3.闇の中の息子
闇は良い。
俺は闇の中に居る事が好きだ。だから部屋の照明は付けない。付いているのはPCのモニターだけだ。
音がしているのも嫌いだ。たまにテレビを付けると、愛だの恋だのとくだらない事を歌った反吐が出る様な甘ったるい音楽が溢れかえっている。
愛だと?
愛が何をしてくれると言うんだ。愛で腹は膨れない。
俺は愛なんて知らない。
俺の両親は俺が子供の頃から俺を縛り付けて離さなかった。
やれ、この服を着て行け、宿題はやったのか? ご飯を残さずに食べろ? 学校では何があった? 進学先はこの学校にしておけ、学部はここがいい……。
あいつらは俺の意志なんてお構いなしだ。いつも一方的に意見を押し付けてきて、反論の余地すら与えない。
「全てあなたのためなのよ」
何が俺のためだ。
お前らの虚栄心に付き合うほど俺はバカじゃない。
だから俺は大学卒業と共にこの部屋に籠った。あいつらに絶望を味わわせるためだ。もうこの生活も三年になる。あいつらはどれだけ苦痛を味わっている事か。それを想像するだけで笑いが込み上げてくる。
どうだ、俺はお前達の希望通りの大学に行き、トップで卒業してやったぞ。その成れの果てが今だ。お前達の敷いたレールの行先は地獄だって事だ。分かったか。これがお前達の子育ての結果だ!
妹の
何が「お兄ちゃんなら出来るよ」だ! そう言って俺を追い詰めていたのが分からないのか?
いつだって俺はお前らの期待に応えようとした。だがな、世間は俺を認めなかった。
俺の就職浪人が決定した時、父親が何と言ったかお前らも覚えているだろう?
「お前には期待していたんだがな。失望したよ」
お前らの敷いたレールの結果がこれなんだよ。俺じゃなく、お前らの失敗だろう。俺だけが責められるだなんて、納得が出来ないんだよ。
だから、お前らも責任を……取れ!!
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