第55話 おっぱいハンター人面猫とねこま御前
魔除けの色である赤い水干でおめかしした
「陰陽寮ったら、あんな可愛い子を隠してらしたなんて」
「
「ちょっと人見知り気味みたいだから、秘蔵っ子にしてたのではなくて?」
「秘蔵っ子という言葉の響きが既にいとをかしですわ」
お勧め通りいつもより少し丁寧に掃除をして花などを飾ると室内が明るい雰囲気になり、皆の表情も華やぐ。
しかし小福はご機嫌斜めだ。
「猫の嗅覚だとこの香りは辛いのかなあ……」
「香で満たされたところに住んでるのに、今更何よ。嗅ぎ慣れない匂いで落ち着かないだけでしょ」
はたきを片手にした織子は誰よりも熱心に掃除に励んでいた。
(良かった、元気を取り戻されたみたい)
梅雨時のじめっとした雰囲気は、活発な織子にとっては人一倍のストレスだったのだろうか。
飛香舎の主は
しかし浮上してしまえばいつも通りハキハキ動き、皆を主導していた。
穢れの概念が浸透している時代だから、掃除は住まいを清潔に保つのと同時に神事の意味合いを持ち合わせていた。
だからこそ宮中の清掃を司る
(掃除って重要だよね。こういうのは現代も見直したらいいと思う)
「にゃおおおおん……」
「何よ、邪魔するとあんたも洗濯するわよ」
着物の裾に乗っかって丸くなり、移動を妨害する猫にはたきを向けると当然だが先っぽにじゃれついて遊び始める。
(こっちは相変わらず変な鳴き方だけど、時期が過ぎれば戻るかな)
花の時期は終わってしまったが、藤壺は久々に華やぎを取り戻したのだった。
* * *
そしてまた、夜が来た。
蒸すことは蒸すが涼しく思えるのは、雨だからと閉めてばかりだった戸などを開けて換気をしたからだろうか。
(久し振りに、ぐっすり眠れそう……)
横になって心地よい睡魔に身を任せたところで、頭の上に気配を感じた。
(小福ちゃんかな……?)
「忠子様あ……」
甘えた声音はねこま御前のものだ。
何度か一緒に寝ようと寝所へやって来たことがあるから、別に訪問自体は不思議ではない。
しかし返事をしようとして異変に気がついた。
(う、動けない……っ?! これが噂に聞く金縛り?)
前世も今生も忠子は零感で、心霊現象など出くわしたことがない。
眠っていて体が動かず声も出ない、目を開けることもできないと言えば体験談で最もポピュラーな金縛りだ。
目を閉じているのになぜかねこま御前が小福を抱っこしていることさえ分かる。これは完全に怪奇現象だ。
(なんで?! 今日怪異予防対策したのになんで?!)
あれか、却って霊を刺激してしまったというあれなのか。
動揺して内心冷や汗を垂らす忠子の側に、ねこま御前が身を横たえて脚を絡める。すらりとしたねこま御前のものらしく細くて羨ましい。
「うふふ……おっぱい……」
妖しいと言うには無邪気すぎる呟きとともに、袷へと両手が差し込まれた。
(ひいい?!)
布地から取り出される瞬間、たわわに実ったFカップがぷるんっと揺れる。
巨乳の谷間に顔を埋めたねこま御前は幸せそうに喘ぐと、女の手には余るボリュームの乳房を両頬を挟むように寄せたり離したりし始めた。
時々自分の顔を上下させてみたり、掴んだ胸を左右互い違いに動かしたりとやりたい放題だ。
「ああんっ……おっぱい……最高でおじゃる……」
(おじゃる?!)
初めの恍惚としたため息はねこま御前のものだったが、段々としわがれて男の声になった。同時にポタリと顔に雫が落ちる。その拍子に目が開いた。
「?!」
天井を背景に視界一杯になったハチワレ猫の顔。
至近距離から小福に顔を覗き込まれていた。
いやしかし、猫だが猫ではない。ニチャア……といやらしく笑う中年オヤジの顔だった。
これは、恐い。
(ぎゃああああ、人面猫ぉおおおおー!)
声の限りに叫んだつもりなのに、音が出ていない。喉の奥を掠れた空気がすり抜けていくだけだ。
胸元では相変わらずねこま御前がおっぱいぱふぱふに夢中になっている。くすぐったいし何ならちょっと気持ち良くなってきたがそれどころではない。
(何これ? 何コレ! ねこま御前は操られてるのそれとも素なの?! ドーマンセーマン南無阿弥陀仏、すぐに来てくれ陰陽師ー!!)
わけの分からないまま夜は更け、そして明けていったのであった。
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年明けからお色気路線ば走っとーばってん、読んでくれたとですね! ありがとうございました!
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