第84話 凶悪なオネエ様
下着姿の女性に突然抱きつかれていると、どこか懐かしい匂いに僕の心は落ち着いてくる。
ただ、どうしたら良いのかわからない状況にそっと香里奈に視線を向ける。
「お兄ちゃんの変態」
小さいからバレていないと思っていたが、ひょっとして股間のことを言っているのだろうか。
「いや、これは――」
「男の人ってエッチなことを考えると、すぐに鼻の下が伸びるって本当だったんだね」
兄として必死に隠さないといけないと思ったが、どうやら違うところのことを言っていたらしい。
「ふぅ」
安心して息が出てしまう。だが、目の前の女性は僕の耳元でこっそりと話し始めた。
「成長したね」
それはどこのことを言っているのだろうか。股間事情であれば、大きくない僕の股間は成長していると気づかない程度だ。自分で言って悲しくなるが、所詮それくらいのサイズしかない。
「それよりもあなたお兄ちゃんにいつまで抱きついているのよ!」
「別に関係ないでしょ? ハグなんて挨拶みたいなものよ」
世の中の女性は挨拶でハグをする時代なんだろうか。最近の若者にはついていける気がしない。
香里奈と見ず知らずの女性が二人で言い合いをしていると、奥からアンジェリーナとアナコンダが戻って来た。
「あら、
「アンジェリーナさん!」
女性はアンジェリーナの元へ近づくと、飛びつくように抱きついた。やはり距離感の近さに気にはなるが、元々仲の良い関係なんだろう。
「さっきアナコンダと話していたけど、男性モデルがまだ来てないのよね?」
「そうなんですよ。私だって時間がそんなにあるわけでもないのに……」
「あなたもいつのまにか有名になったものね。今じゃ海外のショーにも出る新星モデルじゃないの」
「それはアンジェリーナさんのおかげですよ」
二人の雰囲気からしてきっと彼女もアンジェリーナに変えてもらった一人なのかもしれない。アンジェリーナの話では、海外でも少しずつ話題になっているモデルらしい。
世間の流行を知らない僕がわかるはずもない。
アンジェリーナは僕の顔を見ると、何か閃いたのかアナコンダと話し込んでいた。彼女も話に混ざり一向に撮影が始まらないため、僕と香里奈は待つしかなかった。
「お兄ちゃんはあの人知っている人なの?」
「いや、僕の知り合いにあんなに綺麗な人いると思う?」
「お兄ちゃん美少女ホイホイだもんね」
確かに僕の周りには香里奈や日向と言った、見た目が良い人が多い気はする。ただ、僕が引き寄せているわけではない。
「そんなゴキブリホイホイみたいな……」
鎌田も背丈はそんなに僕と変わらないし、見た目もかなりのイケメンのため、どちらかといえば人間ホイホイだ。
「よし、決まりね」
話し合いを終えたアンジェリーナは僕達の元へ戻って来た。なぜか、アンジェリーナとアナコンダはにやにやとしている。
「健くん今すぐここで脱ぎなさい」
「うぇ!?」
「あなたの大事なことを妹さんにバラしてもいいのかしら?」
僕の股間を握ったアンジェリーナだからこそ、できる脅しだった。僕は断ることもできずズボンに手をかけて息を呑む。
「ちょ、そっちじゃないわよ!」
「えっ?」
僕はみんなの前でズボンを下げた。
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