甘い物を食べて貰う!

 ケリー姉ちゃんは、わたしがエルフのテュテュお姉さんに教わっている時も、興味を示さなかったので驚いてしまった。

 そんなわたしに、ケリー姉ちゃんは得意そうに口元を緩ませる。

「あなたがエルフの人に教わっているのを聞いて、なんとなくで覚えたわ。

 声を出すのにちょっと、コツが必要だったけど、慣れたら簡単よ」

 わたし、マンツーマンで教わっていたのに、結構苦労したんだけど……。

 凄すぎる!

 ケリー姉ちゃんが話せると分かったからか、少し緊張を解いたイメルダちゃんが口を挟む。

「人間の言葉を習ったって、それ以外はどうしてたの?」

「ん?

 そりゃ、わたし達の言葉で話していたよ?

 フェンリル語? っていうの?」

 お姉ちゃんに訊ねるも、フェンリル顔を傾げ「さあ? よく分からないわ」との返事が来る。

 いや、普通に話すようになったからよく分からない。

 試しに『おはよう、イメルダちゃん』と、がうがう! 言ってあげると、何やら疲れた顔の姉的妹ちゃんが「サリーさんが時々、狼みたいに吠えていたの、フェンリル語だったのね」と言った。


 まあ、時々出ちゃってたね。


 あと、シルク婦人さんや妖精ちゃん達にケルちゃん、龍のジン君やスライムのルルリンを紹介する。

 シルク婦人さんや妖精ちゃん達は普段通りだけど、ケルちゃんや龍のジン君はケリー姉ちゃんの事が怖いのか、龍のジン君はイメルダちゃん、ケルちゃんはわたしの後ろに隠れてぷるぷる震えている。

 ……ケルちゃんは流石に、もうわたしの背後じゃ隠れきれないと思うなぁ~

 そんなケルちゃんを、シャーロットちゃんが「大丈夫、サリーお姉さまのお姉さまだから大丈夫!」と撫でて上げていた。


 立派可愛い!


 スライムのルルリンだけは特に気にする様子も見せず、ぽよぽよと揺れていた。

 この子、意外と大物かもしれない。

 そんな事を考えていると、ケリー姉ちゃんが鼻先で腰辺りを突っついてきた。

「ねえねえ、サリー。

 久しぶりにサリーが作ったの、食べたいわ!

 甘い物がいいんだけど」

「ああ、じゃあ、ちょっと待ってて!」

 そう言いながら、食料庫に駆けていく。

 中にあるものを物色し、ジャム類を一式、作り置きの寒天やアイスクリーム、餡子などを、白いモクモクで持っていく。

 何やら妖精ちゃん(ニート)が〝それ、わたし達も欲しいのに!〟とか身振り手振りで行ってきたけど、「しっし!」と追っ払い、戻る。

 玄関から外に出ると、何やら、ケリー姉ちゃんの胸元にヴェロニカお母さん達が顔を埋めていた。

 わたしに気づいたシャーロットちゃんがニコニコしながら「サリーお姉さまのお姉さまのここ、柔らかい!」と言ってくる。

 いやまあ、確かにモフモフしていて凄く温か柔らかで、良い箇所ではある。

 ケリー姉ちゃんもニコニコしながら「サリーが好きな場所、教えて上げてたの」とか言っている。


 仲良くなっているみたいで、喜ばしい!


 ヴェロニカお母さんは「極上のシルクみたいに滑らかね」とニコニコしていて、イメルダちゃんは困った顔で「柔らかだけど、ちょっと暑いわ」とか言っている。

「冬とかだと、本当に最高の場所なんだよ!」

と言いつつ、階段を降りると白いモクモクを広げる。

 ふむ。

「取りあえず、寒天を作るけど……。

 もう少し、ここにいるんなら、焼き菓子とか作れるよ?」

 クッキーだけじゃなく、パウンドケーキやプリン、かき氷だって作って上げられるんだけど……。

 そんな気持ちで訊ねるも、ケリー姉ちゃんが苦笑する。

「あなたはまだ、試練の真っ最中でしょう?

 余り居座ると、母さんに怒られるから、ある分で良いわ」


 まあ、そうかぁ~


 ケリー姉ちゃんは、わたしの白いモクモクの中を覗く。

「また、変わったものを作ったみたいね」

「寒天って言うの、冷たくて美味しいよ」

「ふ~ん」

 白いモクモクを大きな器に変えて、その中に寒天とかを入れていく。

 シャーロットちゃんが器の中を覗きながら「美味しそう!」と言っているので「シャーロットちゃんにはまた作って上げるね」と言って上げる。

 愛らしい妹ちゃんは「うん!」と嬉しそうに頷いた。


 可愛い!


 完成すると「はい、どうぞ」と白いモクモクをケリー姉ちゃんの元まで持っていく。

 前世、体育の授業で使用した大量のバスケットボール、それを入れる大型のボール籠ぐらいのサイズだけど……。

 既にママと変わらない大きさのケリー姉ちゃんの前にあると、小鉢ぐらいに見える。

 ケリー姉ちゃんは「どれどれ」と言いつつ、器の中に口を突っ込んだ。

「うぐ!?

 冷たい!

 それに甘くて、美味しい!」

と嬉しそうにパクパク食べていく。

 そして、直ぐに完食をするとペロリと口の周りを舐めた。

 流石の早さだ!

 シャーロットちゃんが「あっという間に食べちゃった!」と目を丸くすると、ケリー姉ちゃんは嬉しそうに目を細めた。

「なんだか、シャーロットを見てると、サリーがもっと小さかった頃を思い出すわ」


 いや、わたしはこんなにも愛らし可愛くなかったと思う!



「ケリー姉さま、またね!」

とシャーロットちゃんが手を振ると、「ええ、またね」とケリー姉ちゃんも右前脚を振った。

 体は大きいけどその姿、なんだか可愛い!

 家の玄関前には、イメルダちゃんやニコニコ顔のヴェロニカお母さん、妖精姫ちゃんやケルちゃん達も勢揃いをしてケリー姉ちゃんを見送っている。

 因みに、わたしはケリー姉ちゃんに乗って、途中まで見送る予定だ。


 久しぶりにケリー姉ちゃんに乗れて嬉しい。


 ケリー姉ちゃんはお土産――蜂蜜の入った壺やドライフルーツが入った籠を赤いモクモクで掴み直す。

 蜂蜜は貰ったばかりのものをあげた。

 先ほど、妖精ちゃん達が〝わたし達の蜂蜜がぁ~!〟とか〝蜂蜜パンはどうなるの!?〟と文句を言ってきたけど、知った事ではない。

 まるで、理不尽な目に遭っているとばかりだけど、いつも通り、彼らには蜂蜜を半分分けて上げてあるのだ。

 つまり、あの分は我が家の分を、イメルダちゃんに許可を得て渡しただけである。

「また、甘味禁止にされたいの?」

と脅すと、蜘蛛の子を散らすように飛んでいった。

 いや、妖精ちゃんの事は今はいいや。


 ケリー姉ちゃんが体の向きを変えると、軽く駆けて結界を抜ける。

 流石はケリー姉ちゃん、砂埃一つ立てない。

 巨体を思わせない静かな走り方だ。

 そんな事を感心していると、ケリー姉ちゃんは何故かピタリと止まった。

 そして、首だけで振り返り、こんな事を言う。

『……ねえ、サリー、今、甘芋がなかった?』

『え?

 甘芋ならあるよ?

 ……欲しいの?』

『欲しいわ!』

 ……そういえば、ママの洞窟に住んでいる時も、ケリー姉ちゃんの赤いモクモクで焼いた甘芋、しょっちゅう食べてたなぁ。

『ちょっと待ってて、持ってくるよ!』

『お願い!』

とケリー姉ちゃんは嬉しそうにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る