第18話 組織

「図々しいお願いですが、契約という形ではなく、友人という形で一緒にはいられないのでしょうか」


思い切ったこと聞いてしまい、ルイーゼの鼓動が大きくなる。


リンクが少し考えて口を開いた。


「こう考えてみて頂けますか。確かに私たち組織とルイーゼさんには契約が存在します。でも、私たち二人とルイーゼさんに契約がある訳ではないのです。私たちがルイーゼさんの元にいるのは、契約ではなく、ルイーゼさんのことを慕っているからです。嫌いだったら、我々は組織に異動希望を出しますから」


「姉さま、少し勘違いされておられるのでは? 私たちは自分たちの意志で姉さまと一緒にいるのです。何かに強制されている訳ではないです」


二人がそう言ってくれるのは嬉しいし、確かに仕事だから一緒にいるというだけではないようにルイーゼも感じてはいる。だが、ルイーゼの気持ちとしては、組織の仕事としてルイーゼに接しているという点を何とか完全に除去したかった。


「お二人は組織は抜けられないのですか?」


ルイーゼはもう少しだけ突っ込んでみた。


リンクは即答した。


「はい、抜けられません。もし、ルイーゼさんが我々と一緒にいたいと願ってくれるのであれば、我々はいるのが当たり前と思っていただいて、真っ直ぐにご自分の幸せのために突き進んで下さい」


ルイーゼはもう一つ気になっていたことを聞いてみた。


「お二人の人生はそれでいいのでしょうか」


「ルイーゼさん、一言だけ失礼を承知でお聞きいただきたいのですが、私たちの人生は私たちが決めるものです。ルイーゼさんにお気遣い頂くものではないです」


「姉さまは気にしすぎなのです。私たちは姉さまが好きで一緒にいるのに……」


二人には二人の事情があって組織に属しているのだろう。組織を辞めてついて来て欲しいなんて、自分勝手過ぎた。


(ちょっと待って。だったら私が組織に入るってのは出来るのかな?)


「ありがとう、アンリ。ところで、お二人の所属している組織についてですが、あまりお聞きしてはいけないものなのでしょうか」


「はい、出来れば、聞かないで頂きたいです。ルイーゼさんと一緒にいられなくなってしまう危険性があります」


「では、一つだけ。私は組織には入れないのでしょうか?」


これも即答だった。


「入れないです。そうですね、我々の組織は入るものではなく、なるものなのです。と言っても、何のことだかさっぱり分からないと思います。あまり話せないのです。すいません」


リンクらしくないよくわからない回答だった。


「私こそ立ち入ったことを聞いてしまってすいません。お二人を使わしてくれた組織の方々に感謝します。リンクさん、アンリ、これからもよろしくお願いします」


ルイーゼは、主従関係のようなものではなく、全く対等な関係を望んでいるのだが、今のままの関係を維持するしかないようだ。下手に突っ込むと関係がなくなってしまうかもしれない。ルイーゼは今の関係で妥協することにした。


(私はリンクを好きになってはいけないのかな)


この質問をしてしまうと、全てが壊れてしまいそうで、ルイーゼは怖くて最後まで言い出せなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る