アルビニズムの君が可愛くて

うまチャン

第1話 俺の妹

 俺の名前は中山なかやま 大翔ひろと

まあ、そこら辺にいる高校生だ。

都会から外れたところにある、小さい校舎が俺が今通っている高校だ。

1クラス30人いかないくらいで、1学年80人くらい。

人数が少ないから、ほとんどの人の名前を知ってるし仲が良い。

 部活はそれなりの数があるが、俺はバトミントン部に所属している。

強豪チーム……ではなく、地区でいつも一回戦勝てるか勝てないかの弱小チームだ。


「よし、集合!」


 顧問の先生の号令を聞いた途端、バトミントン部の部員全員が先生を囲った。


「明日はオフ、明後日はオールだな。明日でしっかり体を休ませて、明後日また頑張ろう。では解散!」


「「「「ありがとうございました!」」」」


 俺たちは挨拶を交わし、片付けを始めた。


「お疲れ大翔ひろと


「おう、お疲れかける。今日は結構調子良かったけど、何かあったのか?」


 俺と一緒に片付けをしているのは、中学の時からペアを組んでいる相棒ともいえる存在で、名前は翔という。

彼も可もなく不可もないといった感じで、勉強も部活も凄いというわけではない。

いつも中間にいて、顔がイケているイケメン男子だ。

そんな彼が今日は異様に調子がよく、俺との1vs1でもいつも以上に点を取っていた。


「ふふふ……実はそうなんだ大翔。じゃあ大翔に問題だ。今日は一日中テンション高いんだけど、何でたと思うか答えろ!」


「な、何だよ急に気持ち悪い笑いして……。はて、一体何だろう……?」


 確かに、今日の翔はテンションが高かった。

それに、珍しく弁当は一緒に食べていかなかったし……翔と一緒に弁当を食べていない……?


「お前まさか……彼女出来たんか!?」


「そうです当たりです! 遂に……遂に俺にも青春がやってきたぞおおおお!!」


「おー! それはめでたい話だな! おめでとう……って、今まで彼女いなかったのか?」


「うん、俺なんか女子と接点があまりなかったからな」


「ま、まじかよ……。そんな良い顔持ってるのに……」


 翔は本当にイケメンだ。

俳優にでもなったほうが良いのではないのかと思ってしまうが、翔は将来鉄道関連の仕事に就きたいらしい。

本当にもったいないよな……。

 それにしても、イケメンでしかも性格まで良すぎるやつに今まで彼女どころか、女子とあまり接点がなかったということに驚きを隠せない。

女子の皆さん、もっと翔のこと評価してやってくれ……!


「そうそうこいつ、俺と涼太りょうたに何回もそれ自慢されてよ。うんざりしてるところだ。なあ涼太だってそうだろ?」


「うんうん!」


 先に片付けが終わって俺たちのところに来て話して来たのは、目つきが悪いのが特徴のみなみ 海斗かいと、そして彼についてきて輪に混ざってきた大人しげな感じの男子は細川ほそかわ 涼太りょうただ。

実は俺が所属しているバトミントン部は、男子はこの4人しかいない。

4人という少ない人数で、俺たちは一生懸命、楽しみながら練習している。


「僕も耳が痛くなったよ……」


「だって嬉しいじゃんかよ! やっと俺に青春来たんだぞ? 自慢したくなるのは当たり前だろ?」


「「「――――」」」


 翔からキランッ! という効果音がどこからか聞こえた気がするが、俺たちはジト目で翔を見た。

 腹立つなこいつ。

後でみんなと協力して一発ぶん殴ってやることにしよう。


「さて、今日は帰るとしようか。お疲れ〜」


「「お疲れ〜」」


「おい! 俺を無視して置いてけぼりにしてく気か!? おーい!」


 翔が何か喚いてぎゃあぎゃあ言っている気がするが、無視して帰ることにしよう。

いつまでも学校にいるわけにもいかないんだ。

俺は早く家に帰りたいマンだから、さっさと帰路についた。

 家から徒歩20分あるから、部活の後の帰り道は体に効く。

自転車区域からギリギリ届かない場所に住んでいるから、何が何でも歩かないといけない。

疲労が溜まりすぎて、歩いている途中に脚をつってしまうことなんてよくある。

最近は体力がついてきたこともあって、あまり脚をつることなんて滅多になくなったけど。

 

「――――」


 あのメンバーで、俺と同じルートで帰るやつは誰一人いない。

俺以外は全員、俺の家とは反対側に住んでいるんだ。

1人だけで帰るのは、さぞかし寂しいことだろうねと思っているだろうが、意外にもそうでもない。

家には絶対に迎えてくれるある人がいるからだ。

その人に会えることを楽しみにしながら、俺は自宅まで歩いた。









◇◇◇








 

 20分歩いて、やっと俺の家についた。

さて、じゃあ家の中に入ってのんびりするとしますか。


ガチャッ!


 俺は自分で持っている家の鍵を鍵穴に差し込んでひねる。

鍵が開く音がすると、差した鍵を引き抜く。

そしてドアノブに手をかけ、ドアを開けた。


「おかえりお兄ちゃん!」


「ただいま愛莉朱ありす


 ドアを開けてすぐ俺に飛び込んできたのは、俺の妹の愛莉朱。

日本人の肌の色とかけ離れた真っ白い肌と、白髪に近い金髪、灰色の眼が特徴的な女の子だ。

外国人のハーフなのと思った人もいるだろうが、それは違う。


「ストォォップ! まだ日差しあるから出るな!」


「あ、つい夢中で外に出ちゃうところだった……」


 はっと気づいた愛莉朱は急ブレーキをかけて止まり、すぐにリビングへと向かって行った。

愛莉朱は体質上、日差しを浴びたら非常にまずいからな。


「おかえり大翔。もうすぐでご飯できるから、先にお風呂入ってきなさい。愛莉朱も一緒に入ったら?」


「え”っ!?」


「え”っ!? って言ってるけど、別に平気でしょ?」


 料理作りながら、そんな大げさに俺の今の反応を真似しなくたっていいのに……。


「別に平気だけどさあ……」


「お願いお兄ちゃん……一緒に入りたい……」


 ぐっ……!

愛莉朱のその眼差しがとても眩しい!

結局、俺は愛莉朱の瞳に負けて一緒に入ることになってしまった。


「じゃあ愛莉朱、風呂入ろうか」


「うん、お兄ちゃん!」


 ちなみに愛莉朱は俺の3つ年下の14歳。

もう中学生になっているのに、まだお兄ちゃんと入っているのかよって思っているのだろう。

俺も実際そうしてほしいのだが、これは仕方がないこと。

理由はあとで説明する。

 2人で服を脱いで、先に脱ぎ終わった俺は早速湯船に浸かった。


「はあ……疲れ癒やされるぅ……」


「もう、先に入っちゃうなんてずるいよお兄ちゃん」


「申し訳ないがそれは出来ん。俺は部活の後で疲れているから早く疲れを取りたいんだ」


「むぅ〜! 別に待ってくれても良いじゃん! お兄ちゃんのケチ……」


 愛莉朱は頬を膨らませながらシャワーを浴び、そして湯船に浸かった。

しばらくは体が温まっていくのを感じながらリラックスする。

そうしていると、愛莉朱は急に俺に向かって身を乗り出してきた。


「――――ど、どうした?」


「ねえ、わたしと一緒にお風呂入っているのに、何もしてくれないの?」


「何もしてくれないのって……流石に風呂の中はまずいだろ」


「――――? どこがまずいの? 別に誰も文句言わないでしょ?」


「いや、そうなんだけど……」


 体が温まってきているのに、さらに体が熱くなって今にものぼせそうだ。

そんな俺に、愛莉朱はさらに追い打ちを立てた。


「――――ちゅっ」


「――――!?」


 愛莉朱はいきなり俺にキスをしてきた。

俺はさらに体が熱くなって、意識が朦朧とし始めていた。


「――――わたしとお兄ちゃんは血が繋がっているわけじゃないし、お母さんも玄ちゃんも許してくれてるじゃん。なら、別にこんなことしたって良いでしょ?」


「愛莉朱……あはは、愛莉朱はやっぱり可愛いなあ!」


「きゃっ! もう、お兄ちゃんたら……! 」


 愛莉朱の表情に完全に敗北し、俺は愛莉朱を抱きしめた。

お互い裸になっているため、俺の胸に愛莉朱の柔らかいものが当たる。

 愛莉朱の言う通り、俺と愛莉朱は血が繋がっていない兄妹だ。

俺が3歳の時、玄ちゃん……父さんと母さんが養子として愛莉朱を迎え入れたのだ。

勿論、愛莉朱がアルビニズムという難病を抱えていることを知ってる上で。

 そして、俺と愛莉朱は兄妹でありながら恋人同士でもあるのだ。

このことは、俺の家族と親戚以外誰も知らない。

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