第26話「某公爵家主催のパーティ」
わたくしがパーティ会場に入ると、皆の冷たい視線が突き刺さった。
みな遠巻きにこちらを見ながら、センスで顔を隠しヒソヒソと話している。
気分が悪いわ!
わたくしを誰だと思っているの! わたくしはシーラッハ公爵夫人よ!
わたくしの美しさを妬んでる輩がいるのね。嫌だわ、これだから自己管理のできない人たちは。
シワだらけの顔や、ドレス越しにも分かるたるんだお腹やお尻、そんな醜いものを人前にさらさないでほしいわ!
わたくしの美しさに嫉妬するような、雑魚を相手にしても仕方ないわ!
若く見目麗しい高位貴族の殿方を見つけて、さくさく落とさなくては!
まずはシャンパンを持って近づき、楽しくおしゃべりをして、優雅にダンスを踊って、その後は個室に……いえ、人目があるからホテルか相手の自宅にお邪魔するのがいいわね。
私は若い男性が集まっている場所に向かった。
しかし高位貴族の独身の令息たちは、わたくしに気づくと眉間にしわを寄せ逃げるように去っていく。
わたくしに群がってくるのは、
しかもこの男たちとても態度が悪いわ。
「これはこれはシーラッハ公爵夫人。
相変わらず派手なドレスを身に着けておられますね。
少しはご自分のお年を考えたらいかがですか?」
「シーラッハ公爵に離婚を突きつけられてるのに、こんな所で遊んでていいんですか?」
「おばさんをいじめるなよ。
シーラッハ公爵夫人は田舎に引っ越すそうだ。
その前に最後のパーティを楽しみに来たんだろ?」
「な〜〜だ俺はてっきり、シーラッハ公爵に相手にされなくなったから、手軽に遊べる男でも探しにきたのかと思いましたよ。
おばさんが露出度の高い服を着て色目使ってくるなっての」
「おいおい、シーラッハ公爵夫人を虐めるなよ。
彼女はシーラッハ公爵に離婚をせまられ、実家のアブト伯爵家にも受け入れを拒否され、平民になって田舎に幽閉される可哀想な人なんだからさ。
でもまぁ自業自得、身から出た錆か、アハハハハハ!」
「あー分かった!
もしかしてシーラッハ公爵に離婚を迫られたから、公爵と離婚する前にいい男を捕まえて、その人に養って貰おうとか、そういう図々しい三段だったりします?
叔母に聞きましたよ、若い頃は派手に男遊びしてたって。
でももう無理ですよ。
若い子に比べたら肌にハリはないし、胸はたるんでるし、化粧でごまかせないほど染みソバカスがあるし、ご自分の年を考えてください、おばさん」
か、
公爵夫人であるわたくしに、なんて口を利くの! 許せないわ!
「あなた達、誰に向かって口を聞いているの!
私はシーラッハ公爵夫人よ!
あなた達みたいな下位貴族のゴミが声をかけていい相手じゃないの!
表に出なさい!
わたくし自ら、あなた方をしつけてさしあげるわ!」
わたくしが叱りつけると、彼らは額に青筋を浮かべわたくしを睨んできた。
下位貴族のくせに生意気な!
「いいよ、おばさん。外に出ようか?
俺達全員でおばさんの相手にしてあげるよ」
「おい、それはまずくないか?
仮にもまだ公爵夫人だぜ」
「いいよいいよ。
この女の悪事が社交界全体に知れ渡って、良識のある貴族に爪弾きにされてんだ。
嘘つきで身勝手なババアを助けに来る奴なんかいねぇよ。
何したって許されるって」
「聞いた話だとシーラッハ公爵も娼館に売るつもりだったらしいぜ。
ご子息への教育的配慮で思いとどまったみたいだけどな」
「マジか?!
それが本当ならこのおばさんに思い知らせてやりチャンスだな!
いつも俺たちのこと見下してて腹が立ってたんだよね!」
わたくしがハリマンに離婚を迫られたことを皆は知っている?
だからわたくしがここに来たとき、会場の空気がおかしかったのね。
ハリマンがわたくしを娼館に売ろうとしていたことまで知られていたなんて……!
人生最大の屈辱だわ!
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