第18話 もう一人の魔法少女

 季代としよの声を合図に、一斉に銃弾が放たれる。

 激しい重音とそれを追うように渦巻く硝煙があたりを包む。

 四方から射撃される唯依ゆよりとすざく。

 硝煙がゆっくりとはれる。そこにはずたずたになった二人がいるはず――だった。

 空中に浮かぶ無数の銃弾。右手の掌を前に突き出し、左手ですざくを抱き寄せる唯依ゆよりの姿がそこにはあった。銃弾は彼らに突き刺さることなく、青い光によって空中に固定され微動だにしない。

「ほう、なかなかの魔法力を持ちますのね。背後まで防御魔法を展開できるとは」

 扇の先を口角によせ、眉をひそめる季代としよ

 すっと第二波の射撃を促すべく、右手を季代としよは上げる。

 その時、一拍子早く拳銃の音が響き渡る。

 すざくはその音の方を振り向く。そこには今まで座していた軍人姿の男――伊集中佐が立ち上がり手に軍用拳銃を構えていた。銃口からたなびく細い煙がすべてを説明していた。

 すざくは銃口の指し示す先を振り返る。その指し示す先は――この部屋の逆、そう壇上の上の季代としよの方向である。

 扇を右手で掲げたまま、ピクリともしない季代としよの姿。そして、その目の前には黒い丸い物体が空中に浮いていた。赤い光。それが銃弾をまるで包み込むように季代としよから放たれる。

 少しの間の後、銃弾は力なく床へと叩き落ちる。かーんと乾いた音が部屋に響き渡る。

「......」

 無言のままの季代としよ。それにはさして関心も払わぬ様子で、伊集中佐は拳銃をホルスターにしまい込んだ。

「ありがとう。伊集中佐」

 唯依ゆよりがそういいながら、ふりかえる。

 いえ、と言いながら伊集中佐は敬礼で答える。

「さあ、どういうことか答えてもらおうか。季代としよ会長代理。たしかに僕は魔法を使った。そう、僕は魔法少女だ。しかし――君も同じような魔法を使うようだね。魔法を使えるものは――魔法少女しかいない。これをどう説明するのかな」

 唯依ゆよりの追求におされて、季代としよは後ずさる。

「新たな告発をさせてもらいます」

 部屋の奥から、別な声がする。体に傷を負いながらも、そう声を上げたのは――先程ふっとばされた検事やさかである。

「本官は『魔法少女審問検事』の職責に則り、新たな魔法少女を告発する。彼女こそが生徒大前のどみを魔法の力で殺した真の犯人――ヴィヴォンヌ集会会長代理嬉河季代うれかわとしよ、あなたを!」

 人差し指で季代としよを指差し、そう弾劾するやさか。

 季代としよは無表情のまま、眼下の状況を見つめていた――

 

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