第14話激化
次の日、学校に来ると私と小百合と悠里、笹江の4人で千夏と須実の机に油性マジックで悪口を書いてやった。
千夏の机には「偽善者」「4人揃って死ね」「良い子振るな」という言葉を。
須実の机には「死ね」「被害者振るなクソ女」「学校来んなゴミ」という言葉を書き殴ってやった。
2人は自分の机を見てどんな顔をするのだろうか?千夏と須実が辛そうにする顔を1秒でも早く拝みたいと思っている自分が居た。
あと、明日美と一翔、五郎は今頃どうしているのだろうか。
きっとサキやその取り巻きにターゲットにされて苦しんでいる最中だろう。
3人の苦しむ御尊顔が拝めないことが少し残念だなと思った。
やがて、優香と千夏が一緒に教室へと入ってくる。そして、自分の落書き塗れの机を見るなり2人は唖然とした様子でその場に立ち尽くしてしまう。
その光景が面白くてつい、腹を抱えて笑いそうになるのを必死に堪えた。
すると、須実が自分の筆箱から消しゴムを取り出すと自分の机を一心不乱に擦り始める。
その目からは今にも涙が溢れ出しそうだ。私はそんな須実を思い切り突き飛ばしてあげた。
須実は勢いよく尻もちをつき、肘を椅子にぶつけてしまう。彼女の顔は苦痛に歪んでいた。
「お前、まだ被害者振る気かよ。」
私の口から出た言葉は自分でも驚くほどに醜かった。
「お前さ、自分が何やったか分かってんの?」
小百合が須実に詰め寄る。
「よく平気で学校来られるよな。散々恩を仇で返すようなことをしておいて。」
悠里がそう言いながら須実の髪の毛を思い切り掴んだ。
「やめてよ…っ」
須実が半泣きになりながら抵抗する。悠里はそんな須実の態度に腹を立てたのか髪の毛を掴む手を更に強めた。
「あんたさ、自業自得って言葉知ってる?」
私はニヤリと笑みを浮かべると須実に問い掛ける。
「私さ、何遍も何遍も我慢してきたんだよ?あんたに我儘を言われても、嫌がらせされてもずっと一人で我慢してきたんだよ。」
私の言葉を聞いて須実は悲しそうに顔を歪めるとそのまま俯いた。
彼女の態度に腸が煮えくり返るような気分になる。気が付けば、須実の頬を思い切り殴っていた。
「あんたのそういう所がムカつくんだよ。どうせまた千夏達に泣きつくつもりでしょ?
アイツら馬鹿なくらいお人好しだから自業自得なあんたのことを必死に庇ってたもんね。」
そう言いながら私は千夏達の事を思い浮かべる。最初こそは容姿端麗で良い子なイメージだった。
けれど、須実の行いを知っていながら私のことを非難したこと。
私には目もくれずに須実ばかり庇ったこと。千夏や明日美、一翔や五郎だって私の心を踏み躙った。
だから須実と一緒に懲らしめてやることにした。これは、私の復讐劇なんだ。そこら辺で蔓延っている「いじめ」とは訳が違う。
私はいじめっ子なんかではない。立派な被害者なんだと。
「もういい加減にして!」
不意に千夏が声を上げる。その声に私は面倒くさそうに振り返った。
「なに?」
「明日美達の悪い噂をばら撒いたのは優香の仕業なの?」
初耳だった。恐らくサキが拡げたのだろう。思わず「ざまあみろ」と思ってしまった。
「は?知らないんだけど。」
「明日美も一翔も五郎もそのお友達も。みんな身に覚えのない噂を広められて傷付いていたよ。」
千夏が縋るような目で見つめてくる。
「とにかく、私は知らない。」
次の時間は体育だから早めに着替えなければいけない。
私はそう言うと小百合達と共に教室を後にした。
今日の体育の授業はバスケだ。
「はーい。それでは皆さん、チームを組んでください。」
先生の指示通りにチームを組む。もちろん千夏と須実ではなくて小百合達とだ。
シュート練習をしている最中に足元にボールが転がってくる。
誰のボールだろうと思って拾い上げると須実が怯えるような目で私のことを見つめていた。
須実の手にはボールがないから恐らく彼女が持っていた物だろう。
私は拾い上げたボールを須実の顔面目掛けて投げつけてやった。
見事に須実の顔面に当たり、ボールは勢いよくバウンドする。
「優香、あんたマジで最高だわ!」
小百合達が拍手しながら喜ぶ。小百合達も私の真似をしてボールを次々と須実にぶつけてゆく。
背中、頭、お腹などにボールが直撃して須実は痛さのあまりその場に蹲った。
「ちょっと何してるの!」
ボールを拾いに行ったっきり帰ってこない須実を心配したのだろう。
蹲っている須実の隣に千夏が立っていた。
「またお前かよ。マジでウザイんだけど。」
小百合がそう言いながら千夏に向かってボールを投げ付ける。
ボールは勢いよく胸に当たり、千夏は痛みに顔を歪めた。
それでも千夏は痛みを我慢して須実を起こすと
「一緒に保健室に行こ?」
お互い支え合いながら体育館を後にした。
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