碧《あお》の双子

プロローグ①

デザン大陸中央部に位置するウィザーリア王国。

王都ルティウスの北側に広がる大きい森の中に「風の村」と「星の村」と言う2つの小さな村があった。

長年敵対していた2つの村だったが、ある風の村の娘と星の村の青年が数奇な運命で出会い、恋に落ちてしまった。

敵同士なだけではなく、2人はそれぞれの村の長の家系の人間であった。


双方の村人がもちろん黙っているはずもない。

中でもそれぞれの村の長の怒りはすさまじいものであった。

村人たちからの反発を受け、愛し合う2人は無情にも引き裂かれてしまう。


村に連れて帰られた風の娘は、怒り狂う長の手より幽閉されてしまった。

娘は自分の身分を呪い、出される食事も摂らずに恋慕う星の青年の事を考えながら日々を過ごしていた。


ある日娘はついに気を病んでしまい、見張りの隙をついて幽閉されていた部屋を飛び出した。

見張りの村人や長がすぐにその事に気がつき、娘を追いかけた。しかし娘は、森の奥にある峠から自分を探しに来た長たちの目の前で身を投げてしまったのだ。

谷底深くに落ちたのであろう娘の亡骸は、とうとう見つかる事はなかった。


風の娘と同様、村で幽閉されていた星の村の青年の元にもすぐに娘の最期についての報せが入った。

星の青年は悲しみに打ちひしがれ、報せを聞いたその日の夜に行方を眩ませてしまった。

星の村の人々が森中をくまなく探した結果、風の娘が身を投げた峠の近くで青年のものらしき荷物を見つけた。

星の青年は、愛する娘の後を追い峠から身を投げたのだ。


こうして2人の恋物語は、双方の死と言う悲しい結末によって終焉を迎えた。

この時は双方の村人全員がそう思っていた。

しかし、この物語はまだ終わってはいなかったのである。

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