第40話 新たな戦いの序章

 空中で炸裂する、二つの火球。ユーリとカティンカが放った銃弾は二人の間で激突し、そして大きな火球を形成する。

 魔法少女同士の魔法のぶつかり合い。

 最終的にこの戦いの勝敗を決めるのは純粋に、魔法力の優劣のみ――

 カティンカは自分が優勢であることを疑わない。

 ユーリと戦ったことはないが、その実力は見切っていた。少なくても唯依よりは下層に属するであろうことを。

 ならば、ここは力押しの一手である。

 さらに両の手に魔法力を込め、弾丸を後押しする。次の瞬間にユーリの弾丸は砕け散り、カティンカの放った無数の銃弾がユーリの体を蹂躙する――はずであった。

 違和感を感じるカティンカ。魔法力を上げても手ごたえがない。いや、むしろその魔法力を上げれば上げるほど指先に伝わるエネルギーが弱体化していく感じがした。

「......!」

 拳銃を思わず放るカティンカ。その次の瞬間に愛用のモーゼルは砕け散り、そして目の前にユーリの弾丸が迫る。

 かろうじてその弾丸を避けるカティンカ。かすっただけで軍服がほころびる。何という魔法力。カティンカは構え直し、じっとユーリの姿を見つめる。

『許さない。あなただけは......』

 そういいながら、ユーリは詠唱を始める。

 カティンカはそのロシア語の詠唱に気づく。きわめて危険な詠唱であることに――

「全員退避!そいつの前に立つな!」

 右手で大きく部下の魔法少女たちを促す、カティンカ。しかしそれは間に合わない。

 ユーリの銃口から発せられた銃弾はまるで火山の噴火のように敵の魔法少女たちを飲み込む。

 それらを一瞥もせずに、垂直にただ駆け上がるカティンカの姿。背中の羽がユーリの魔法力の威力で一部損傷していた。

「ちっ、『大砲の皇帝(ツァーリ・プーシュカ)』の『誦祭記』を発動したのか。あれを使える奴が、ロシアの魔法少女にまだいたとはな」

 まるで吐き捨てるように、そういい放つカティンカ。ただ一人で戦場を脱する。

『......』

 ゆっくりと甲板に降り立つユーリ。それを横になりながら唯依が見つめる。

「見事だ。あれほどの『誦祭記』の威力は見たこともない」

 そっと傷ついた唯依をなでるユーリ。心なしか、傷が拡幅していくように思われた。

「それにしても――」

 魔法少女の姿のまま、やさかは首をかしげる。

「あいつは一体。カティンカ=クンツェンドルフとかいいましたっけ。ロシアはドイツ人にとって敵国のはず。その革命側になぜ奴は――」

 首を振る唯依。

 しかし、ただ一つ確信したことがあった。

 それは彼女が『動乱の魔法少女』であるということ。

 この世を戦乱に陥れ、されにその戦禍を拡大させるためにその魔法を使う魔法少女の系譜――

 ぎゅっとすざくの手を握る唯依。

 新たな戦いが始まろうとしていた――

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