第三十一話
【第三十一話】
サイド:グレープ
絶体絶命のピンチに駆けつけてくれたヒーロー(またはヒロイン)、ニヒルちゃん。
かっこよすぎる!
ぜひ、これを機にもっとお近づきに…。
「ニヒルか。あのときの借りを返すときが来たようだな」
俺がニヒルちゃんとの将来を考えているうちに、『魔王』が憎々しげに言う。
口ぶりからして知り合いのようだけど、『魔王』はニヒルちゃんとなにかあったのか?
二人とも元βテスターだし、戦ったことがあるんだろうか。
「なら、もっと借りを上げる、よ!」
対するニヒルちゃんは、言い切ると同時にナイフを投げる。
「それくらい読める」
俺のぼやけた視界が一瞬ぶれて、また元に戻る。
どうやら、『魔王』が回避行動をとったようだ。
「相変わらずの目と、運動神経だね」
「お前も、急所を的確に狙ういい腕前だ。衰えていない」
互いを褒め合う二人。
言い方はとげとげしいけど。
「その余裕も、いつまでもつかな!」
両腕を順番に振り、今度はタイミングをずらして二本のナイフを投げるニヒルちゃん。
「何度やっても同じだ」
『魔王』は最小限の動きでかわす。
ナイフを投げ続けるニヒルちゃん。それをよけ続ける『魔王』。
実力が拮抗している。
いや、俺という荷物を持ってなお拮抗させている、こいつの方が強いのか?
「……」
『魔王』は俺を抱え続けている限り、あの本を開くことができない。ニヒルちゃんに近づくこともできていない。
それじゃあ、彼はどうするか。
「邪魔だ」
無造作に俺を投げ捨てた。ニヒルちゃんに向かって。
やっぱりな。
明らかに俺が邪魔そうだったし、こいつならそうすると思ったわ。
「っ!」
「ニヒルちゃん、俺に構うな!」
俺に目がいってしまい、攻撃の手を止めるニヒルちゃん。
「やはり甘いな!」
それを見て、一息に距離を詰める『魔王』。
空中をクルクルと回転しながら、二人の様子を見つめる俺。
腕も足も、全長の二割くらいしか回復していない。
こんなときに、ニヒルちゃんになにもしてやれないなんて!
「ちょっと遠くで見ててね」
俺の心配をよそに、ニヒルちゃんは冷静だった。
腕を素早く振り、彼か彼女の目前まで迫った俺の体を弾き飛ばす。
「うおっ!」
再び視界が激しく揺れる。
俺は無様にも、二人から少し離れたところまで転がっていく。
「トーマとつるんでいるくらいだ。あいつとも面識があるのだな」
俺のぞんざいな扱いを見て、『魔王』が言う。
「グレープも、大切なお友達だよ」
ニヒルちゃんは後ろにステップを踏みつつ、ありがたい言葉をくれる。
お友達…、にひひ。
まさかニヒルちゃんから、『お友達』なんて言葉を聞けるとは思わなかった!
「そうか。なら、お友達と一緒に死ね」
そう吐き捨て、速度を上げてニヒルちゃんに迫る『魔王』。
『魔王』は初期装備の短剣を使った近距離攻撃。ニヒルちゃんは投げナイフを使った中距離攻撃。
『魔王』がニヒルちゃんに接近したことで、お互いがお互いの攻撃範囲内に入った。
今、二人の戦いが始まる。
「はっ」
前に走りつつ、『魔王』が腰から短剣を抜き放つ。
「近寄らせるとでも?」
それを見たニヒルちゃんが、右に移動して距離を取ろうとする。
「無駄だ」
『魔王』が彼(彼女)の後を追う。
「は…ああっ!」
右に飛び込みながら、ナイフを放つニヒルちゃん。
「ふっ」
『魔王』はひらりとターンし、それを避ける。
「…っ!」
地面を転がり、すぐに起き上がって体勢を整えるニヒルちゃん。
「狩られる気分は…、どうだ?」
『魔王』が前に向き直り、ニヒルちゃんに迫る。
「!」
それを見て、ニヒルちゃんが懐に手を入れる。
しかし、『魔王』が最小限の動作で短剣を振りかぶる。
危ない!
「ニヒルちゃん!」
俺は思わず、大声で叫んでしまう。
ナイフを投げさせないため、至近距離まで詰め寄った『魔王』。
ニヒルちゃんは次弾のナイフが手元にない。
今から取り出して投げるには、時間も距離も足りない。
加勢したいが、なにもできない。文字通り手も足も出ない俺は、成り行きを見守ることしかできない。
「大丈夫」
だが、落ち着いた声で、ニヒルちゃんが短く言う。
「とっておきがあるから」
そう言って、懐を探っていた彼(彼女)が投げナイフの代わりに取り出したのは、小さな杖だった。
「魔法かっ!」
呆気にとられた表情を浮かべ、『魔王』が声を上げる。
もしかしてニヒルちゃんは事前に、『スキルジェム・【爆発魔法】』を呑み込んでいたのか!
それで『魔王』と戦う以前から、杖を構えれば【爆発魔法】が使える状態だった。
事実、ナイフを投げるために腕を振るより、魔法を撃つために杖を構える方が、動作としてはコンパクトだ。
「残念だったね」
これを利用してニヒルちゃんは、ナイフを投げる前に先手を取ろうとした『魔王』の、更に先手を取った。
「っ…!」
『魔王』は腕を振り払う最中だ。近距離から放たれる魔法攻撃を回避できない。
刃が迫るも、素早く杖を前にかざすニヒルちゃん。
そして、一言呟いた。
「これからはこういう時代だよ、マディウス」
バアアアアアアッ
二人の間で、音と光が炸裂した。
※※※
「まさか、二度も【爆発魔法】にしてやられるとはな」
『魔王』が腹立たしげに漏らす。
あの後、『魔王』もニヒルちゃんも、少し遠くにいた俺もついでに【爆発魔法】に巻き込まれてデスした。
そして一分後、ユルルンの中央広場でリスポーンして今に至るというわけだ。
「結局、俺たちは何の為に戦ってたんだ」
いきなり吹っかけてきたお前が言うな、『魔王』。
俺が一番の被害者だわ。【自己再生】がなかったら、全く意味分からなかったぞ。
「ま、私は楽しかったからいいけどね」
一方、ニヒルちゃんは寛大だ。
『魔王』も見習え。
「あ!そういえば『魔王』!お前変なこと言ってただろ!」
俺は慌てて指摘する。
河原で殴り合った後みたいな達成感を感じていて、すっかり忘れていた。
「どれだ。自分で言うのもなんだが、変なことの候補が多すぎる」
だから、自分で言うな!
「ダンジョンとゴブリン領の境界を占拠する、ってやつだよ!」
「ああ、それか。言葉の通りだが何か問題があるか?」
「あるわ!大問題だろ!」
一部のプレイヤーでフィールドを占領したら、全員がイベントを楽しめないだろ!
「そう言われても、俺は死んで魔力が全回復したから再びスキルが使えるし、既に『四天王』は各地に向かわせた後だ。諦めろ」
「だったら、使おうとするな!『四天王』?…にも急いでやめるように言え!」
「俺が俺のスキルをどう使おうが勝手だろ。それに、クランメンバーに連絡する手段がない」
……確かに。
「…ニヒルちゃん」
口では勝てそうにないので、俺はニヒルちゃんにすがるような目つきをして助けを求める。
「残念だけどマディウスの言う通りだよ、グレープ。力でフィールドを占拠して、アイテムを独占するのもこのゲームの遊び方だ」
「その名で呼ぶな、ニヒル」
「『魔王』って、マディウスっていうのか」
言い争いの中、素朴な疑問が浮かんだ俺は口に出してしまう。
なんか、普通の名前だな。
「こういう反応をされて面倒だろう」
よく分からないが、『魔王』がたじたじになっている。
これは…、チャンス!
「これからはマディウスと呼ばせてもらうぞ、マディウス!」
「今すぐやめろ。グレープもニヒルも、次その名で呼んだら……」
「私が人の名前をどう呼ぼうが、私の勝手でしょ」
「……確かに」
いや、納得するんかい。
俺は思わず心の中でツッコんだ。
「とにかく、お前たちのせいで鉱山に魔物を送り込めなかったぞ。どうしてくれる」
今度は支離滅裂なことを言い出したマディウス。
ていうか、やっぱり鉱山を支配するために狼を送り込んでたんだな!
「そんなの、決まってるでしょ」
しかし、ニヒルちゃんはなにか考えがあるようだ。
「なんだ。もったいぶらずに早く言え」
俺も気になる。
一体、ニヒルちゃんはなにを言い出すんだ?
「それはね…、私たちでパーティを組んで、鉱山の攻略にいくんだよ」
「えっ!?」
「なにを馬鹿なことを言っている。俺は帰らせてもらうぞ」
ニヒルちゃんの一言に、当然ながら俺とマディウスは驚いた。
パーティを組むって言っても、さっきまで殺し合ってたし。
どう考えても、俺らの相性はよくないんじゃ…。
「そんなこと言うなら、イベントの期間中ずっと粘着するから」
速攻で断ろうとしたマディウスに対して、とんでもないことを言い出したニヒルちゃん。
粘着とは、特定のプレイヤーに張りつき、その人のプレイを邪魔することだ。
一般的にバッドマナーである行為として有名で、ゲームによっては永久バンされかねない。
ずいぶんえげつないこと考えるんだな、ニヒルちゃん。
でも、そんなところもかわいい!
「…分かった。今日だけだぞ」
「明日以降は粘着されたいの?」
「………分かった。イベント期間中でいい。その間はパーティで狩りをすることを誓おう」
「じゃあ、決定だね」
「全く、狩場を占拠するという計画が台無しだ。精々役に立ってもらうぞ、お前ら」
話についていけず、仕方がないのでニヒルちゃんに思いを馳せながら話を聞いていると、最終的にマディウスが折れた。
「それじゃあ、早速行こうか」
「仕方がない。グレープ、そんなところで突っ立ってるな。早く行くぞ」
昨日の敵は今日の友。
まさしく、今の状況のことを言うんだな。
…って。
「今から行くのか!?」
多分何を言っても覆らないけど、叫ばずにはいられなかった。
でも、なんだかんだで面白くなりそうだ。
俺は頭を切り替え、先を行く二人を追ってユルルンの広場を走った。
サイド:ハッパ
爆発にやられて焦点の合わないウチの目が、鮮やかなピンクを捉えた。
爆破させたのに、どうして生きているの!?
それとも、この魔物はさっきのとは別の個体?
そんなに何体も『サクラ個体』がいるの?
頭の中にたくさんの疑問が浮かぶ。
「ギ…ァ……ギャ…」
ぼやけたピンク色が揺らめく。多分腕を振り上げたんだと思う。
ダメ、避けられない。
ウチはトーマやリーパーのようにすばしっこくない。ましてや視覚と聴覚が覚束ないまま、攻撃を避けるなんて無理!
しかも、この目じゃ爆発する地点を指定することができないから、魔法が使えない。でたらめに魔法を撃つという選択肢も取れない。
「ぐっ…!」
このままだと死んじゃう、誰か助けて!
そう思って目の前の光景を眺めていたら…。
「今ですっ!」
鋭い一言と共に、大きなひょうの破片が『ゴブリン・サクラ』のいた位置に落ちた。
「きゃっ!」
すぐ近くで生じたとてつもない衝撃に、ウチは三度吹っ飛ぶ。
流石に体が限界だ。起き上がれそうにない。
「大丈夫か、爆破の」
後ろに転がったウチがうずくまっていると、不意にYさんの声が聞こえた。
【アルファベット】も戦場に来てたんだ!
「…その声は、Yさん?」
「ああそうだ。目は大丈夫か?」
「ありがとう。もう少しかかりそう」
でも、さっきよりかはだいぶ回復してきた。
「耳も戻ってきた」
ぼやけた視界で前を見ると、ひょうひょうとしたYさんらしき人物が映る。
「ハッパさん、ここは危険です!逃げましょう」
さらに、後ろから声が投げられた。
ウチはくるりと振り返ってみる。
「うん、どなた様?」
知らない顔だ。
知らない人にも名前が知られてるなんて、やっぱりウチは有名人だね。
「【アルファベット】の新人で、Lと言います!さあ、はやく!」
「うん!」
【アルファベット】のメンバーだったら、良い人だね。
Lの手を借り、ウチは立ち上がった。
視覚と聴覚を取り戻すまでここにいるのは無理だ。ひょうが危ないし、またゴブリンが来るかもしれない。
だから、ウチらはすぐに人間の領土の方へ退却し始める。
「いきましょう」
Yさんが後ろを見てくれている。ゴブリンを心配する必要はない。
「……」
途中、ちらと背後を見ても、墜落した大きなひょうの破片が埋まっているだけ。『ゴブリン・サクラ』の姿は見えない。
追うのを諦めたか、もしくはひょうにぶつかって死んだか。
そういえば、ひょうが衝突したと同時に、Lが何か叫んでいたような?
スキルのことを聞いても教えてくれないかもしれないけど、気になったから聞いちゃえ。
「Lさあ、さっきなにかやった?」
「僕のスキルです!簡単に言うと、ひょうの軌道を捻じ曲げました!」
走りながら質問すると、律儀に答えてくれるL。
なるほど、Lも魔法系のスキルなんだね。
「そうだったんだ。助けてくれてありがとう!」
「っ!…礼には及びませんよ」
ウチが感謝の気持ちを伝えると、Lは下を向き、恥ずかしそうに謙遜する。
ありがとうって感じたときは、ちゃんと言葉にしないとね。
それから、ウチらは黙って足を動かした。
そして、約十分後。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
殿を務めてくれたYさんがホッとしたように言う。
しばらく走り続けたウチらは、ようやく安全な場所に避難することができた。
これで、ひょうの下敷きになる心配はないね。
「……」
余裕ができたので、考えてしまう。
ウチはなんとか助かった。でも、リーパーが死んじゃった。
「はあ、リーパー……」
「お、爆破の、『四天王』と知り合いなのか?」
「ん?『四天王』ってなに?」
「知らなかったのか?クラン【魔王軍】のメンバーのことだ」
あ、そうなんだ!
でも、【魔王軍】って確か…。
「クランマスターの『魔王』が悪名高いPKプレイヤーで、ある意味有名なクランだ」
「そう…、なんだ」
Yさんが嘘を言うはずない。
だから【魔王軍】の悪評も紛れもない事実で、皆が知っているような情報だと思う。
でも、ウチには信じられない。
「なんか落ち込んでるな。そんなにショックだったか?」
「ちょっと、失礼ですよYさん!」
どうして…。
リーパーどうして…。
「…どうしてウチに言ってくれなかったの!『四天王』ってかっこいいじゃん!すごいじゃん!」
「そうだよな、爆破のもいろいろおかしかったわ」
「どうして、僕の周りには癖の強い人ばかりいるんだろう…?」
※※※
数分待機して、ひょうの破片が全て落ちた後。
人とゴブリンの戦い、人ゴブ戦争が再開した。
結局『ゴブリン・サクラ』はあの二匹、もしくは三匹だけだったようで、それ以降に『サクラ個体』が現れることはなかった。
ただ、なぜゴブリンが私のスキルが使えたのかは、依然として謎のままだ。
『悪魔』を倒してたのはプレイヤーたちだけだし、【爆発魔法】のスキルが込められたスキルジェムをゴブリンたちが持ってるはずがないもんね。
「任せてっ!…今っ!」
「はいよっ!」
「はいっ!」
ウチは元気よくかけ声を出すと同時に、シカに変身したYさんとLがその場を離れる。
バアアアアアッッ!!
一瞬の後、前方のゴブリンを爆発に巻き込む。
「やった!」
ウチの【爆発魔法】がクリーンヒット。ゴブリンを倒せた。
なんとなくの流れで、今、ウチはYさんとLと一緒に戦っている。
「ハイゴブリンを倒した!あとは周りのゴブリンを倒したら終わりだ!」
「「「おうっ!!!」」」
数十分ほど戦っていると、クランマスターのマスターさんがゴブリンの大将を討ち取ったことを報告する。
すると、彼のクランメンバーも私たちも一体となって返事する。
どうやら、ゴブリン、ホブゴブリン、ハイゴブリンって順番で上位種が名付けられてるらしいよ。
大抵の場合、魔物としての格が高いハイゴブリンが部隊のリーダーになる。
だからハイゴブリンを倒せれば、その日の戦いは勝ったも同然なんだって。
でも、個体数の多いゴブリンだ。ハイゴブリンもそこそこの数がいる。
なのでもし戦場でハイゴブリンを倒せても、次の日には別のハイゴブリンがゴブリン領からやってきて、リーダーになっちゃう。
これが、人ゴブ戦争を長引かせている原因らしい。
魔物がどうとか難しいことはよく分からないけど、こんなに上手いマスターさんたちでも戦争を終わらせられないんだし、結構大変なんだね。
そんなことを考えながら戦い続けて、さらに数十分。
そろそろ日が沈み始め、夕方にさしかかろうかというとき。
「今日はこれまで!撤退する!」
マスターさんが大きく声を張り上げる。
今のは、今日の戦いは終わりました、っていう合図だ。
「ふ~」
ウチはそれを聞き、肩を落としてリラックスモードに入る。
スキルを使いすぎてそろそろ過労死しそうだったから、ここで終わってくれるのは正直助かるよ。
プレイヤーたちの活躍により、戦線にいたゴブリンはあらかた狩り尽くされた。
残党はギャアギャアと叫びながら、ゴブリン領の方角へ引き上げ始めている。
「こんなに疲れるもんなんだな、人ゴブ戦争って」
「お疲れ様です、Yさん、ハッパさん」
戦闘を終えたYさんとLがやってくる。
始めてゴブリンと戦ったけど、なんとか勝てたね。
「帰るまでが遠足だよ?」
そう言ってウチはにっこり微笑んで二人を迎え、心地よい疲れを癒すように肩をほぐした。
※※※
「勝ててよかったね!」
「爆破の、大活躍だったな」
「リーパーさんも守れればよかったんですが…」
日が沈みかけ、空と地面がオレンジ色に染まっている。
帰りの馬車の屋根の上で、ウチらは今日の感想を話していた。
「ううん、Lが気にすることじゃないよ!また明日会えばいいからね!」
戦線の近くにテレポートクリスタルがないから、一度デスしちゃうと戻ってくるのに時間がかかる。
だから時間の効率を考えて、戦争でデスした人は無理に復帰しない方がいい、というのがセオリーなんだって。
「そう言ってもらえると助かります」
ウチがきっぱり言うと、頭を搔きながら答えるL。
きみが気にすることじゃないけど、根がマジメなんだろうね、きっと。
「また会えたら、一緒にがんばろっ!」
ウチは一緒に戦ってくれた仲間たちに感謝を述べる。
今日の成果は、『サクラ・ジェムの欠片』がいくつか。
『ゴブリン・サクラ』が思ったより出なかったし、人ゴブ戦争に参加したプレイヤー全員で折半したから、それほど多くない。
でも、楽しかったからいいよね。
「おうっ、もちろんよ!」
「はい!」
今度は、リーパーも一緒にね!
こうして、今日の人ゴブ戦争に終止符が打たれた。
サイド:ビル
「【繁栄の礎】から買った『スキルジェム』を使ってゴブリンの強さを引き上げてみたけど、中々上手くいかないもんだね」
「ああ。だが、明日もあるじゃないか。徐々に『サクラ個体』が増えて、彼らは強くなるだろう」
「ま、それもそうか」
相棒が愚痴るが、俺がたしなめる。
「アレもあるしね。二の矢はもっと強力だよ」
「まさか、あんなことが可能だとはな」
ワクワクしながら言う相棒。俺もアレには驚かされた。
「ねえ、ビル。次はどんな混沌が作れるかな?」
「そうだな、プレイヤー全員を巻き込める大きなものになるだろう。これからはもっと忙しくなるぞ」
ルールやマナーなんて息苦しい。
そんなことを考えるのは現実だけでいい。
ゲームなら、どんなことをしても許される。運営に目をつけられない程度のことならな。
「皆来たね。それじゃあ始めよう」
などと話していたら、時間のようだ。
集まった面々を眺め、相棒が号令をかける。
人を惨禍に陥れて楽しむのが、俺たちの遊び方。
さあ、次の悪巧みの始まりだ。
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