ある母親の独白

無雲律人

1.母の後悔

 私は母親として、あの子を育てる事に失敗しました。


 昌也まさやは私と愛する夫の長男で、妹の三奈みなと分け隔てなく、愛情は惜しみなく注いできたつもりです。でも、あの子は道を誤ってしまった。どこでどう間違えたのか、私には分かりません。結果として、あの子は人の心を持たなかったのです。


 私は、私が出来る事で責任を取ろうと思います。あの子をモンスターにしてしまった事。それが私の人生の最大の失敗です。


 あの子は、心根が優しい子なのです。優しすぎるが故に、繊細で壊れやすいガラスの様な精神の持ち主だったのです。


 どこであの子の心が壊れてしまったのか。私達夫婦はそんな事も分からないのです。愚かな親です。


 まさかあの子が三奈にあんな酷い仕打ちをするだなんて。


 私の心ははち切れそうです。苦しくて苦しくて、夜も眠れません。


 あの子は放っておけばきっとさらに罪を犯すでしょう。私には分かります。何故なら私は母親だからです。


 だから、私は────。

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