眺めている?


「ガルル……ワウ」


 本当に不思議な子だな。


「ウゥ……ワン」

「吠えたらダメ!」

「クゥン……」

「よしよし。いい子にしてるんだよ」

「クゥン」


 ごめんね、という顔のケイを撫でてあげると、ニコニコ顔で見てくれる。


 かわいぬぅ!


 それからお風呂に入ってからベッドにもぐると、ニコニコのケイが枕になってもいいよ! いや、ならせてください! とやって来た♪


 もちろん、大歓迎だよぉ!


 ケイのモフモフに包まれて、スマートフォンをつついているとそのニュースが出てきた。


『テロ組織ニャンカイダのリーダーが心臓発作で死亡したと、米政府が発表』

『指定暴力団乱狼組のトップが心臓発作で死亡したと警視庁が発表』


 心臓発作、多いなぁ……。


「グルル……ワン! ワン! ワン!」

「静かに! ケイちゃん、もう寝るよ」

「くぅん」


 翌朝。


 歯磨きをしながら、スマートフォンをつついていると、そのニュースが目に入る。


『獄中の重犯罪者三名が、同時に心臓発作で死亡したと……』


 こわいニュースばかりだ。


 あ、ケイがご飯を食べ終わるな。


「ケイちゃん、散歩いこうね!」


 声をかけると、ニコニコで甘えてきた。


 かわいぬぅ!


「グルゥ……ワン!」

「こら!」

「くぅん……」


 何を吠えてるんだろう?

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