第37話クズな三連星3 青の三等星下
「て、てめぇ……誰が卑怯者だってぇ! そこになおれ! 俺が叩き斬ってくれる!」
顔を真っ赤にして、八相の構えを解き
「やれるもんならやって見ろ! お前の剣速で俺を叩き斬れるもんならなっ!」
「減らず口をっ!」
「魔剣士同士、互いの剣技で語ろうぜ? 今はこれ以上言葉で語る必要はない!」
「貴様と意見が同じとは不愉快だが、貴様に同意する!」
地味な装飾の鞘を手にし、腰を低く落として居合の構えを取る。床の化粧板を強く踏み締めると、ヒビが入り、雷光のような速度でナイジェルへと迫る。
先ほどまでの【
しかし、腕を真っすぐ伸ばし、切っ先を俺に向けているのだ。今の状態から俺の攻撃を止める方法は限られている。
考えられる攻撃は、魔術による射撃や弾幕、
来ると分かっているのだから、避けるのはそう難しい事ではない。
ナイジェルの刺突を首を曲げて回避し、魔術以外で防ぐ事の出来ないがら空きの右側へ回り込むと、再び足をやや前後に「ハ」の字に開くと、半身をとって重心を低くし腰だめに構える。
脚の指先、腰、肩から腕へと魔力を漲らせ、身体を強化する。右足を前に出し地面を踏み締める。
バキ!
化粧板の石材が砕け。ナイジェルの刺突攻撃によって生み出された。
予備動作すらほぼ見えない。
視覚外から最高、最速の一刀が今、鞘から自然と抜け落ちるように放たれる。
通常、居合や抜き、抜刀術と言うものは、「左から右への横薙ぎ払い」と言う
先ほどまどの一刀目の抜刀術で確信した。この速度の一撃であっても、学園の上級魔剣士なら何かしらの手段で、防いで来る。
ならば一刀目で仕留める必要はない。抜刀術の使い手としては
首筋目掛けた一撃目。だが相手が避ける事はない。
それどころか俺の一撃を、防ごうと言う意思を筋肉の動きから感じることは無い。
そのまま吸い込まれるように、首筋へ俺の刃が届く寸前――――
防御魔術が展開され、首筋の約20センチ手前で刃は防がれ弾かれる。
「――――ちっ!」
想定通りとは言え、悔しいものは悔しい。
防御魔術は、パリン! と、言うガラスが割れるような音を立てて、薄氷のように崩れ落ちる。
刹那。
しかし、一瞬生まれたその隙を、見逃す相手ではなかった。
突きを放つ際に踏み込んだ右足を、左脚を軸にして、日本の武術、芸能の基本の摺り足のように、足を宙に浮かせる事無く素早く移動させ、そのまま両手で
ナイジェルの放った真っ向斬りを、息をつかせぬほどの刹那の時間に、流れるように返す二刀目が、衝突する。
周囲数メートルを振動させるほどの壮絶な斬撃。
両者共に魔力の籠った。良い攻撃が衝突した事により、衝撃波となって周囲に放出される。その威力は隣接する試合会場まで届く程で、余りの衝撃で周囲の魔剣士たちは試合そっちのけで、アーノルドとナイジェルの試合を観戦している者さえいる。
互いの魔力が行き場を失い。生じた衝撃波によって、アーノルドは左後方へ、ナイジェルは後方へと弾き飛ばされる。
「――――」
錐揉み回転のように数秒空を舞う中で、魔術を発動させ姿勢を制御する。俺の十八番の風魔術は攻撃力、防御力、汎用性の全てにおいて他の属性の下位互換だが、このような場合においては、何よりも優秀な属性になる。
刀を納刀しながら地面に着地し、【
「一閃ッ――――!!」
構えや型などと言う美しいモノはなく。ただ相手を倒すと言う執念だけで放たれた一刀は、防御魔術を発動する余力さえないナイジェルの
その瞬間。ビーと言う音が鳴り。勝者が確定する。
「そこまで! 勝者! アーノルド・フォン・クローリー! 両者の健闘に拍手を!」
審判の宣言で俺の勝利が周知される。
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