第49話 名前の由来

「キャロ……なんだって?」


 呪文みたいなのがきた。

 こんなもん、覚えられるか。


「ちゃんと聞くニャ! キャログロバドガル・デンデラ・カリストコロ・フンジバル……」

「だから、なげえって。キャロだけでいいよ。お前の名前は今からキャロな」


 連携のために名前を聞いたのに。

 そんな長かったら、あぶない! キャロなんとかかんとか~って言っている間にモンスターに食い殺されちまうぞ。


「それだけでいいかニャ? フンジバルはいらないかニャ?」

「フンジバらない。フンジバらない。そういうのは夜だけだから」


 こいつツッコンでくるところが独特だな。今の話にしても昨日の晩の話にしても。

 天然なのか、心底エロいのか。


「わかったニャ! 由緒正しい名前だけど、ガマンしてやるニャ!」


 そして、謎の上から目線。

 こいつ自分の立場をわかってんのかな?

 まあいいか。それも個性だ。

 逆らわなければ俺はべつに気にしないしな。


「残りは心の中で呼んどいてやるから。仲間内ではキャロで統一。決定な」

「わかったニャ!」


 素直ではあるんだよな。

 人族とは文化が違うのかもしれん。


「なあ。猫耳族ってみんなそんな名前長いの?」


 そんな長かったらお互い呼び合うとき困らんのかな?


「長いのは族長だけだニャ!」

「え? おまえ族長なの?」


 マジかよ。族長かよ。

 族長が奴隷って。その里はもう終わりだな。


「違うニャ! 族長はオヤジニャ! 族長は前の族長の名前をうしろに付け足すしきたりニャ!」


 なるほど。代替わりすればすれほど名前が長くなっていくと。

 うん? ちょっと待て。

 こいつは族長じゃなくて、オヤジが族長だろ?

 じゃあ名前を引き継ぐまでは、短いまんまじゃないの? 


「どういうことだよ。いずれ族長になるから名前だけ引き継いだのか?」

「違うニャ! オヤジの名前がアルデバル・デンデラ・カリストコロ・フンジバル・ゴーダル・モロテル・トロバン・コステリオで、アタシの名前がキャログロバドガル・デンデラ・カリストコロ・フンジバル・ゴーダル・モロテル・トロバン・コステリオだから、アタシが族長になったらアルデバルの名前を継いでキャログロバドガル・アルデバル・デンデラ・カリストコロ・フンジバル・ゴーダル・モロテル・トロバン・コステリオになるニャ!」


「ベロニカ。そろそろ休憩にすっか」

「そうですね。軽くなにか食べましょう」

「聞いてないニャ!!」




――――――




「あら? なんか増えてる」


 休憩も終わり、坂道をえっちらおっちら歩いているときに気がついた。

 スキルの項目になにかが追加されているのだ。


〇ステータス

 名前 ローゼル・エルミッヒ

 職業 エロ魔法使い

 LV 8

 HP 145/145

 MP 16/16

 ちから 12

 知力  40

 素早さ 13

 スタミナ18/16

 スキル 鼻フック レベル5

     トリプル鼻フック

     スカイフック



『スカイフック』

 なんだこれは!?


 鼻フック レベル5ってのはいい。

 これはレベル4になったのは確認しているからな。


 実はあれから、時間があればいろんなものを吊っていた。

 そこで、他のものは変わらず鼻フックだけがレベル4に変化していたのを見ていたのだ。

 これで使えば使うほど、レベルってやつは増えることが分かった。

 しかし、項目じたいは増えないし、フックの使い勝手も変わらなかった。

 前回新しく項目が増えたのは、たまたまかもしれんと思っていた。


 なるほど。

 レベルの数字が二個増えることによって、新たな力を授かるのかもしれんな。


 さて、問題はどうやって能力を確かめるかだ。

 もうベロニカを吊ることはできないしな。

 じゃあ、キャロか?

 う~ん、それもどうだろう。べつに失態をおかしたわけじゃないし、ウンコ漏らされても困るし。


 前みたく、またゴブリンでもでてこないかなあ。



※猫耳族の名前。

 族長の子供は長くなる。

 ただし、跡目を継がなかった時点で、過去の族長の名前もなくなる。

 長男 あ・A・B 

 次男 い・A・B 

 三男 う・A・B

 三男が族長になると、長男あ、次男い、三男う・A・Bとなる。

 このへんはたぶん二度とでてこないので、テキトー。

 ぶっちゃけどうでもいい。


※鼻フック レベル2。生き物以外も吊れる。

      レベル3。トリプルフック入手(フレンドリーファイヤーあり)。

      レベル4。呪文無効(無詠唱含む)。

      レベル5。スカイフック入手(ジップラインみたいなもん)。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る