第4話【視点】回想
全く、揃いも揃ってデイルムーニ王国にはバカしかいないのか。
レレーナを婚約破棄して追放命令を下した翌日には、あいつの親が乗り込んできた。
もしかして私は殴られるのかもしれないと危機感も持っていたが、あの男は何を言い出すかと思えば……。
『ドックス殿下よ。レレーナを国から追放するのであれば俺も一緒に出ていく。あんたの親父にもそう言っておけ』
それだけ言い残してさっさと帰っていきおったわ。
おそらく私の権力には逆らえず、殴ってこようかと思ったが恐れ多くなった。
そして逃げ台詞だけ吐いて、とっとと逃げ出したのだろう。
勇気も度胸もない弱いやつだ。
「それにしてもだったな……」
あの口調も態度も気に喰わなかった。
全く、私の立場を考えろと思う。
とはいえ、父上はあの男のことを重要視していた気もしたが、問題はないだろう。
だって、あんな口調だし。
きっと父上も何か弱みを握られて我慢していたに違いない。
そうだ。
私はむしろ素晴らしい行いをしたのだと誇りに思ったのである。
だが数日後……。
『殿下! 国を出ていくと名乗るものが次々と……』
『放っておけ。どうせレレーナの件でムカついた奴が出ていくんだろ。むしろ私に歯向かう者がいなくなって清々する』
『ですが既に──』
『うるさい! 余計な口出しをするな!』
全くもって大臣はうるさくてかなわん。
私の考えをまともに理解できる奴はいないのだろうか。
ま、たとえ全員が歯向かったとしても、私は国王になるんだから誰も逆らえないだろう。
逆らうといえば……レレーナの奴も断固としてムカつく女だった。
何度も身体を求めたが、結婚してからだと毎回断ってきた。
強引に手を出そうとしたときもあったが、あの身体のどこにあのような力が……。
「あいつは化け物なのか……?」
とても私、いや、普通の男でも力で勝てるような相手ではなかった。
聖女ではないにしても、怪力女である。
力尽くで手出しが出来ないので、キスすらできなかったのだ。
婚約をしているというのに身体も許さないような女など捨てて当然だ。
そもそも、身体の関係など婚約する以前に終われせてもいいだろう。
とにかくアイツの綺麗な身体をとっとと堪能したかったというのに……。
見た目は最高でも、聖女としてはカスみたいな女だし、私にはもっとふさわしい相手がいるはずだ。
この件も父上が帰ってきたら話し、褒めてもらおう。
きっと盛大に褒めてくれ、私の国王としての道がかなり近くなるに違いない。
そうすれば、残った民衆から税をたっぷりと集め、より住み良い国にしてやろうではないか。
私の計画は叶ったも同然だろう。
あぁ、早く父上帰ってきてくれ。
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