手合わせ
第65話
あれから数日が立ち、一族がほぼ全員そろった。この国の一代戦力が勢ぞろいと言って差し支えないメンツだ。
「先ずは我がクローリー家がほぼ全員そろった事。嬉しく思います。皆長旅で疲れているでしょう、今日は贅を尽くした料理を用意しましたのでお楽しみください」
叔母上の挨拶で控えていた給仕達が、一斉に部屋に雪崩込んで来る。
先ずは胃のウォーミングアップの為に、日本で言えばお通しや突き出しである。アミューズが配膳台に乗せられて運ばれてくる。
一口サイズのバゲットにクリームチーズ、生ハム、リンゴ、バジルなどが色鮮やかに乗せられた。料理とグラスに入った食前酒が配膳される。
この世界では食前に祈る人も居れば祈らない人も居る。
クローリー家は初代様が、時には神々にも牙を剥くと恐れられる龍を殺した事から、「神に祈る必要なくね?」と言ったロックな当主が居たらしく、積極的に祈る事は無くなったと言う。
実際当家の年中行事には、宗教色の入った行事は少なく神殿の補修費や寄付を軽く出す程度で、積極的に関わっていないと言うべきだろう。
それを合図に皆が談笑を始める。
大体は大人は、大人子供は子供でだ。
暫く談笑しながらコース料理を食べているとアルコールが回って来る。
機会を伺って本題を切り出した。
「リチャード兄さま、ニール兄さま、コネリー兄さまお話があります」
俺は今までの文句を言ってやろうと決意して話を切り出した。
「何だい? アーノルド」
「学校の授業に付いていけないとか?」
「分かった女の子紹介してとかでしょ!」
――――と三者三葉の反応を見せる。
長兄のリチャードは母親譲りの短い銀髪をかき上げる。長身で細マッチョと、文句の付けようの容姿と戦闘技術を持っている。
次兄のニールはまるで狼の体毛のような色素の薄くツンツンとした頭髪で、見るからにマジそうな容姿をしている。
三男のコネリーも同じく白髪系でおっとりとした雰囲気を与えるタレ目をしているものの、五兄妹の中で一番のバトルジャンキーである。
「俺はアンタたち三人のせいで、入学した時から悪役扱いされてるんだけど……心当たりある?」
すると予想通り、三人はスッと視線を反らした。
「いやぁすまん」
最初に罪を認めたのは長兄だった。
「ウエストコット家があるだろう? 派閥が同じ……」
ウエストコットと言うのは、現在主流である魔剣士派の二番手で活動資金の調達を担っている家なのだが、金のない名誉しかない同派閥の貴族からは、煙たがられている。
「いるね……確か今は……あ、」
そこまで言って思い出した。
「確か兄さんの恋人の一人……」
「そ、で……その年のファイナリストのほぼ全員が俺の彼女……」
兄の彼女は4人おり名門は一人だけと、問題は少ないようにみえるものの、学園のアイドルを取られた男達の怨念という事だろうか。
「まぁリチャード兄ぃはそれも原因だろうけど、当時最強だった先輩を一年で倒して優勝した事の方が恨まれる原因だとは思うケドね……」
――――と次兄のニールが補足する。
「それに、授業を免除される仕組みを使ったのって、確かリチャード兄さんだよね? それも原因だと思うけど……」
「うるさいな……俺だって羽を伸ばしたいんだよ次期当主候補なんてなりたくないのにさぁ……ニールもコネリーも腹芸は出来ないしさぁ……少しくらいいいでしょ!」
と掌を返して開き直る。兄は面倒見がいいのだが、一度手を抜くと決めた事はとことん手を抜くどうしよもないヤツなんだ。
「ついに馬脚を露したな!」
「兄妹一番の面倒くさがりめ!」
「おめーのせいかぁ!」
三者三葉の怒りを見せる。
「それを言うならコネリーの方が問題だろ! 全大会で圧倒的な大差を付けて一位取りやがって……キャラの濃い奴二人に挟まれている俺の肩身の狭さを考えてくれよ!」
兄妹のなかで一番個性の薄い次兄ニールが、意見と言うより
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【あとがき】
まずは読んでくださって、誠にありがとうございます!
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