第59話 結果発表 ※一部香里奈視点
持久走ではクラス1位になり、短距離走では工藤とは走れなかったが、良い結果になったとは思う。工藤は持久走で負けたのが悔しかったのか、燃えて燃えて燃え尽きていた。
彼は結果も気にせず教室で寝ていた。優樹菜に良いところを見せたくて、相当頑張ったのだろう。
スポーツテストの結果は帰る頃にはまとめられ、掲示板に結果が張り出されていた。
下駄箱にはたくさんの人だかりができていたが、僕達が来るとなぜか人は避けていく。
「僕ってそんなに臭い?」
「お兄ちゃん何言ってるの?」
どうやら臭くて遠ざけているわけではないらしい。僕は掲示板の前に行くと大きく張り出されている結果を見る。
「やっぱり工藤ってすごいんだな」
部活をやっている生徒を抑えて工藤はソフトボール投げと走り幅跳びで1位になっていた。これだけ頑張っていたら燃え尽きるのも仕方ない。
「ねぇ、お兄ちゃん! 私達並んだよ!」
香里奈の指を差している方に目を向けるとそこには持久走で僕と香里奈の名前が載っていた。しかも、まさかのお互い1位で僕は驚いて声も出なかった。
だって、この学校の中で1番持久走が速かったってことだ。
「お兄ちゃんって病気が酷くなる前って結構足が速かったもんね」
よく見ると短距離でも僕の名前は3位に入っていた。速かった記憶はないが、いじめられている香里奈を助けるために必死に走って駆けつけていた記憶はある。
「ははは、駒田兄妹よくやったな!」
突然肩を叩かれて、振り返るとそこには体育教師の原田がいた。その顔はどこか満足そうだ。賭けが良い結果になったのだろう。
「そうそう、忘れていたが駒田兄には来週から体育に参加してもらうことが決まったから体操服を早めに準備しろよ」
どうやら体育の授業に参加することが決まったらしい。すっかりそのことを僕は忘れていた。
「じゃあ、気をつけて帰れよ!」
そう言って原田は職員室に戻って行った。その後ろ姿はスキップしているように見えた。
僕達も帰ろうかと靴に履き替えていると、香里奈の友達が慌てた表情で香里奈を呼びにきた。僕と一緒にいるのが気まずいのか少し俯いている。
「先に帰るから友達と遊んできなさい」
「いや、お兄さんそれは――」
「香里奈のことこれからもよろしくお願いします」
僕は彼女に頭を下げて学校を後にした。
♢
「あー、香里奈のお兄ちゃん良い人過ぎる」
「ちょ、私とお兄ちゃんの大事な時間を返しなさいよ」
私は友達の脇に手を入れてお腹をくすぐる。二人だけの帰りの時間を邪魔した罰だ。
「ぬはは! かーりぃなぁーそれどころじゃないの!」
彼女はスマホの画面を私に見せると、そこには知っている顔が映っていた。
「お兄ちゃん?」
「やっぱりこれ香里奈のお兄ちゃんなの?」
中学生時代から最近までの兄の写真が動画で編集されていたのだ。タイトルには『実は整形していた。KARINAのキモブス兄貴』と書かれていた。
コメントもたくさん集まっており、一瞬にして注目を浴びていた。
中には誹謗中傷するコメントも多く存在している。
私がスマホを取り出すと、画面は真っ暗になっていた。電池が無かったため、私に対してのメッセージやコメントが通知されずに気づかなかったのだろう。
「
私は友達に別れを告げて急いで兄を追いかけた。
「植村先輩これでいいですか?」
「ああ、これからどうなるか楽しみだな」
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