第421話 推し、燃ゆ

 今回も恒例の読書感想文エッセイである。表題の通り、宇佐美りん先生の「推し、燃ゆ」を読んだのでその感想を書いてみよう。

 

 まず、このタイトルにやられた。たった4文字、読点とうてんを入れても5文字しかないタイトルである。推しという今風の言葉に燃ゆという古風な言い回しをくっつけただけのシンプルな手法でありながら、どういう話かなんとなく分かるというのはかなり秀逸だと勝手に感心してしまっていた。

 

 ただ、非常に残念な事に、あまりにもタイトルが秀逸だった為、期待感が爆上がりしてしまい、中身のインパクトは少し弱かった。

 

 先日、コンビニ人間を読了したばかりだったのも災いした。順番が逆ならどちらも楽しめたと思うのだが、コンビニ店員である事で自分を維持しているコンビニ人間の主人公と、推しを推すことで自分を維持している今回の主人公。構造がかなり似ていると感じてしまったのだ。

 

 ただ、この作品の主人公はまだ高校中退したての少女……のはずなんだが、どういう訳か酒を出す飲食店でバイトをしているんだよな。風営法上、18歳未満、高校生は働けないと思うのだが……。


 海外赴任している親父の言い分が酷い。

 

「厳しいことを言うようだけど、ずっと養っているわけにはいかないんだよね、おれらも」


 高校を中退した娘が、半年やそこらでまともな就職先を自分で見つけて働き始められると思うこの親父、どういう脳の構造をしているんだろう?

 

 お前のやるべき事は、持てるコネをフル活用して縁故採用でどこかに就職させてやる事だろうが! その程度の事もせず、海外から義母の葬式で帰ってきて妻と一緒になって主人公を詰めるこいつもかなりの毒親父だな。

 

 その上、娘の社会適応能力が低い事を認めようとせず、無理やり自立させようとして、死んだばかりの祖母の暮らしていた古民家に一人で生活をさせるようになる。

 

 当然のように自活できるはずもなく、生活はどんどん崩壊していく。それでもキャッシュカードに母親からお金は入ってきていて、最低限死なない程度には援助している。その匙加減が気持ち悪い。

 

 これまでは推し活によってなんとか保っていた人間性も、推しの芸能界引退によって崩壊してしまう。作中でも「じゃあ死ぬ」とか言っているが、このままだと本当に孤独死してしまいかねない。なんとも後味の悪いラストだった。

 

 おそらく、純文学の場合はこういうラストで良いのだろう。そもそもエンタメ小説と違って、こうなってこうなって最後はこうなりましたとさ、という結論まで書かず、読者に丸投げするのが純文学だもんな。

 

 という訳で今日は「推し、燃ゆ」の感想を書いてみた。結構ダークな物語なので酷評っぽく見えたかもしれないが、物語をそのまま受け止めているだけなので全く批判しているつもりはない。

 

 とても爽快で楽しい物語でした、私も推しを見つけて推し活しようと思います、なんて書く奴がいたら全然中身読んでないから気を付けろ!

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