第5話

「それじゃ、材料もそろったし冒険者ギルドに行くか? 大翔(ひろと)」

「うん、健(たける)」

 俺たちは冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドに入り中を見ると、まだ朝だというのに今日もいろいろな人たちが集まっている。


「あら坊やたち、また来たのね!」

 ちょっと嬉しそうに笑いながら、冒険者ギルドのレンは僕たちにあいさつした。

「おはよう、坊やたち」

「おはようございます」

大翔は素直に返事をした。

「おはよう」

 俺も一応挨拶をする。


「今日は、空き家を買いたいと思って来ました。料理テスト用の食材も用意しています」

 そういうと大翔は抱えていた袋をレンに見せた。

「オーケー。じゃあ、調理室にご案内するわね」

「おじゃまします」

 健と大翔は、レンの後について行った。


カウンターから中に入ると奥に続くドアがあった。

「ここがうちの料理室。綺麗でしょ?」

 そこには窯と薪窯が二つ並んでいた。

「薪か。火加減むつかしいんだよね……大丈夫かな?」

 大翔は不安そうにかまどをのぞき込んでいる。

「大丈夫だろ? キャンプの時、上手に火加減調節してたじゃないか」

 俺がそういうと、大翔に笑顔が戻った。

「そうだね」


「君たち、ここで料理を作れそう?」

「はい」

 大翔は大きな台所の調理台に、買ってきた品物を並べた。

「えっと、チャーハンの材料を刻んで、プリンは蒸し時間がながいから先に卵液をつくらないといけないかな……? ポークソテーは焼き立てを出したいし……」


 大翔はぶつぶつとつぶやきながら、材料を並び替えた。

「よし! 健、チャーハン用に野菜を刻んでくれる?」

「わかった」

 俺はボールを用意して、玉ねぎやニンジンや菜っ葉を刻んでは、そこに入れた。

 大翔は卵を割ってボールに入れる。そして、箸を四本使って卵を混ぜた。


「ほんとうは泡だて器があるとよかったんだけど……」

 大翔はそう言いながら混ぜ終わった卵液に牛乳と蜂蜜を加えた。

 大翔は大きな鍋に水を張り、てきとうな器を裏返しにして簡易蒸し器にすると、奥の薪窯にそっと置いた。薪窯の火は弱めに調整してある。

「じゃあ、肉の下味をつけるよ」

「わかった」


 大翔はローズマリーのような草と、コショウと塩をイノシシ肉にまぶした。

「チャーハンは、鍋が重いからちょっと大変そうだね」

 大翔は鍋に、肉屋でもらってきた動物の脂身を入れて、油が出るまでよく炒めた。

「大翔、代わろうか?」

「おねがい、健」

 俺が鍋を振っていると、大翔が脂身を取り出して刻んだ野菜を入れた。

 野菜にかるく火が入ったとき、大翔は白飯を持っていた。


「ごはんは、今日は買って来ちゃった」

「よく気が付いたな、大翔」

「うん。 あ、焦がさないように気を付けて」

「わかった」

 ご飯を入れて、パラパラになるように炒める。

 チャーハンが無事完成した。


冷めないように、大皿に盛って蓋をしておいた。

「ありがとう。今度はイノシシ肉を焼くね」

 大翔は調味料を混ぜて、ポークソテーのたれを作ってから、フライパンにまた肉屋でもらった脂身を炒め油をなじませた。

「ずいぶん時間がかかっているようだが、大丈夫か?」

 レンさんの声が扉越しに聞こえる。

「大丈夫です」

 大翔は肉をフライパンに乗せながら答えた。


 肉の焼けるいい匂いがしてきた。

 大翔は肉の焼き加減を見て、火からおろし、ふきんの上にフライパンを置いた。

「あとは出来上がりを待つだけだね。プリンも火からおろそう」

 薪窯から大鍋を二人でおろすと、大翔はプリンの出来上がりを確認するため箸を刺してみた。

「うん、大丈夫みたい」


「まだ出来ないのか? 待ちくたびれたぞ」

 俺は空いた鍋や大鍋を洗い始めた。

 大翔はジャガイモやニンジンをフライパンで焼いて、塩コショウをしたものをポークソテーのわきに添えている。

 最後に大翔がプリンを小さめの皿にだしてから、俺はレンに声をかけた。


「レンさん、料理ができました!!」

「了解、今行く」

 俺たちは料理台の上を片付けると、料理を並べてレンさんが来るのを待った。


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