第36話 現実世界の魔物
僕は少し早足で教室に向かう。新しいクラスでまた新たに学校生活を送るつもりだ。
教室の扉は開いており、少しドキドキとしながらも中に入る。
今まで話し声が聞こえていたのに、教室に入った瞬間静かになる。どこか胸の奥がざわざわしている。
そしてみんな僕の方を見ていた。自意識過剰かと思っていたが、本当にこっちを見ている。
「ねぇ、あの人ってKARINAのお兄ちゃんなんだよね?」
「そうそう。あんな人今までいなかったからきっと編入学してきたんだよ」
また僕に対して悪口を言っているのだろうか。こそこそと話している声は内容まで聞き取れないが、それでも香里奈の名前だけは聞こえてきた。
何もしてこないのであれば特に気にすることはないだろう。
ゆっくりと歩き出し黒板に貼られた座席表を確認しにいく。
五十音順に書かれた名前から僕の席を探しだす。"
座席表は左前から右後ろに向かって順番ずつ名前が書かれている。
「駒田は……またここか」
五十音順だとちょうど中央の一つ横になることが多い。いわゆる勝手に目立ってしまう席になってしまう。
席を確認して机に向かう。目の前にちゃんと置かれた机と椅子。ここでは僕の座席は用意されているようだ。
荷物を置いて椅子に座っていると、他の生徒達は再び黒板を確認しに行った。
久しぶりの学校に少し緊張している僕は朝礼までは顔を伏せておくことにした。
「あそこの席だと……駒田くん?」
「駒田ってあの駒田?」
名前を呼ばれた気がして顔を上げると、黒板の前にいる人達は再び僕の顔を見ていた。その目はどこか怪しんでいるような気がした。
そんなに身長と体重が変化しただけで、誰かもわからなくなるものなんだろうか。この間は髪の毛を切って顔を少し出していたし、体育教師の原田や日向達も僕に気づいていた。
「みんなおっはよー!」
「新学期もよろしく!」
そんな中、一番聞きたくない声が聞こえてきた。
まさかと思い、声のする方に目を向けると、一番会いたくない人達が教室に入ってきた。自分の名前だけしか確認していなかったため、やつらが同じクラスだとは知らなかった。
スクールカースト上位にとってはクラス替えなんてなんとも思わないのだろう。むしろ楽しみの一つなのかもしれない。
やつらはみんながいる黒板前に行くと、自分の席を確認する。その間僕は急いで机に顔を伏せた。
「ほぉ、またあいつと同じか」
「くくく、駒田よろしくなー」
わざと大きな声で僕に声をかける。そんな僕は必死に寝たふりだ。だが、それがいけなかった。
「おいおい、友達が挨拶してるのに無視かよ」
「俺ら悲しくて泣いちゃうな」
「ははは!」
大きな声で笑いながら、少しずつあいつらは近づいてくる。必死に"来るな"と心の中で叫ぶが、それも虚しく足音は僕の前で止まった。
「おい、駒田無視か」
ゴリラのような男、
目が合ってもみんな目を逸らしている。結局ここでも扱いは変わらないのだろう。
「お前誰だ?」
声をかけられた僕はやつらと目を合わす。
「いや、こっちのセリフだよ」
現実世界なのに目の前にはゴブリンが2体いた。
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