何か良いもの(?)を頂く。
え?
葡萄を潰す?
あ、お酒を作るって事?
ここで?
ヴェロニカお母さんが「あら? それは良いわね!」と嬉しそうにしているし、妖精姫ちゃんも”是非是非”と言うように身振り手振りをしている。
とは言ってもね……。
「いや、
せめて、エルフのテュテュお姉さんがいれば考えるけど、ヴェロニカお母さん達だけってのは……。
ヴェロニカお母さんなんか「ちょっとだけ! ちょっとだけだから!」とか必死になっていっているし、妖精姫ちゃんや物作り妖精のおじいちゃんも一生懸命になっているけど……。
そもそも、その”ちょっとだけ!”が守られるのであれば、シルク婦人さんがあそこまで頑なになるとは思えないんだよなぁ。
そのことを言うと、イメルダちゃんが大きく頷く。
「お母様、こればかりはサリーさんの言う通りです。
飲みたいのであれば、シルク婦人から許可を得て、シルク婦人の側で飲みましょう」
よもや、
余り、馬鹿なことばかりやっていると、母離れが加速していくよ?
本当に。
――
家に無事、帰還する。
体の大きさは、町から出たら即戻った。
お姉さんだった妖精メイドちゃん達が小さくて可愛い妖精ちゃんサイズに戻り、ちょっとほっとしたのは内緒だ。
シャーロットちゃんも「ウメちゃんが戻った」と嬉しそうにしていたし、グラマーな黒バラちゃんを持て余していたイメルダちゃんも安心した顔をしていたので、きっとわたしと同じなんだと思う。
家に入ると、ヴェロニカお母さんはゴロゴロルームにいるエリザベスちゃんの様子を覗きに行く。
その後を妖精メイドのスイレンちゃんが付いて行った。
因みに、わたし達が上に行っている間は、シルク婦人さんと近衛騎士妖精の潮ちゃん、白雪ちゃんに見ていて貰っている。
なので、問題は無いと思う。
そんなことを考えていると、何やら気合いの入ったイメルダちゃんが声をかけてきた。
「サリーさん!
そろそろ、畑作りを始めましょう!」
「え?
あ、うん」
冬の間、何度か我が国の畑作りについて、イメルダちゃん達と話し合っていた。
正直、植物育成魔法があるのだから、そこまで色々考える必要は無いと思ったけど、我らが宰相様はそのようには考えていないようで、色々熱く語られてしまった。
有り体に言えば植物育成魔法で作る分とは別に、きちんと季節通りに育てる分も考えるべき、と言うことだった。
まあ、個人で言えば植物育成魔法オンリーでも良いけど……。
国で考えたら、わたしのみしか使えないそれに頼り切るのは問題だ、というのは分かる。
……国作りと言い出したのはわたしで、イメルダちゃんを宰相にしたのもわたしだ。
なので、この正論に対して、”面倒くさい”とは言えない。
結局、チートがあるのに、正攻法で食料を確保するという――Web小説界隈では否定意見が満載となるだろうプレイをせざる得なくなってしまったのだ。
ああ、でも、ママに対して国を紹介する時に説得力は増すのかな?
でも、結局、わたしが畑から何やら作っていたら、同じじゃないかな?
そんなことを考えつつ、苦悩していたのだが、イメルダちゃんは「わたくし、とても良いこと思いついたの」などと、ちょっと嬉しそうに話している。
「え?
何なの?」
わたしが訊ねても答えないイメルダちゃんは、ゴロゴロルームから出てきたシルク婦人さんに対して、とんでもない話をし始めた。
――
「皆、お酒を飲みたいかしらぁぁぁ!」
家の正面にて……。
イメルダちゃんが叫ぶ横で、わたしがワイン樽を持ち上げると、物作り妖精のおじいちゃんらを含む、三十人ほどの妖精ちゃん達が”飲みたぁぁぁい!”と言うように拳を突き上げた。
「だったら、わたくしの指示を聞いて、畑を作ること!
もし、それをきちんと行うのであれば、毎月一樽、あなた達にワインを与えるわ!
さあ、我こそはという者、名乗り出なさい!」
妖精ちゃん達が我も我もと、イメルダちゃんの元に集まってくる。
う、う~ん……。
「あの~
イメルダちゃん……。
物作り妖精のおじいちゃん達には、畑作りだけでなく、別のことにも活躍して欲しいんだけど……」
わたしが恐る恐る言うと、イメルダちゃんは何やら生き生きとした笑顔で頷いてみせる。
「大丈夫よ!
その辺りはきちんと調整してみせるから!」
「あ、うん……。
なら良いんだけど……」
そんなわたしを横に残したまま、イメルダちゃんは名簿(?)を作っているのか、紙に万年筆を走らせながら、一人一人の特徴を書き記している。
木の板を下敷きに、器用なものだ。
そんなことを感心していると、イメルダちゃんが横目でこちらを見ながら言う。
「サリーさん、ここはもう良いから、畑用の土地を作ってきて」
「あ、はい」
近衛騎士妖精君達が飛んできて、わたしを誘導する。
因みに、最近、よく一緒になる事が多い彼ら二人にも名前を付けた。
黒髪の男の子が近衛騎士妖精の
二人とも、好青年で好感が持てる。
まあ、今はそんなことは良いとしてだ。
南の方――町に行く時の出入り口らへんに移動する。
取りあえず、サクサク木を切っていって、広げていこう!
ん?
印が付いている木を処理していけば良いの?
了解!
取りあえず、白いモクモク刀を出して、サクサク、切って倒していく。
ん?
ああ、倒した木は近衛騎士妖精君達が運んでくれるの?
ありがとう!
手早く倒していると、何かが近寄ってくる気配を感じる。
視線を向けると、森の奥から黒いボディーの彼らの姿が見えた。
Gじゃないよ?
大蟻さん達だ!
いつもより多い、十匹ぐらいでこちらに向かってくる。
「お~い、蟻さん、元気にしてた?」
伐採を中断して、いつもの蟻さん(推定)に手を振ると、蟻さんは顎をカチカチ鳴らして返事をする。
うん、それだけでは分からないけど……。
まあ、何となく元気そうで何よりだ。
すると、蟻さん、ちょっともったいぶった感じに、身振り手振りをする。
何さ、いつもひょうひょうとしている蟻さんにしては、珍しいなぁ。
あ、ひょっとして、SSR級の種でも持ってきてくれた?
レモンなら最高なんだけど。
え?
違う?
蟻さんはやたらと大切そうに、何かを渡してきた。
???
何か、乳白色の丸い玉? だった。
前世で言うと、おじいちゃん達が公園とかでやっていたゲートボールのボールぐらいのサイズか。
え?
何これ?
何か、良いものなの?
わたしが訊ねると、何やら驚愕しているらしく、ふらりと倒れていく。
それを、お供の蟻さん(?)が慌てて支えている。
え?
そんなに凄いもの?
すると、起き上がった蟻さんが今度は、前足を振りながら顎をカチカチ鳴らし始める。
いや、え?
そんなに怒られても、わたし、こんなの知らないよ?
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