第13話 毒を盛った犯人探し
今までだったら、何かをやりとげるのが当たり前で、お礼など言われたこともなかった。
しかも、いきなり王子という立場の二人にこんなに言われてしまって不思議な気分だ。
「あ……あの、ホルスタ殿下は誰かに毒を盛られたと聞いていましたが……」
「そのようだな。ジュエルよ、犯人は捕まったのか?」
「いえ……疑わしき人物は数名リストアップされていますが、どの者も証拠を掴めておらず」
「そうか……」
この街に毒殺しようとするような者が潜んでいると思うと恐ろしくなる。
ホルスタ殿下が眠っている間、民衆にはこのことを公開していなかった。
異常気象で作物が育ちにくくなってしまい国中の活気が悪い状況だ。
その影響でただでさえ治安が悪くなっている中、更に混乱を招きたくないから非公表のままだと聞いたことはあったが……。
「ならば犯人を捕まえるとしよう」
「目星はついているのでしょうか?」
「全く」
コントかよ。
ついツッコミたくなってしまったが、また怒られるのも嫌なので黙っておく。
「だが、ほら……頼れる者がここにいるであろう」
「ん……?」
ホルスタ殿下はじーーーーーっと私の方を見つめてきた。
まるでなんとかしてくださいと目で訴えられているような気がしてならない。
「なるほど、アイリスの聖女としての力か」
「むむむむむむ無理ですよーーー! 今日はすでに三回聖なる力を使ってしまいましたし、犯人探しなんてできるわけが……」
首を横にブンブン降った。
殺人をするような人間と会うことだって恐いのに、仮に何らかの手段で犯人を見つけても、あとでその家族や知人から恨みをかって殺されてしまうんじゃないかと脳裏によぎる。
「犯人を見つけ出すだけでもかまわない。むろん、タダでとは言わぬ」
「え!?」
「それくらい重大案件ということだ」
こんなことで報酬をもらうだなんてとんでもないことだ。
それよりも、私が喰いついたのは犯人を見つけ出すだけでよいという件だ。
それならば誰が協力者なのかバレずに済みそうだし。
たとえ王子からの頼みだとしても、私が臆病なので表向きには動きたくない。
「協力するにしても明日以降になってしまいますよ。それに、どうやって聖女の力で見つければいいのか検討もつきませんが……」
ついさっき聖女だということは理解できた。
だが、どれほどの力があり、どのような加護を与えることができるのかまではまだわかっていない。
いきなり犯人探しと言われても困る。
「王宮で泊まっていくが良い」
「はい!?」
ジュエル殿下がとんでもないことを言い出した。
「家に帰れないのだろう? ここにいれば食事も水浴びも生活の心配は無用だ。アイリスの功績を考えれば王宮にしばらく滞在しても良いと私は思っているが」
「ジュエルよ、アイリス殿を滞在させるのはかまわぬと父上も言うだろう。だが、これだけの素晴らしい女性が家に帰れないとはどういうことだ?」
「先ほどこの者は外でキノコを生で食べていました。つまり、食べるものもなく、外に放り出されていたのではないかと……」
「ふむ……。どこの家の者だ。彼女をここまでひどい目に合わせる愚かな親は」
「その件は父上に相談する環境を与えれば良いかと」
「それもそうだな。まずは私が命を救われたことを報告しなければな」
あれ……。
まだ私何も家のことを喋っていないのに勝手に話が進んでしまっている?
というか、今父上って言ったよね。
この二人がいう父上ってことは……。
「アイリスよ、ひとまず父上に会ってもらいたい。国王陛下だが、あまり緊張せずとも良い」
「ひぃーっ……ここっこっここここくおうへへへへへいかですかかか!?」
「大丈夫だ。アイリスが思っているほど恐れることではない」
庶民に限りなく近い貴族の気持ちを考えて欲しい。
ただでさえ王子二人と会話することだって緊張しているというのに国の一番偉い人と挨拶だなんて……。
緊張のしすぎで漏らさないように用だけは済ませておかなければ……。
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