第90話 ラストアタック

 今は前人未踏の47階層の恐らく半ばまで来ている。

 この階層の途中から俺が指揮を執っている。

 様子が変わったからだ。

 魔物が全てAランクになっていた。

 皆の戦闘経験は最初の1体で十分だ。

 1撃を食らう事なく倒しはしたが、俺の結界を使ってソシアとスニシスを守る事になったからだ。


 経験の少ないマリニアにはAランクの魔物は荷が重い。

 俺に何かあった時や、二手に分かれなければならない時のもう1つの頭を担う為だ。


 今は十分だ。

 俺の指揮下での戦闘経験から学ぶべきと判断した。

 マリニアもぎりぎりだと分かっていたようで、ここからは俺が指揮すると言うとホッとしていた。


 黒いサイクロプスが出た。

 サイクロプスとしては最強種だ。


 両手の指をVの字にして顔に当てると目から熱線が出るやばいやつだ。

 だが、その為徒手空拳で戦う。

 他は棍棒を持っているが。


 ベッカードに対し目を向けて熱線を放とうとしていた。


「クラシス姉、右に手に槍を投げ、マリニアは左肩にナイフと適時攻撃魔法、スニシスは膝に矢を。その後は魔法と矢を適時放て!ソシアはベッカードに魔法耐性だ!」


 俺はファイヤーランスを牽制で投げるとエクスプロージョンを放つ。


 予めベッカードには熱線が来たら盾で、受け流すよう指示をしている。


「我は望む!深淵の業火より除く炎の番人よ!全てを爆裂せし無慈悲なる力を!我の前に力を示せ!エクスプロージョン!」


 皆が攻撃をしていて、俺に注意がなかったので火の上級魔法でケリを付ける。


 マリニアが刺したナイフ目掛けて爆裂させると、肩がもげた。

 もうあのやばい熱線は出せない。

 狙いがそれたからか、ベッカードの盾は溶けていなかった。


 肩がもげた瞬間ベッカードは駆け出し、俺はクラシス姉に別の槍を投げた。

 彼女は槍を空中で掴むと俺が作った足場を駆け上がり、サイクロプスの頭上に出て反対側の肩に槍を突き刺した。

 そして彼女はスキルを発動した。

 ヴァルキリーのジョブの魔法スキルのライオットだ。

 中級と上級の間位の魔法で、サイクロプスに当たると肩が黒焦げとなり、腕がだらんとなった。


 そして同じ足場を伝いベッカードがメイスを振りかぶり無防備となった頭に振り下ろすと、一瞬メイスがめり込んだ。


 すると気絶して前のめりに倒れる。

 俺はソシアに剣を握らせ、首元にトドメを刺させた。


 ラストアタックは余分に経験値が入るので、こういった時に後方支援者にトドメをやらせないと、経験値が乏しくなる。


 スニシスはこれまでに何度かラストアタックを決めている。


「おっ!ドロップがあるぞ!」


 それはワンドで、魔力を込めると風魔法を放つ事が可能な物だった。

 複雑な形で、ソシアの背丈程あり、先端には魔石をはめられるので、今たおしたサイクロプスの魔石を填めてからソシアに渡す。

 するとブーンと鈍い光を一瞬放った。


「こ、これは?す、凄いですね!ヒィエー」 


 ソシアが珍しい興奮していたが、ワンドの中でも最上級の性能だと思われるからだ。


 その後は突破を優先するのに俺の結界をふんだんに使い、15時頃には48階層に進むと本日の探査を終えたが、A級を6体も撃破していた。

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