6.壊れた妹
「三奈……三奈……」
お母さんが泣いている。
私のベッドの横に寄り添って、シクシクと泣いているの。
あれ……? 何だろう、何だか下半身に痛みを感じる……。それに、あちこちが絆創膏と包帯だらけになっているの。いつの間に怪我したのなぁ。きっとどこかで転んだのね。
「三奈……もう大丈夫だからね。あなたの事は、お母さんが守るからね……」
だから、何故泣いているの? お母さん……。
「あの子は……あの子との事は忘れなさい。そして強く生きて……」
何の事を言っているのか分からないよ、お母さん。あの子ってだぁれ? 私はいつだって、お父さんとお母さんに愛されて幸せに生きてきたし、忘れなきゃいけないような事も無いよ。
あの子って、もしかして遊園地で失くしちゃったクマのクマ太郎の事かな?
だって、このお家の子供は私だけなんだから、他の子なんていないじゃない?
ほら、窓の外に飛んでいる鳥さんも、あんなに高らかな声で歌っているよ。
お母さんが泣く事なんて、無いんだよ?
「お母さん、三奈ね、鳥さんとお空を一緒に飛ぶのが夢なの。お空の世界は、きっと自由で楽しいよ」
お母さんはそれでも泣き止まない。
そうか────これはきっと夢なのね。私の夢の中でお母さんは泣いているのね?
なら、もう一度ぐっすりと眠って目を覚ませば、きっとお母さんはいつもの笑顔を見せてくれるわ。
そう、ぐっすり眠るの────ぐっすりと……。
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