大河に行こう!2

 ケルちゃんには干し肉、近衛騎士妖精君達や物作り妖精のおじいちゃんにはドライフルーツを渡し、しばらく休憩して貰う。


 その間、わたしは川の中の魚を狙う。


 黒風こくふう君が”手伝おうか?”というように身振り手振りをしてくれたけど、丁重にお断りをして置いた。

 青空君じゃ無いけど、一人でチャレンジしてみたくなったのだ。

 右足から白いモクモクを出して、川にせりり出す形に階段を作る。

 その時、地面部分に魔力を多く使い、重量を持たせれば倒れる事は無い。

 それを登り、上から川の様子を覗く。

 う~ん、結構深いらしくて魚の様子は分からない。

 白いモクモクを網にして見ようかな?

 なんて思っていると、上流で何かが飛び跳ねた。

 視線を向けると、またしても巨大な口がこちらに向かってきた。


 川の魔物はワンパターン?


 そんな事を考えつつ、白いモクモク盾、プラス、スライム型捕獲で捕まえる。

 ……なんか、細長い魚だった。


 これ……雷魚らいぎょ

 なんか、学校の授業で外来種の問題についてやっていた時に映像で見せて貰った覚えがある。

 日本の川にこんなのが住み着いてるんだって、ドン引きした記憶があるので覚えている。


 まあ、ここは異世界だから、当然、似て非なるものだろうけどね。


 あ、あと、Web小説でも確か、取り扱っている小説があったなぁ。

 その小説では全長百メートルの雷魚だったはず。

 対して、目の前のは至って常識的で全長、五メートルほどだ。

 いや、前世の雷魚がどれくらいかは、実際の所、知らないけどね。


 白いモクモクに掴まった雷魚は、身をくねらせ逃げようとする。


 ええっと……絞めるのってどうするんだっけ?

 イワナは眉間に千枚通し? だっけ? 尖ったので突き刺せば良いってWeb小説に書いてあったけど、雷魚も同じだったっけ?

 あ、雷魚の場合、脊髄を切るんだったかなぁ~

 そこまで興味が持てる話じゃなかったから、記憶が曖昧だ。


 えぇ~っと、その前に、確か何故かデコピンをするとか書いてあったような気がする。

 勿論、全長百メートルのもの相手にするのでは無く、前世であれば~というていで書かれていた事であるけど……。

 何故デコピン? って小首を捻ったので印象に残っているだけで、理由までは覚えていないなぁ~


 まあ、取りあえずはやってみようかな?


 暴れる雷魚君を白いモクモクで締め上げ、顔をこちらに近づける。

 そして、指で軽く弾く。

 パンッ! っという音と共に、顔が吹っ飛んだ。


 ……いや、雷魚君弱すぎじゃない?


 ひょっとして、魔物じゃ無くてただの魚(?)、なのかな?

 え、ええっと……。

 後は、脊髄を切るんだっけ?

 え、ええっと……いる、かな?

 ……一応、やっておこうかな?


 白いモクモク包丁でサクッと切る。

 後は、内臓の除去と、エラも切った方が良いんだっけ?

 なんて考えていると、またしても何かが飛び上がってきた。


 再度、白いモクモク盾からのスライム型捕縛を行う。


 ……また、雷魚君か。


 こうしているだけで、獲物が捕れるとか、楽ちんな狩り場だなぁ。

 雷魚君が美味しかったら、定期的に通うのも良いかもしれない。


 これ以上は不要なので、岸に戻り、雷魚君達の処置を行う。


 コチコチに凍った雷魚君を見て、物作り妖精のおじいちゃんが不満そうに、”そんな物より、粘土だろう!”と身振り手振りで言ってきたけど、食料だって必要だからね!


 雷魚君を脇に置き、取りあえず、掘り出した粘土をギューギューに締め固める。

 右足から出した白いモクモクを腰に巻き、その上で一メートル四方の粘土を包む。

 これでわたしが引っ張れば問題ない。

 車輪は無いけど、まあ、何かに引っかからなければ、そこまで大変では無いだろう。

 そんな事を考えていると、センちゃんが「がうがう!」言いながら、わたしの腰を鼻で突っついてくる。


 え?

 どうしたの?

 え?

 もっといっぱいあっても、大丈夫?

 え?

 ケルちゃんが運んでくれるの?

 まあ、ケルちゃんも体が大きくなったから、これぐらいは軽いかもしれないか。


 粘土を五割ほど増やしてみる。


 え?

 もっともっと?

 全然物足りない?


 結局、元の粘土十倍ぐらいの塊になった。


 いやいや、流石にこれは無茶じゃ無いかな?


 高さ二メートルにもなるそれは、普段引いている荷車ぐらいには成っている。

「ケルちゃん、大丈夫?」

と訊ねても、三つ首揃って勇ましく、”大丈夫!”っていうように「がう!」「がう!」「がう!」と吠えるだけだ。


 ま、まあ、ケルちゃんも相当大きくなっているから、大丈夫かな?


 右足から出し直した白いモクモクでそれを包み、ケルちゃんの体にソリの時同様縛る。

 試しにケルちゃんに乗って、進んで貰ってみる。


 ケルちゃん、軽々と進んでいく。

 凄い!


 問題無さそうなので、帰る準備を進める。

 鰐君や雷魚君に関しては左手から出した白いモクモクで包み持って行く。

 いざとなったら、右手と左足から白いモクモクを出せば、魔獣に不意を突かれても、少なくとも体勢は整えられるはず。

 物作り妖精のおじいちゃんをケルちゃんに乗せ、わたしも跨がりなおす。


「良し、帰ろう!」

と言うと、近衛騎士妖精君達も飛びながら頷いてくれた。


――


 我がに到着!

 粘土を引きずったままだと、結界石がズレてしまうので、持ち上げて中に入れた。

 そして、付いてきてくれた近衛騎士妖精の黒風こくふう君達に「付き合ってくれてありがとう!」とお礼を言う。

 ニッコリ微笑む近衛騎士妖精君達が身振り手振りをする。


 え?

 雷魚君達を冷凍室に運んでくれる?

 ありがとう!


 近衛騎士妖精君達は”どういたしまして”と言うようにジェスチャーをすると、冷凍雷魚君を持って家の方に飛んでいく。

 ケルちゃんにも「ありがとね」と背中を撫でて上げると、嬉しそうに頬ずりをしてきた。


 はいはい、よしよし。


 今は日が少し傾いた頃、近衛騎士妖精君達が雷魚君を運んでくれた事だし、このまま、ため池作りでもしようかな?

 そんな話を物作り妖精のおじいちゃんにすると、コクコクと頷いてくれた。

 なので、そのままため池予定地まで歩いて行く。

 ケルちゃんも付いてくるようなので、物作り妖精のおじいちゃんにはそのまま、ケルちゃんに乗っていて貰った。


 ため池予定地といっても今は何も無い。


 地面に、これぐらいっていうように、線が引かれているぐらいだ。

 その場所を掘り、粘土でコーティングをする。

 そして、土管を引き、水を溜めていく予定だ。

 水を撒く際は、溜めた水をバケツに入れる。

 それを畑まで持って行き、掌で撒くとの事だ。


 う~ん、原始的とまでは行かないまでも、なんだかこれじゃ無い感がある。


 ここは、前世チートのお出ましでは無かろうか?

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