え!? わたしが戦うの!?
「それに、ほら!
もう、わたしの前に現れないかも!」
肉食ならともかく、
遭遇戦ならともかく、向こうからわざわざやってくる事はないだろうし、きっと、わたしに気づいたら逃げていくだろう。
そしたら、もう、手の打ちようがない。
その辺りを理路整然と話したにもかかわらず、ケリー姉ちゃんは何故かため息を付いた。
「サリー、あなた、また母さんの説明を聞いていなかったでしょう」
「え?
何が?」
ケリー姉ちゃんは呆れた顔で言う。
「母さん、言ってたじゃない。
だから、そういう場所で遭遇したら、草食だからって油断せず警戒しなさいって話だったじゃない」
「え!?
そんな事……言っていた、ような、気もするけど……」
ケリー姉ちゃんは呆れたように目を細めながら「そういう所、いい加減、何とかしなさいよ」と言った。
うっ!?
正直、そんな強いのとは戦わないと思っていたから、聞き流してた!
頭を抱えるわたしに背を向け、ケリー姉ちゃんは言う。
「とにかく、この辺りにはろくな魔獣や魔物がいないんだから、確実にあなたの元にやってくるわ。
絶対に、仕留めるのよ!」
そして、さっさと走り去っていった。
その背を見送りながら、ため息を付く。
いや、え!?
本当にわたしが仕留めなくちゃならないの!?
正直、脇から見ていたにもかかわらず、
もう、ピカッと光ったと思ったら、移動している感じだ。
……ケリー姉ちゃんはあれを躱していたよね?
流石は、ケリー姉ちゃんだ!
ママから、単純な戦闘
って、あぁ~!
しまった!
その躱す方法を教えて貰えば良かった!
というより、教えておいてくれれば良いじゃない!
ケリー姉ちゃんの意地悪!
……まあ、そんな事をこんな草原の真ん中で考えていても、詮無き事か。
一旦、家に帰ろう。
うん、そうしよう。
確か、結界の中にあるものは、魔力とかを探りにくくなるって、ママが言っていた。
そう考えると、わたしがあの中にいれば、
ここら辺だと……。
赤ライオン君、そうか、赤ライオン君は魔力を求める
彼ほどの魔獣なら、保有魔力もかなりのものだろうし。
そういえば、
あとは……。
あれ?
そもそも、なんで
あそこには強い魔力の魔獣とか魔物なんて――。
『なんか〝黄金の角を持った鹿に狙われてる!〟とか、〝頭を囓られる!〟って、震えながら孤児院長先生にずっとくっついて――』
あ?
ああ……。
も、もしかして……。
え!?
いや、でもセンちゃんは中二な感じだけど、普通の女の子で……。
あ、魔力!
そうだ、よく分からないけど、魔力を使って何かやってた事があったはず!
じゃ、じゃあ、まさか、本当の事!?
あああ、しかも、今、
ま、町が危ない!
あわあわしていると、こちらに飛んでくる複数の気配を感じた。
視線を向けると、悪役妖精の
ちょうど良かった!
悪役妖精の
なので、端的に、
「ごめん、わたし、町が心配だから行ってくるから!
あと、多分今日は帰れないってイメルダちゃん達に伝えておいて!」
そう言いつつ、町に向かおうとすると、胸元に近衛兵士妖精の白雪ちゃんがぽすっと収まる。
あ、そりゃ連れて行く方が早いよね!
慌てすぎてた!
呆れた顔の悪役妖精の
荷車も無いし、白狼君達もいないから、白雪ちゃんには気を遣いつつ、全力で走る。
だけど、あの
あぁ~!
ママの話をちゃんと聞いておけば良かったぁぁぁ!
そうすれば、多少は違っていたはずだ!
ひゃぁぁぁ!
これで町が壊滅してましたなんて事になったら、洒落にならない!
林を抜け、その先にある門や町を囲う壁を見て、ホッと胸をなで下ろす。
どうやら、
いつもの若い門番さんが「あれ? サリーちゃんまた来たの?」と暢気そうな笑顔で手を振ってくれる。
わたしは手を振り返しつつ訊ねる。
「ねえ、今、金色の角の鹿は来てない?」
とたん、若い門番さんは苦い顔になる。
「見てないよ。
仮に見たとしても、なんかまた――」
そこまで言うと、声を潜める。
「領主様の命で、その鹿に関わってはいけないって事になったんだ。
前回同様、独り占めをするつもりだよ!
酷いよね!」
なんか、町の人達の中では、領主様は宝物を独り占めにして、今は帝都で贅沢三昧をしている――という事になっているらしい。
そして、さらなる贅沢のために、
まあ、なんにしても好都合だ。
若い門番さんが「サリーちゃんも、諦めた方が良いよ」とか言ってくるのを適当に流しつつ、冒険者組合へと足を向けた。
冒険者組合の中に入ると、何人か人はいたけど、赤鷲の皆はいなかった。
受付の方を見ると、組合長のアーロンさんが受付嬢のハルベラさんと話をしている所で、わたしに気づくと手招きをした。
「サリー、少し話があるんだが良いか?」
「うん!」
アーロンさんが早足で組合長室に向かうのに着いていく。
中に入ったアーロンさんは早々に訊ねてくる。
「サリー、何があった!」
どうやら、わたしが重要な話を持ってきたと気づいて、ここに連れてきてくれたらしい。
わたしは
アーロンさんは硬い表情で頷いた。
「その鹿はお前が話していた奴で、しかも、この町にいる女の子を狙っている、か。
これは、最悪中の最悪って事か……。
だが、魔力を持っている事が原因であれば、狙われるのはその女の子だけではないだろう?」
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